【PR】第18回台新芸術賞


Against Again Troupe – Sentimental Journey (2019) All images: Courtesy Taishin Bank Foundation for Arts and Culture, Taipei.

 

2020年6月6日、台新銀行文化芸術基金は第18回台新芸術賞の授賞式を台北市内で開催した。台新芸術賞は台湾国内で過去1年間に発表された視覚芸術および舞台芸術における優れた表現を表彰する国内有数の芸術賞として知られる。両部門の最終候補から選ばれる年間グランプリは、ホアン・スーノンが作・演出を手掛けた『White Clear Song』により、アゲインスト・アゲイン・トゥループが受賞、賞金150万台湾ドル(約550万円)を獲得した。また、各部門別の視覚芸術賞はチェン・イーシュアン、舞台芸術賞はワン・シーウェイが受賞し、それぞれ賞金100万台湾ドルを獲得した。

今年度の台新芸術賞はほかの数多くの文化芸術活動と同じように、世界規模の新型コロナウイルス感染症拡大の影響による社会情勢に合わせた形での開催となった。例年は台湾国内外の有識者が審査員を務めてきたが、今年度はドキュメンタリー作家で同賞の歴代受賞者でもあるホアン・ミンチュワン[黃明川]を審査委員長に、インディペンデント・キュレーターのマンレイ・シュー[徐文瑞]、ダンス批評家のチェン・ヤーピン[陳雅萍]、演劇批評家のチェン・チョンヒ[陳正熙]、ピアニストのワン・ペイヤオ[王佩瑤]、演劇批評家のパイ・シラヤ[白斐嵐]以上すべて台湾国内の有識者6名による審査となった。

満場一致で年間グランプリに選ばれたのは、2019年8月3日から9月22日にかけて、高雄市橋頭、台南市新営、苗栗県竹南、白色テロ記念園区など台湾の8箇所を巡回したアゲインスト・アゲイン・トゥループ[再拒劇團]の『White Clear Song』。同作は、国民党政府が異議や反対を唱えると見なす人々を暴力的に抑圧していた1947年から1987年まで続いた白色テロ時代を扱っている。過去の権威主義的な統治の下で行なわれた人権侵害やその結果の真相究明などを目指す「促進転型正義委員会」との連携、アーカイブ調査に基づいて制作された『White Clear Song』は、ストーリーテリングやバラッド、トーキング・ブルース、台湾唸歌、ドキュドラマなど、さまざまな口承文芸の形式を駆使して、白色テロの歴史的記憶の再構築を試みた。審査員は、「(同作は)語りや民謡、ルポルタージュ演劇を巧みに融合し(中略)白色テロの複雑に絡み合った現実の数々を伝えることで、アーカイブの原本が持つ視点を忠実に再構築している。(中略)『White Clear Song』は、長き沈黙の後に個々の苦悩を和らげ、オーラルヒストリーの持つ力を呼び起こし、忘却と無関心に抗うことで歴史を再体験している」と高く評価し、年間グランプリに選出した。

 


I-Hsuen Chen – Commissioned (2019)


WANG Shih-Wei – Masses——2019 New Points on Stage (2019)

 

視覚芸術賞は、台北の鳳甲美術館で2019年8月から10月にかけて開催した個展『Commissioned』によりチェン・イーシュアン[陳以軒]が受賞。チェン自身がそうである様に複数の仕事に従事する「スラッシャー」を雇用して制作に参加させるという形式をとった『Commissioned』は、あたかも現代美術の生態系の写鏡のようであり、異なる領域を越えて相互に支え合う現代美術や文化産業に携わる人々の労働条件に向き合う。審査員は、「同作に表れているのは、アートワールドの現実のみならず、現代社会の縮図である。参加型の共同制作や極端な振る舞い、(中略)繊細な音楽と映像を同期させた滑らかな映像を混ぜ合わせることで、映像インスタレーションを鮮やかな映像のシーンへと変容し、現実世界を美術館に持ち込むと同時に、美術空間をイメージの万華鏡に巻き込んでいる」と評した。

