光州ビエンナーレ2023

 

2023年4月7日、アジア地域を代表する現代美術の国際展として知られる光州ビエンナーレが、「soft and weak like water(天下に水より柔弱なるは莫し)」をテーマに開幕する。同ビエンナーレ史上最大の94日間に拡大し、秋季から5月18日を含む春夏季に会期を移した本ビエンナーレは、世界各地から79名/組のアーティストが参加し、40点以上の新作およびコミッションプロジェクトを含む作品が、光州ビエンナーレホールを中心に光州市内各所に展開する。

アーティスティック・ディレクターを務めるのは、テート・モダンのインターナショナル・アート部門シニア・キュレーターのイ・スキョン(1969年ソウル生まれ)。韓国出身者として2006年のキム・ホンヒ以来の抜擢となったイは、30年近く現代美術に携わってきたキャリアの大半を国外で過ごし、国際的なネットワークを築くとともに大規模な展覧会の経験を積み上げてきた。2015年には第56回ヴェネツィア・ビエンナーレ韓国館のキュレーターを務め、ムン・キョンウォン&チョン・ジュンホの展覧会を実現。2019年にテート・モダンで企画したナム・ジュン・パイクの回顧展は国際巡回を果たしている。キュラトリアル・チームは、テートでの職歴を持ち、現在はロンドンを拠点とする1年間のキュラトリアル・トレーニング・プログラム「New Curators」の共同ディレクターを務めるケリン・グリーンバーグがアソシエイト・キュレーター。ソウル在住のインディペンデントキュレーターで、光州ビエンナーレ財団による5.18光州民主化運動に関する特別展示プロジェクトの一環として「MaytoDay」の共同キュレーターを務めたイム・スヨンと、サンフランシスコとソウルを拠点に活動するインディペンデントキュレーターのハリー・C・H・チョイがアシスタント・キュレーターを務める。

 


Meiro Koizumi, Theater of Life 2023 (Production Still). Five-channel video installation. Commissioned by the 14th Gwangju Biennale and Han Nefkens Foundation. Image courtesy of the artist, Annet Gelink Gallery, Amsterdam, and MUJIN-TO Production, Tokyo.


Seung-Ae Lee, The Wanderer 2023 (Film Still). Single-channel video (colour, sound).
Commissioned by the 14th Gwangju Biennale. Image courtesy of the artist and Arario Gallery, Seoul.


Chang Jia, Beautiful Instruments III – 12 Collages (Convict), 2023.
Collaged cyanotypes. 9 pieces, 193 × 120 cm each.
Commissioned by the 14th Gwangju Biennale. Image courtesy of the artist.

 

中国春秋戦国時代の思想家、老子『道徳経(第78章)から引用した「soft and weak like water」をテーマに、本ビエンナーレでは、水の変革的かつ修復的な可能性をメタファーや力、方法として捉え、私たちが共有する惑星を抵抗、共存、連帯、ケアの場所として想像することを提案していく。テーマから着想した新作には、長きにわたり海岸沿いの地域の環境、歴史、産業の実状を記録するために水辺や水中の音をレコーディングしてきたレバノン出身のタレク・アトウィが、地元の職人や音楽家と協働して作り上げる本ビエンナーレのためのアンサンブルや、小泉明郎が、1930年代にスターリンによりロシア極東から中央アジアへと強制移住させられた高麗人の離散の歴史を扱った5チャンネルの新作映像インスタレーション《Theater of Life》、メコン川沿いに暮らすコミュニティの生活、夢、記憶を記録し、水資源の政治学を探究してきたタイキ・サクピシットの《The Spirit Level》、韓国の民間信仰に見られる儀式にならい、死者の嘆きや悲しみの浄化を試みるスンエ・イの新作などがある。また、海洋生物、テクノロジー、セクシュアリティ、栄養学、エコロジーに関心を抱いてきたアン・ドクヒ・ジョーダン、女性の身体に関する「常識」とされているものや社会的に禁止された習慣を批評的に取り上げてきたチャン・ジアは、継続的な制作活動を更新、再考した新作を発表予定。

 


Dayanita Singh, Mona and Myself 2013 (Film Still). Moving still image. Courtesy the artist and Frith Street Gallery, London. Installation view, Dayanita Singh: Dancing with my Camera, Gropius Bau, Berlin. Photo: Luca Girardini.


Charwei Tsai, Spiral Incense Mantra – Heart Sutra 2014. Spiral incense, 3 pieces, diameter 150 cm each. Installation view, We Came Whirling from Nothingness, TKG+, Taipei. Photo: Steve Hung.

 

ビエンナーレホール以外の会場、光州博物館では、キャンディス・リンが粉青沙器の伝統技術に影響を受けた陶彫刻やコンピューター機器、アニメーション映像などで構成する新作インスタレーションを同博物館の陶芸とともに展示。博物館の庭では、ソピアップ・ピッチがアルミニウムをリサイクルして、サルスベリの木に造形した彫刻《La Danse》を発表する。楊林山の麓に位置するコミュニティアートスペースのホランガシナム・アートポリゴンは、日本統治時代、反植民地運動、韓国のキリスト教福音派の面影を残す建物。同会場では、ヴィヴィアン・ズーターがアマゾン地域の風景を絵画的に読み解いた絵画、毛利悠子がハン・ガンの『すべての、白いものたちの』から着想したサイトスペシフィック・サウンドインスタレーション《I/O》(2011-2023)を発表。加えて、1990年代初頭の韓国のアーティストの先駆的なパフォーマンスを記録したキム・ヨンジェの映像や、海洋に浮かぶゴミを追跡し、人間と自然の関係を探ったチョン・チェチョルの作品を紹介する。また、無覚寺(ムガクサ)では、ダヤニータ・シンリュウ・ジャンフォアフォン・ドディンの作品を通じて、瞑想的な空間が作り出される。アートスペース・ハウスでは、ナイーム・モハイエメンがヨコハマトリエンナーレ2020にも出品した《Jole Dobe Na (Those Who Do Not Drown)》を発表する。

