第12回恵比寿映像祭「時間を想像する」
2020年2月7日（金）- 2月23日（日・祝）※月曜休館
https://www.yebizo.com/
会場：東京都写真美術館、日仏会館、ザ・ガーデンルーム、恵比寿ガーデンプレイス センター広場、地域連携各所ほか
開催時間：10:00-20:00（最終日は18:00まで）
ディレクター：田坂博子（東京都写真美術館学芸員）
2009年より10年以上にわたって「映像とは何か」という問いを掲げ、毎年異なるテーマの下で幅広い表現を通じた応答を試みてきた恵比寿映像祭が、東京都写真美術館を中心に恵比寿周辺の複数会場で2月7日に開幕する。12度目の開催となる本展の総合テーマは「時間を想像する」。映像がそうである以上に、誰にとっても身近であると同時に解き明かされていない「時間」という映像に密着したテーマを取り上げる。
中心会場の東京都写真美術館では、全展示室を使用した多数の新作を含む19組による展示部門、独自の企画から海外のプログラマー、アーカイヴとの連携企画で構成される上映部門、シンポジウムや参加アーティストらによるラウンジトーク＆セッションなどを開催。美術、映画、アニメーションといった分類や、展示と上映という発表形態の違いにより、同じ映像という言葉を使いながらもゆるやかに隔てられることの多い各領域を横断的に鑑賞する貴重な機会となる。展示部門には、2021年の第59回ヴェネツィア・ビエンナーレ・カナダ館代表への選出が公表されたばかりのスタン・ダグラスが、昨年のヴェネツィアで最新作として発表した２チャンネルのヴィデオ・インスタレーション《ドッペルゲンガー》（2019）を出品。歴史の再構築、再演をめぐる作品を主に制作してきたダグラスだが、本作では理論物理学の量子テレポーテーションを参照したSFを通じて、歴史を含む客観的な真実の不安定さや現代社会における他者についての考察を試みている。ダグラスの《ドッペルゲンガー》と同じく第58回ヴェネツィア・ビエンナーレ出品作品からの紹介となるのは、ナム・ファヨンの《半島の舞姫》（2019）。時代や文化圏を超えて変遷していく主題として、過去には「イムジン河」を取り上げたことのあるナムは、本展では第二次世界大戦前から戦中にかけ、朝鮮、日本、中国、ヨーロッパ各国で活躍し、西洋と東洋両方の舞踊史において伝説的な存在となった崔承喜に迫った回遊型インスタレーションを発表する。「時間を記録する」（新しいドキュメンタリー）、「時間を表現する」（ポストヒューマン）、「イマジナリータイム（虚時間）」（SF）といった視点から構成された本展には、木村友紀が昨年ロサンゼルスで発表した映像インスタレーションの再制作を発表、時里充、多和田有希、三原聡一郎、シュウゾウ・アヅチ・ガリバーらは新作を発表する。また、日仏会館では2013年に東京都写真美術館で個展『明るい部屋』を開催した高谷史郎に委嘱した新作《Toposcan/Tokyo》を公開する。
木村友紀《MPEG-4 H.264 Reflecting in Sizes》2019年 Courtesy of Jenny’s Thanks to Taka Ishii Gallery
ベン・リヴァース＆アノーチャ・スウィーチャーゴーンポン《クラビ、2562》2019年
展示部門と上映部門を横断して出品するのは、小森はるか＋瀬尾夏美。東日本大震災を経て生まれる新たな民話の種として、2031年の岩手県陸前高田市を舞台に瀬尾が描いた物語『二重のまち』、その物語の朗読を試みるなかで行なう「発話」を小森が映像にとらえた《二重のまち／交代地のうたを編む》（2019）の上映と、新作インスタレーション《二重のまち／四つの旅のうた》（2020）などの展示を行なう。また、実験映像作家ベン・リヴァースにおいては、タイ出身のアノーチャ・スウィーチャーゴーンポンとの共同監督作品でタイ南部のリゾート地クラビで先史時代、近代、現代が交わる瞬間を描いた《クラビ、2562》（2019）の上映をはじめ、近年の複数の作品をまとめた特集上映プログラム、そして、木にぶら下がるナマケモノを40分間に及び撮影しつづけた《いま、ついに！》（2019）を展示部門に出品するなど、大々的に取り上げる。そのほか、上映部門では、小田香や遠藤麻衣子の最新作の上映、ゲスト・プログラマーとしてニューヨーク映画祭のアイリー・ナッシュとハーヴァード・フィルム・アーカイヴのヘイデン・ゲストを迎え、独自のプログラムを上映、DigiCon6 Asiaによる最新アニメーションの上映プログラムなど幅広い表現を紹介する。
アナ・ヴァス《陸が見えた！》2016年
シルヴィア・シェーデルバウアー《メモリーズ》2004年