ジェームス・リー・バイヤース『奇想詩』@ SCAI THE BATHHOUSE


James Lee Byars, The Poetic Conceit (1983) Courtesy Michael Werner Gallery, New York and London.

 

ジェームス・リー・バイヤース『奇想詩』
2020年1月24日(金)- 2月29日(土)
SCAI THE BATHHOUSE
https://www.scaithebathhouse.com/
開廊時間:12:00-18:00
休廊日:日、月、祝

 

SCAI THE BATHHOUSEは前身である白石コンテンポラリーアートを含め設立30周年を迎える2020年の最初の展覧会として、「最初の完全なる疑問形の哲学」を作品制作の理念に特異な制作活動を展開したジェームス・リー・バイヤースの個展『奇想詩』を開催する。バイヤースとSCAI THE BATHHOUSEとの公私にわたる関係はその死の間際まで続き、現在の谷中のスペースに移転した際の最初の個展もまたバイヤースであった。本展では表題作の《The Poetic Conceit(奇想詩)》(1983)をはじめ、来日時に制作した作品や彼の哲学を象徴する代表的作品を国内外から集め、「存在」に関する哲学的な問いを美術の中枢に据えたバイヤースの制作活動を振り返る。

ジェームス・リー・バイヤース(1932-1997)は、地元デトロイトのウェイン州立大学、メリルパーマー研究所で美術や心理学、哲学を学び、1950年代後半から60年代後半にかけて京都とニューヨークを往復、70年代の放浪的な生活を通じて神秘思想を深め、理想的なフォルムと「完璧」とを生涯にわたって追い求めた。1972年のドクメンタ5ではフリデリチアヌム美術館の屋根に登り、黄金の拡声器でドイツ人の名前を呼び上げるパフォーマンスを発表。ドクメンタにはその後も1977年、1982年、1987年と4回連続で参加し、ヴェネツィア・ビエンナーレでは生前2度(1980、1986)死後2度(1999、2013)の計4回、作品が発表された。生前の大規模な展覧会のひとつに『The Perfect Moment』(バレンシア現代芸術院、1994)があり、1997年に亡くなった後も『バイヤース&ボイス』(ファンアッベ美術館、2007)、ヨコハマトリエンナーレ2011といった企画展や国際展、そして、『James Lee Byars: The Art of Writing』(ニューヨーク近代美術館、2007)、『Ordinary Madness』(カーネギー美術館、2011)、『1/2 An Autobiography』(フメックス美術館、メキシコシティ、2013)、『1/2 An Autobiography』(MoMA PS1、2014)などの個展が開催されるなど、バイヤースの思考、制作活動に対する美術界の関心は現在も続いている。

本展の表題作となる《The Poetic Conceit(奇想詩)》では、暗幕で覆われた壁面を背景にゲーテの肖像(《カンパーニャのゲーテ》のレプリカ)が飾られ、台座に完璧な円を形作る白いプレートが祭壇の供物のように置かれている。芸術における言語とコミュニケーションの幽玄な性格を問い掛ける本作は、作品を構成するさまざまな要素が一体となり、バイヤースの哲学的理念、 歴史に対する崇敬、新しいコミュニケーション形式の純粋な希求を表す記念碑的作品といえる。深遠な精神性を湛える彫刻インスタレーション、時を止めるようなパフォーマンス、そして個人的に送られた親密な手紙の数々といったさまざまな方法を通じて、バイヤースは欠落した世界における「完璧」という不可能な夢を体現した。そのほか、本展には、《The Figure in Question(問われる形状)》(1989)、《The Circle Book》、《The Cube Book》、《The Star Book》などが出品される。

なお、本展に加えて、SCAI30周年記念展が1月17日から駒込倉庫、1/25日から天王洲のSCAI PARKで開かれ、SCAIの歴史を歩んできたアーティストを改めて紹介する。展示機会の少ない貴重な作品も出品される。

 


James Lee Byars, The Figure of Question (1989)
Courtesy Michael Werner Gallery, New York and London.


James Lee Byars, The Star Book (1990)
Courtesy Michael Werner Gallery, New York and London.

 

SCAI 30th Anniversary Exhibition
2020年1月17日(金)- 2月8日(土)オープニング・レセプション:1月17日(金)18:00-20:00
駒込倉庫
出品作家:大庭大介、小牟田悠介、嵯峨篤、ヴァジコ・チャッキアーニ、イエッペ・ハイン、平野薫、アンヌ=シャルロット・フィネル、ミセスユキ、和田礼治郎

2020年1月25日(土)- 2月8日(土)オープニング・レセプション:1月25日(土)18:00-20:00
SCAI PARK
出品作家:赤瀬川原平、ダレン・アーモンド、アピチャッポン・ウィーラセタクン、遠藤利克、加藤泉、アニッシュ・カプーア/ 神谷徹、ヘ・シャンユ、 ボスコ・ソディ、土屋信子、中西夏之、奈良美智、名和晃平、ジェニー・ホルツァー、カジミール・マレーヴィチ、宮島達男、村上隆、ムン&チョン、森万里子、李禹煥、横尾忠則

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