創作と対話のプログラム『アートセンターをひらく 第Ⅰ期』@ 水戸芸術館現代美術ギャラリー

 

創作と対話のプログラム
アートセンターをひらく 第Ⅰ期
2019年3月2日(土)-5月6日(月・祝)
水戸芸術館現代美術ギャラリー
http://www.arttowermito.or.jp/
開館時間:10:00-18:00
休館日:月(ただし、4/29は開館)
企画:竹久侑(水戸芸術館現代美術センター主任学芸員)

 

水戸芸術館現代美術ギャラリーでは、開館30周年を来年に控え、アートセンターに求められる役割を創作と対話をテーマに多角的に再検討する企画『アートセンターをひらく 第Ⅰ期』を開催する。

水戸芸術館現代美術ギャラリーは1990年に日本国内では珍しい、コレクションの収集、保管よりも展覧会の開催を重視するクンストハレ型の文化施設として開館した。約30年という時が経ち、移り変わりゆく社会の中で、社会におけるアートセンターの役割を考えるにあたり、本企画の第Ⅰ期では、ギャラリーを滞在制作/長期ワークショップ、パブリック・プログラム、カフェの3つの用途で活用し、「創作の場」、「対話の場」、「第3の場」としてひらいていく。

まず、本企画では国内外から7名のアーティストを招聘し、滞在制作/長期ワークショップとして、ギャラリーを完成した作品の展示の場ではなく、制作過程の場として活用する。3月に滞在するのは、ハロルド・オフェイ、毛利悠子、エマニュエル・レネの3名。ハロルド・オフェイ(1977年ガーナ、アクラ生まれ)は、身体を通して見出される空間や場所にまつわる物語に関心を寄せ、大衆文化や社会現象を引用した作品を制作する。2018年にはトロントのニュイ・ブランシュに招待され、同市のクイアカルチャーが辿った抑圧と解放の歴史を掘り下げる作品を上演するなど、パフォーマンスを軸とした表現を発表している。また、今回の滞在中に2度のパフォーマンスを予定している。毛利悠子(1980年神奈川県生まれ)は、磁力や重力、光など、目に見えず触れられない力を観客に喚起するインスタレーションを国内外で発表している。『大友良英「アンサンブルズ2010―共振」』の出品作家のひとりとして、水戸芸術館でも作品を発表している。現在、十和田市現代美術館で個展『ただし抵抗はあるものとする』(3月24日まで)が開かれている。エマニュエル・レネ(1973年パリ生まれ)は、展覧会ごとにその施設の属性や建築的要素の調査、スタッフの職場環境の取材を通じて、サイトスペシフィック・インスタレーションを制作している。昨年はヘイワード・ギャラリーのHENIプロジェクトスペースやFRACシャンパーニュ・アルデンヌで個展を開催している。

 


毛利悠子「パレード」2011〜17年、撮影:Jacqueline Trichard


潘逸舟「Musical Chairs」(部分)2015年

 

続いて、4月に滞在するのは、呉夏枝、末永史尚、潘逸舟の3名。呉夏枝(1976年大阪府生まれ)は、布にまつわる行為から、ワークショップや対話を通じて、言葉にされることのなかった人びとの物語や生とともにある記憶を収集し、自らの作品のモチーフへと展開し、テキスタイルや写真、音声を用いた空間的な作品を発表している。近年は、オーストラリア、日本、韓国の間を、海を越えて渡った人びとの軌跡を調査し歴史と織り交ざった個人の物語に目を向ける試みとして、連作「grand-mother island」プロジェクトに取り組んでいる。末永史尚(1974年山口県生まれ)は、日常的に目にする物や、美術作品をとりまく状況や空間に目を向け、その視覚的な特徴をもとにした絵画・立体作品を制作している。2014年には愛知県美術館のAPMoA Project ARCHで個展を開催。群馬県立近代美術館の『開館40周年記念 1974 第1部 1974年に生まれて』、プロジェクト2016『トランス/リアル—非実体的美術の可能性』での八重樫ゆいとの二人展などで作品を発表している。潘逸舟(1987年上海生まれ)は、等身大の個人の視点から、社会と個の関係の中で生じる疑問や戸惑いを、自らの身体を通じて、映像やインスタレーション、写真、絵画などさまざまな方法で表現している。家族とともに9歳のときに青森に移り住み、2012年に東京芸術大学美術研究科先端芸術表現大学院を修了。2000年代中頃より国内外で精力的に作品の発表を重ねている。各作家は基本的に滞在開始時と滞在終了時の2度、アーティスト・トークを開催する。