 

光州ビエンナーレ2023
2023年4月7日(金)- 7月9日(日)
https://gwangjubiennale.org/
アーティスティックディレクター:イ・スキョン
会場:光州ビエンナーレホール、光州博物館、ホランガシナム・アートポリゴン、無覚寺(ムガクサ)、アートスペース・ハウス

 

 

参加アーティスト
ラリー・アチャンポン|Larry Achiampong
アッバス・アカヴァン|Abbas Akhavan
ファラー・アル・カシミ|Farah Al Qasimi
マンマ・アンダーソン|Mamma Andersson
タレク・アトウィ|Tarek Atoui
メラニー・ボナヨ|melanie bonajo
バヒト・ブビカノヴァ|Bakhyt Bubikanova
ヘラ・ビュユクタシュヤン|Hera Büyüktaşcıyan
エドガー・カレル|Edgar Calel
マリア・マグダレーナ・カンポス=ポンス|María Magdalena Campos-Pons
チャン・ジア|Chang Jia
フォン・ドディン|Huong Dodinh
ラティファ・エシャクシュ|Latifa Echakhch
チョルウ・ク|Cheol-woo Gu
タロイ・ハヴィニ|Taloi Havini
ジェームス・T・ホン|James T. Hong
ホンイ・ヒョンスク|Hong Lee Hyun Sook
スカイ・ホピンカ|Sky Hopinka
IkkibawiKrrr|IkkibawiKrrr
アーサー・ジェイファ|Arthur Jafa
テス・ジャレイ|Tess Jaray
チョン・チェチョル|Jeoung Jae Choul
アン・ドクヒ・ジョーダン|Anne Duk Hee Jordan
ヨンギュン・カン|Yeon-gyun Kang
ナイーザ・カーン|Naiza Khan
ユキ・キハラ|Yuki Kihara
クリスティン・スン・キム|Christine Sun Kim
キラ・キム|Kira Kim
キム・クリム|Kim Kulim
キム・ミンジョン|Minjung Kim
スンギ・キム|Soun-Gui Kim
キム・ヨンジェ|Kim Youngjae
エミリー・カーメ・ウングワレー|Emily Kame Kngwarreye
小泉明郎|Meiro Koizumi
アブドゥライ・コナテ|Abdoulaye Konaté
シャイラ・クマリ・シン・バーマン|Chila Kumari Singh Burman
イ・コンヨン|Lee Kun-Yong
スンエ・イ|Seung-ae Lee
ソンテク・イ|Seung-taek Lee
キム・リム|Kim Lim
キャンディス・リン|Candice Lin
タニア・ルキン・リンクレイター|Tanya Lukin Linklater
リュウ・ジャンフォア|Liu Jianhua
タウス・マハチェヴァ|Taus Makhacheva
グアダルーペ・マラヴィーヤ|Guadalupe Maravilla
ノエ・マルティネス|Noé Martínez
マタ・アホ・コレクティブ|Mata Aho Collective
マユンキキ|Mayunkiki
アラン・マイケルソン|Alan Michelson
マウゴジャータ・ミルガ=タス|Małgorzata Mirga-Tas
ナイーム・モハイエメン|Naeem Mohaiemen
毛利悠子|Yuko Mohri
ベティ・マフラー|Betty Muffler
アリーザ・ニーセンバウム|Aliza Nisenbaum
ルチア・ノゲイラ|Lucia Nogueira
オ・ソックン|Oh Suk Kuhn
オー・ヨン|Oh Yoon
オム・ジョンスン|Oum Jeong Soon
パン・ダイジン|Pan Daijing
パンクロック・スゥラップ|Pangrok Sulap
ソピアップ・ピッチ|Sopheap Pich
アベル・ロドリゲス|Abel Rodriguez
タイキ・サクピシット|Taiki Sakpisit
マハボ・ヘレン・セビディ|Mmakgabo Helen Sebidi
アンヘリカ・セリチ|Angélica Serech
タッサナイ・セータセーリー|Thasnai Sethaseree
ダヤニータ・シン|Dayanita Singh
ブシュレベジェ・シワニ|Buhlebezwe Siwani
エミリア・シュカルヌリテ|Emilija Škarnulytė
ヴィヴィアン・ズーター|Vivian Suter
ユマ・タルー|Yuma Taru
ツァイ・チャーウェイ|Charwei Tsai
ジュディ・ワトソン|Judy Watson
アルベルタ・ウィットル|Alberta Whittle
サンティアゴ・ヤワルカーニ|Santiago Yahuarcani
イー・イラン|I-Lann Yee
ユ・ジウォン|Yu Jiwon
ロバート・ザオ・レンフイ|Robert Zhao Renhui
デイヴィッド・ジンク・イ|David Zink Yi

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