台北ビエンナーレ2025

 

2025年11月1日より台北市立美術館にて、サム・バードウィル&ティル・フェルラス(国立ハンブルガー・バーンホフ現代美術館ディレクター)が掲げる「Whispers on the Horizon」をテーマの下、世界35都市から54名のアーティストが集う台北ビエンナーレ2025が開幕する。

台北ビエンナーレ2025の背景となるのは、植民地支配、アイデンティティの葛藤、政変を経てきた台湾の複雑な歴史。「Whispers on the Horizon(地平線上のささやき)」をテーマに掲げる本展は、単なる願望を超えて、より永続的かつ未解決で、人間の条件に深く埋め込まれたものへと拡張する「思慕」の概念を多角的に探求する。なかでも、侯孝賢が日本統治下の台北に生まれた人形師、李天祿の半生を描いたセミドキュメンタリー『戯夢人生』(1993)における「人形」、台湾文学における重要作家、陳映真の短編小説『私の弟康雄[我的弟弟康雄]』(1960)において、激動の時代に身を投げた青年の憧憬と苦闘の日々を綴った「日記」、現代台湾を代表する作家、呉明益の『自転車泥棒』(2015)において、主人公の父の失踪と台湾近現代史を辿る基点となる「自転車」という3つのオブジェが、台湾の「思慕」の歴史を考察する本展の着想源となった。

また、台北市立美術館所蔵が所蔵するチェン・チェンポー[陳澄波](1895–1947)、チェン・チーチー[陳植棋](1906–1931)、チェン・ジン[陳進](1907–1998)などの20世紀初頭の絵画や、国立故宮博物院所蔵の工芸品も「思慕」の歴史を考察する着想源のひとつとなっている。

 

Monia Ben Hamouda, Ya’aburnee Untranslated Fragment I) (2025) Thala marble. 106 x 85 x 15 cm. Courtesy of the artist
Mona Hatoum, Cellules (detail) (2012-2013), mild steel and hand-blown glass in eight parts. 170 cm, variable width and depth. Installation view at Galerie Chantal Crousel, Paris © Mona Hatoum. Courtesy Galerie Chantal Crousel, Paris (Photo: Florian Kleinefenn)

 

約半数の参加アーティストが1984年以降生まれとなった本展では、タイ出身のコラクリット・アルナーノンチャイ(1986年生まれ)が記憶や神話と霊的な儀式との融合を試みた新作《Love after Death》、レバノン出身のオマル・ミスマル(1986年生まれ)がパレスチナに暮らしたスイス出身のハンナ・ゼラーによる植物図鑑『Flowers of Palestine』(1870)に着想した巨大な造花のブーケ《Still My Eyes Water》、台湾出身のチウ・ジーヤン[邱子晏](1985年生まれ)が手作りの零戦や映画を組み合わせて日本植民地時代の飛行場を再現した《Fake Airfield》を発表。サウジアラビア出身のファトマ・アブドゥルハディ(1988年生まれ)やフランス出身のガエル・ショワンヌ(1985年生まれ)によるインスタレーションなど、33点の委嘱作品が初公開となる。

 

第14回台北ビエンナーレ2025
「Whispers on the Horizon(地平線上のささやき)」

20252025年11月1日-2026年3月29日
https://www.taipeibiennial.org/2025/
台北市立美術館
アーティスティック・ディレクター:サム・バードウィル&ティル・フェルラス

 

Lina Lapelytė, Study of Slope (a.k.a The Mutes), (2022) Lafayette Anticipations. Courtesy of the artist.
Fuyuhiko Takata, The Princess and the Magic
Birds
(2020-2021) single channel video with sound, 17min52sec. Courtesy of the artist.

 

参加アーティスト
ファトマ・アブドゥルハディ|Fatma Abdulhadi
アフラ・アル・ダヘリ|Afra Al Dhaheri
ムハンマド・アル゠ファラジュ|Mohammad Al Faraj
コラクリット・アルナーノンチャイ|Korakrit Arunanondchai
イヴァナ・バシッチ|Ivana Bašić
ラナ・ベーグム|Rana Begum
モニア・ベン・ハモウダ|Monia Ben Hamouda
ヤコポ・べナッシ|Jacopo Benassi
ヘラ・ビュユクタシュヤン|Hera Büyüktaşçıyan
チェン・チェンポー[陳澄波]|Chen Cheng-Po
チェン・チーチー[陳植棋]|Chen Chih-Chi
チェン・ジン[陳進]|Chen Chin
エドガー・カレル|Edgar Calel
スカイラー・チェン[陳柏豪]|Skyler Chen
ムスキキ・チィイン[致穎]|Musquiqui Chihying
ガエル・ショワンヌ|Gäelle Choisne
アイザック・チョン・ワイ|Isaac Chong Wai
チウ・ジーヤン[邱子晏]|Zih-Yan Ciou
ジャッキー・コノリー|Jacky Connolly
ロヒニ・デヴァシャー|Rohini Devasher
シモン・デュブレー・メラー|Simon Dybbroe Møller
モナ・ハトゥム|Mona Hatoum
ホー・ジク[贺子珂]|Zike He
ホー・イェンイェン[何彥諺]|Yen-Yen Ho
アンナ・イェルモラエヴァ|Anna Jermolaewa
エヴァ・ジョスパン|Eva Jospin
キム・ミンジョン|Minjung Kim
チョウン・キム・アチム|Joeun Kim Aatchim
クリストファー・クーレンドラン・トーマス|Christopher Kulendran Thomas
リナ・ラペリテ|Lina Lapelytė
オマル・ミスマル|Omar Mismar
ニー・ハオ|Ni Hao
カミーユ・ノーメント|Camille Norment
エンリケ・オリヴェイラ|Henrique Oliveira
パメラ・パツィモ・サンストラム|Pamela Phatsimo Sunstrum
バニー・ロジャース|Bunny Rogers
澤英里可|Hiraki Sawa
シルヴィ・セリグ|Sylvie Selig
ジェレミー・ショウ|Jeremy Shaw
P. スタッフ|P. Staff
タク・ヨンジュン|Young-jun Tak
高田冬彦|Fuyuhiko Takata
スン・テウ|Sung Tieu
キリアコス・トンポリディス|Kiriakos Tompolidis
アルバロ・ウルバノ|Álvaro Urbano
ワン・シャンリン[王湘靈]|Hsiang Lin Wang
ワン・ヤオイー[王耀億]|Yao-Yi Wang
ナリ・ワード|Nari Ward
ウー・チャユン[吳家昀]|Chia-Yun Wu
イ・スギョン|Yeesookyung
横溝静|Shizuka Yokomizo
ユ・ジ[于吉]|Yu Ji
チャン・ルーイー[张如怡]|Ruyi Zhang
トビアス・ツィローニー|Tobias Zielony

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