また、長期ワークショップとして、ダンサー・振付家の砂連尾理(1965年大阪府生まれ)が、「変身」をテーマに怪我や老い、障害、性などについて参加者と語り合い、身体表現へと転換していく。2019年3月からの毎月1、2回のワーク及び集中稽古を経て、2020年1月に成果を発表する。砂連尾は1991年に寺田みさことダンスユニットを結成し、国内外で活動。近年はソロ活動を中心に、ドイツの障がい者劇団ティクバ、京都・舞鶴の高齢者との協働、宮城・閖上の避難所生活者の取材が契機とした作品制作、映画、オペラの振付など多角的な活動を展開している。また、著書に『老人ホームで生まれた〈とつとつダンス〉―ダンスのような、介護のような』(晶文社、2016年)がある。

そして、本企画では、水戸芸術館現代美術センターの教育プログラム「高校生ウィーク」の一環として2004年以来開設してきたカフェを、高校生のギャラリー入場が通年無料になったことをふまえ、より多世代・多目的な場としてひらき、休館日以外、毎日開催する。また、観て、聴いて、対話しながら「いま、必要な場所」をともに考える機会をつくるため、土、日、祝日に、さまざまなジャンルのイベントで構成されたパブリック・プログラムを開催する。これらの試みを通じて、「作品を鑑賞する」だけではない、さまざまな価値観を持つ人びとが行き交う公共的な空間、自身や他者と出会うプラットフォームとしてのアートセンターのあり方を模索していく。本企画を構成する多種多様なプログラムの詳細は公式ウェブサイトや公式ツイッターで紹介している。なお、『アートセンターをひらく 第Ⅱ期』では、第Ⅰ期の成果を発表する予定。概要は4月以降に発表される。

 


「高校生ウィーク2017」カフェ風景、2017年、撮影:佐藤理絵


ハロルド・オフェイ「Selfie Choreography: Performing with the Camera」2017年、撮影:Holly Revell(DARC collective)

 

関連企画
アーティスト・トーク
講師:エマニュエル・レネ、ハロルド・オフェイ
2019年3月2日(土)14:00-16:30
講師:毛利悠子
2019年3月3日(日)14:30-15:30

パフォーマンス「Choreograph Me」(振りつけて)
出演:ハロルド・オフェイ
2019年3月9日(土)14:00-15:30

パフォーマンス「Lounging」(くつろいだポーズ)
出演:ハロルド・オフェイ
2019年3月16日(土)14:00-15:00

 


呉夏枝「空白いろのきおくに浮かぶ海女の家/船」(部分)2018年

 

アーティスト・トーク
講師:呉夏枝、末永史尚、潘逸舟
2019年4月6日(土)14:00-16:00

ワークショップ「ひもづくりからはじまる身ぶり」
講師:呉夏枝
2019年4月7日(土)、13日(土)各日13:00-15:30
対象:小学校高学年以上
定員:各日10名(要申込・先着順)

アーティスト・トーク
講師:呉夏枝、末永史尚、潘逸舟
2019年5月5日(日・祝)14:00-16:00

砂連尾理ワークショップ「変身」
2019年3月16日(土)15:00-16:30
2019年4月7日(日)15:00-16:30
2019年4月27日(土)15:00-16:30

 


砂連尾理「とつとつダンス part2-愛のレッスン」2014年、撮影:森真理子


「アンサンブルズ・パレード2011」水戸芸術館、2011年、撮影:大谷健二

 

パブリック・プログラム
※一部のみ掲載。アーティスト・トークやアーティストによるワークショップをはじめ、全プログラムはチラシ(PDF)や公式ツイッター(@MITOGEI_Gallery

パブリック・プログラム|ワークショップ(全プログラム、申込詳細はこちら
「オーケストラMITO!」
講師:大友良英(音楽家)
2019年3月21日(木・祝)16:00-18:00
定員:80名(要申込・先着順)
参加費:500円
※同日、大友によるレクチャーを事前(13:30-15:30)に開催。聴講無料。

パブリック・プログラム|レクチャー/座談会(全プログラム、申込詳細はこちら
「なぜアートセンターをひらくのか?-公共施設から公共圏へ」
講師:村田麻里子(メディア論、ミュージアム研究)
2019年3月17日(日)14:00-16:00
定員:80名
「場/社会について-即興の観点から考えてみる」
講師:大友良英(音楽家)
2019年3月21日(木・祝)13:30-15:30
定員:80名
※同日レクチャー後に大友によるワークショップ「オーケストラMITO!」を開催。(要予約)
座談会「いま、必要な場所」
講師:小山田徹(美術家)、久保田翠(認定NPO法人クリエイティブサポートレッツ代表理事)、砂連尾理(ダンサー/振付家)、横須賀聡子(310食堂実行委員会共同代表/NPO法人セカンドリーグ茨城理事長)
2019年4月28日(日)13:30-17:00
定員:40名

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連携企画(全プログラム、申込詳細はこちら

 


エマニュエル・レネ「It Seems that The Background of Being is Changing?」2015年、撮影:Blaise Adilon


末永史尚「Tangram Painting(予定表)」2015年


「書く。部」活動風景、2018年、撮影:川村麻純

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