塩田千春展:魂がふるえる @ 森美術館


塩田千春「不確かな旅」2016年 展示風景:『不確かな旅』ブレイン|サザン(ベルリン)2016年、撮影:Christian Glaeser

 

塩田千春展:魂がふるえる
2019年6月20日(木)-10月27日(日)
森美術館
http://www.mori.art.museum/
開館時間:10:00-22:00(火曜は17:00まで)入館は閉館30分前まで
会期中無休
企画:片岡真実(森美術館副館長兼チーフ・キュレーター)

 

森美術館では、記憶や感情、生と死という人間の根源的な問いに向き合いながら、ベルリンを拠点に活動する塩田千春の過去最大規模の個展『塩田千春展:魂がふるえる』を開催する。本展のために制作した最新作、塩田を代表する大規模なインスタレーションのほか、1990年代の初期作品やパフォーマンスの記録、舞台美術の仕事に関する資料展示など、20年にわたる活動を網羅的に紹介する貴重な機会となる。

京都精華大学で絵画を専攻した塩田千春(1972年大阪府生まれ)は、オーストラリア国立大学留学時に、並行線のみを描いた大規模なドローイングや、空間に「絵を描くように」糸を張った作品を制作、身体に絵具を塗り、シーツを使ったパフォーマンスを試みる。ドイツのブラウンシュバイク美術大学ではマリーナ・アブラモヴィッチに師事し、本格的に身体を使ったパフォーマンスをはじめ、さまざまな試みに取り組んだ。99年にベルリンに拠点を移し、ドイツ、ヨーロッパを中心に発表をはじめた塩田は、2001年に第1回横浜トリエンナーレで泥の付着した5着の巨大なドレスを天井から吊り下げた「皮膚からの記憶」で注目を集める。これまでに国立国際美術館(2008)、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(2012)、高知県立美術館(2013)など数々の展覧会を経て、2015年の第56回ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館では、日本、ドイツ、イタリアで募集した大量の鍵が結ばれた夥しい数の赤い糸が天井から垂れ下がる空間に、幾多の鍵を受け止めるように2艘の舟を配置したインスタレーション「掌の鍵」を実現し、記憶を媒介して他者へと繋がる空間を創出した。

 


塩田千春「掌の鍵」2015年 展示風景:第56回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展(イタリア)2015年、撮影:Sunhi Mang


塩田千春「どこへ向かって」2017年 展示風景:『どこへ向かって』ル・ボン・マルシェ(パリ)2017年、撮影:Gabriel de la Chapelle

 

同展示を含め、塩田作品に頻繁に使われる「舟」は、大海に浮かぶ小舟のように先の見えない未来や人生などを連想させ、塩田作品を最も特徴付ける黒や赤の糸を空間全体に張り巡らせる大規模なインスタレーションは、その空間を歩く観客に目に見えない繋がりや、記憶、不安、夢、沈黙など、かたちの無いものを体感的、視覚的に意識させる。本展もまた、美術館の入口の高さ11メートルの天井から約100艘の舟を吊り下げたインスタレーション「どこへ向かって」、展示室を埋め尽くす赤い糸とフレームのみの舟を配したインスタレーション「不確かな旅」ではじまる。「不在のなかの存在」をテーマに制作してきた塩田は、初期のパフォーマンス以降、塩田自身が演じる限られた映像作品を除けば、ドレスや靴、スーツケース、鍵、椅子など人の痕跡や記憶を想起させる素材を使用しつつも、作品に身体を明示的に表してはこなかった。しかし、一昨年に再発を告げられた癌の治療の過程で、身体がばらばらになるような感覚に襲われた塩田は、壊れた人形のパーツを集め、再び自身の手足を鋳造した作品の制作をはじめた。本展のための新作インスタレーションでは、身体の断片が糸で繋げられ、観客に魂や生きる意味を問いかける。

 

今まで、展覧会が好きでそれだけが生きがいで、作品を作ってきました。どうにもならない心の葛藤や言葉では伝えることができない感情、説明のつかない私の存在、そのような心が形になったのが私の作品です。一昨年、12年前の癌が再発しましたが、死と寄り沿いながらの辛い治療も、良い作品を作るための試練なのかもしれないと考えました。この展覧会では、過去20年間分の作品を発表します。裸になった私の魂との対話を観てください。(塩田千春、本展プレスリリースより)

 

本展企画は、森美術館副館長兼チーフ・キュレーターの片岡真実。片岡は同館開館以来、複数のグループ展のほか、2005年の『小沢剛:同時に答えるYESとNO!』をはじめ、アイ・ウェイウェイ、イ・ブル、会田誠、リー・ミンウェイ、そして、2017年の『N・S・ハルシャ:チャーミングな旅』と、総面積2000㎡を誇る同館で開かれた個展の多くを手がけている。

 

関連イベント
アーティストトーク ※既に申込受付終了。
出演:塩田千春
2019年6月22日(土)14:00-15:30

関連情報
塩田千春「6つの船」2019年
2019年2月27日(土)-10月31日(日)※予定
会場:GINZA SIX 中央吹き抜け

 

ART iT Interview
塩田千春「些細な思いが呼びさます共通記憶のスイッチ」(2010年9月)

 


塩田千春「時空の反射」2018年 所蔵:Alcantara S.p.A.、展示風景:『時間を巡る9つの旅』パラッツォ・レアーレ(ミラノ)2018年、撮影:Sunhi Mang


塩田千春「集積—目的地を求めて」2016年 展示風景:『アート・アンリミテッド』アートバーゼル(スイス)2016年、Courtesy:Galerie Templon、撮影:Atelier Chiharu Shiota


塩田千春 オペラ公演「松風」のステージデザイン、ベルリン国立歌劇場、2011年、撮影:Bernd Uhlig

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