Biennale Arte 2026 Photo by Andrea Avezzù, Courtesy of La Biennale di Venezia
2025年5月27日、ヴェネツィア・ビエンナーレ事務局は、来年5月に開幕する第61回ヴェネツィア・ビエンナーレに向けた記者会見を開き、5月10日に急逝した同展キュレーターの故コヨ・クオの構想を引き継ぎ、「In Minor Keys(マイナー調で)」のテーマの下、展覧会の実現を目指す旨を発表した。
アフリカおよびアフリカン・ディアスポラの現代美術を専門に、アートにおける脱植民地化の問題に長く取り組んできたコヨ・クオ(1967-2025)は、昨年10月17日にヴェネツィア・ビエンナーレ事務局長のピエトランジェロ・ブッタフォーコから第61回展のアーティスティック・ディレクターとしての招聘、11月5日にヴェネツィア・ビエンナーレ理事会よりディレクターへの任命を快諾し、第60回展閉幕後の12月3日の記者会見にて就任が公表された。昨年の招聘から今年5月初旬にかけて、クオは展覧会全体の構想から理論的な枠組みの定義、アーティストや作品の選定、展覧会のビジュアルアイデンティティや展示デザインの決定、参加を呼びかけたアーティストとの対話などを精力的に進め、当初5月20日に予定されていた記者会見に備えていた。
「In Minor Keys」と題されたキュラトリアル・テキストは、深く息を吸い、吐いて、肩の力を抜き、目を閉じるように語りかけ、けたたましく鳴り響く騒音にかき消されそうになりながらも確かに存在する音楽、悲劇に見舞われながらも美を生み出す人々の歌、廃墟から立ち上がる人々の旋律、傷や世界を修復する人々のハーモニーに耳を傾けるようにと呼びかける。「Minor Keys」の可能性を、ジェームズ・ボールドウィンやトニ・モリスン、エドゥアール・グリッサンやパトリック・シャモワゾーの言葉を引用しながら語り、第61回ヴェネツィア・ビエンナーレは、世界で起きている出来事に対する御託を並べるのでも、悪化の一途を辿り重なり合う危機から目を背けたり逃避するのでもなく、むしろ、アートの本来あるべき場所と社会における役割、すなわち、感情的なもの、視覚的なもの、感覚的なもの、情動的なもの、主観的なものを根本的に結びつけ直すものを目指すと提案していた。
ヴェネツィア・ビエンナーレ事務局は、遺族の全面的な協力を得て、クオが構想した展覧会を第61回展として開催することを決定。彼女のプロジェクトを忠実に実現することで、クオが最後まで献身的に追い求めた思想や作品を心に留め、その可能性を引き出し、普及するという更なる目的を掲げた。第61回展の準備はヴェネツィア・ビエンナーレとクオ自身が声をかけたゲイブ・ベックハースト・フェイジョ(Gabe Beckhurst Feijoo)、マリー゠ヘレン・ペレイラ(Marie Helene Pereira)、ラシャ・サルティ(Rasha Salti)、シッダールタ・ミッター(Siddhartha Mitter)とローリー・ツァパイ(Rory Tsapayi)に引き継がれる。
なお、企画展参加アーティストのリストは、2026年2月25日に開かれる記者会見で、ビジュアルアイデンティティや展覧会デザイン、国別参加部門参加国とともに発表される。第61回ヴェネツィア・ビエンナーレは、2026年5月9日から11月22日まで、ジャルディーニとアルセナーレを中心に開催。日本館の代表には荒川ナッシュ医が選ばれている。
第61回ヴェネツィア・ビエンナーレ
2026年5月9日(土)-11月22日(日)
https://www.labiennale.org/en/art/
Koyo Kouoh ©Mehdi Benkler, BAK
Biennale Arte 2026 Photo by Andrea Avezzù, Courtesy of La Biennale di Venezia