山沢栄子 私の現代 @ 東京都写真美術館


山沢栄子《What I Am Doing No. 9》1980年(プリント1986年)、銀色素漂白方式印画、大阪中之島美術館蔵

 

山沢栄子 私の現代
2019年11月12日(火)- 2020年1月26日(日)
東京都写真美術館 3階展示室
https://topmuseum.jp/
開館時間:10:00-18:00(木、金は20:00まで *1/2と1/3を除く)入館は閉館30分前まで
休館日:月(ただし、1/13は開館)、年末年始(12/29-1/1)、1/14
企画担当:鈴木佳子(東京都写真美術館学芸員)

 

東京都写真美術館では、1920年代にアメリカ合衆国で写真を学び、1930年代から半世紀以上にわたり、日本における女性写真家の草分けとして活動した山沢栄子の個展を開催する。生誕120年を迎える山沢を紹介する本企画は、1994年に伊丹市立美術館での個展以来、25年ぶりの美術館での個展となる。東京都写真美術館での開催に先駆けて、西宮市大谷記念美術館で2019年5月から7月にかけて開催された。本展会期中の11月23日には、同館学芸員の池上司による講演会も予定している。

山沢栄子(1899年大阪生まれ)は、1916年に当時ほとんど唯一の女性のための美術専門の高等教育機関であった女子美術学校(現・女子美術大学)の日本画科選科に入り、1918年に卒業。卒業後は大阪に戻り、油絵と写真の研究をつづけ、1920年には女性による美術団体として最も早く結成された朱葉会(1918年結成)の大阪展に水彩を出品している。1926年に渡米し、カリフォルニア・スクール・オブ・ファインアーツに入学して絵画を学ぶとともに、写真家のコンスエロ・カナガの助手として写真を学ぶ。1929年に帰国し、『第3回国際写真サロン』(東京朝日新聞社)に出品。1931年より大阪に写真スタジオを開設し、主にポートレートの撮影を手がける。1945年に空襲でスタジオを焼失し、戦後直後、京都PX(米軍基地購買部)のスタジオ写真家として働いた後に、1950年に大阪に商業写真山沢スタジオを開設した。企業の広告写真などを手がけたのち、抽象写真の制作を開始し、1962年には写真集『遠近』を出版。1968年に神戸にスタジオを移した後も1970年代から80年代にかけて、『私の現代』と題した個展を多数開催した。約30年間営んだスタジオを閉じた後は、自身の制作活動に集中し、晩年、車椅子の生活を送りながらも創作活動を続け、1994年に伊丹市立美術館で個展『山沢栄子』を開催。翌1995年に96歳で死去した。作品は大阪中之島美術館、東京都写真美術館、川崎市市民ミュージアムなどに収蔵されている。

本展では、山沢が1970年代から80年代に手がけた抽象写真シリーズ〈What I Am Doing〉を中心に、山沢の抽象表現の原点を示す写真集、戦前の活動を伝えるポートレートや関連資料など、現存する作品や資料をもとに山沢の歩みを辿るとともに、東京都写真美術館のコレクションから、山沢が渡米した1920年代のアメリカ合衆国で活躍していたアルフレッド・スティーグリッツ、ポール・ストランド、イモジェン・カニンガム、ポール・アウターブリッジ・ジュニアらの作品を加えて紹介し、山沢への影響を探る。4章構成でなる本展の第1章では、山沢の写真作家としての最後の新作個展となった1986年の展示に出品された〈What I Am Doing〉シリーズ28点(大阪中之島美術館所蔵)を紹介する。第2章では、1943年から1962年のあいだに制作した作品77点を収録し、山沢の抽象表現の原点を示す写真集『遠近』を紹介。第3章は、「コンスエロ・カナガと『カメラ・ワーク』」「西海岸の写真家たち」「アメリカの広告写真」の3部に分けて、山沢が体験したであろう20世紀前半のアメリカの写真文化を紹介。最終章では、戦前から戦後にかけて山沢が手がけた「ポートレート」「疎開中の写真」「商業写真」を通じて、山沢の仕事の幅の広さと抽象表現への接近を紹介する。

本展会期中には、上述した池上司による講演会のほか、『現代アメリカ写真を読む――デモクラシーの眺望』の著者としても知られる日高優(立教大学教授)の講演会「山沢栄子が出会ったアメリカ――女性、写真、創造する知覚」、写真家のうつゆみこによるワークショップ「身近な素材であなたの世界をつくってみよう」を予定している。

 

関連イベント
物が少ない作家 ― 山沢栄子の写真とアメリカ
講師:池上司(西宮市大谷記念美術館学芸員)
2019年11月23日(土・祝)14:00-15:30
会場:東京都写真美術館1階スタジオ
定員:50名(聴講無料)
※当日10:00より1階受付にて整理券配布。番号順入場、自由席。

山沢栄子が出会ったアメリカ ― 女性、写真、創造する知覚
講師:日高優(立教大学教授)
2019年12月1日(日)14:00-15:30
会場:東京都写真美術館1階スタジオ
定員:50名(聴講無料)
※当日10:00より1階受付にて整理券配布。番号順入場、自由席。

ワークショップ 身近な素材であなたの世界をつくってみよう
講師:うつゆみこ(写真家)
2019年11月30日(土)14:00-17:00
会場:東京都写真美術館1階スタジオ
対象:小学校4年生から一般
定員:20名(事前申込制、応募多数の場合は抽選)、無料
※申込方法など詳細:https://topmuseum.jp/contents/workshop/details-3690.html

その他の関連イベントは公式ウェブサイトを参照

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