一方、舞台芸術賞は、ワン・シーウェイ[王世偉]が作・演出、ティエン・シャオズー[田孝慈]が振付、リ・ツゥメイ[李慈湄]が音響、ヘルミ・フィタが照明を担当した『Masses』が受賞した。2019年12月に松山文創園区のクリエイティブラボで上演された同作は、ダンスを通じて社会活動における個と集団の緊張関係を掘り下げる試み。世界的な混乱の時代に、その空間演出とパフォーマーの能力によって、観客が路上の抗議運動の真っ只中にある個人の人生の綾(あや)に向き合うような体験を生み出した。審査員は「(同作は)露骨な政治的発言や無責任のクリシェに陥ることなく、自己認識、情熱、集団における個の疎外といったものを真摯に見つめ、考察している」と高い評価を与えた。

授賞式はオンライン中継し、会場となった円形型の空間では、昨年の年間グランプリ受賞者のブラルイヤン・ダンス・カンパニーのパフォーマンスも披露された。また、台北市内の台新タワー1階ロビーでは、2020年5月4日から6月12日の期間、建築集団のシード・スペースラボ[彡苗空間實驗]が新型コロナウイルス感染症の対策を講じて設計した空間で最終候補作品を紹介する特集展示が行なわれた。台新芸術賞は2002年に台新銀行文化芸術基金が創設。2017年からは、台湾における視覚芸術、舞台芸術の領域横断的な精神の発展、また、各領域における専門性を反映するために、年間グランプリと、視覚芸術と舞台芸術の両部門への各賞を設けた現行の形に変更している。近年は、シュウ・ジャウェイの鳳甲美術館での個展『Huai Mo Village』、ゴン・ジョジュンがチーフキュレーターを務めた『近未来的交陪:2017蕭壠国際現代芸術祭』、ブラルイヤン・ダンス・カンパニーが台中国立歌劇院で上演した『LUNA』が年間グランプリを受賞している。

 

第18回台新芸術賞http://awarden.taishinart.org.tw/

台新銀行文化芸術基金http://www.taishinart.org.tw/index_en.php

 

 

最終候補(視覚芸術)
アウ・ショウイー[區秀詒]『STILL ALIVE』(2019/11/28-2020/1/19、The Cube Project Space)
リン・グワンミン[林冠名]『return』(2019/11/2-2019/12/7、Project Fulfill Art Space)
ホウ・イーティン[侯怡亭]『Cold Chain』(2019/4/27-2019/7/21、台北市立美術館)
シェ・ムーチー[謝牧岐]『I.O.U a Painting』(2019/9/14-2019/10/19、Project Fulfill Art Space)
チェン・イーシュアン[陳以軒]『Commissioned』(2019/8/10-2019/10/6、鳳甲美術館)
ウー・チュアンルン[吳權倫]『No Country for Canine』(2019/8/17-2019/11/3、台北市立美術館)

最終候補(舞台芸術)
ブラルイヤン・ダンス・カンパニー[布拉瑞揚舞團文化基金會]《#Yes or No》(2019/5/24、Cloud Gate Theater[雲門劇場])
リン・ティンシュイ[林廷緒]《Deluge – 2019 Codance》(2019/3/22、華山1914文化創意産業園区鳥梅劇院)
リー・チェンウェイ[李貞葳]《kNOwn FACE》『台湾国際芸術祭2019』(2019/3/7、国家両庁院 実験劇場)
シェ・ジェファ x アナーキー・ダンス・シアター[謝杰樺 x 安娜琪舞蹈劇場]《The Eternal Straight Line》(2019/8/17、衛武営国家芸術文化中心 戯劇院)
HORSE[驫舞劇場]《FreeSteps–NiNi》『台湾国際芸術祭2019』(2019/3/29、国家両庁院 戯劇院)
アゲインスト・アゲイン・トゥループ[再拒劇團]《White Clear Song》(2019/8/3、高雄橋頭糖廠 百世新天地)
国立伝統芸術中心台湾音楽館《Spring Blossom, Autumn Water—E-MEX Ensemble and Taiwanese Composers》(2019/11/24、台湾戯曲中心 小表演庁)
ソナー・サーカス[圓劇團]《Melancholic Mambo》(2019/7/12、国家両庁院 戯劇院 屋外広場)
アゲインスト・アゲイン・トゥループ[再拒劇團]《Sentimental Journey》『台湾国際芸術祭2019』(2019/10/23、台南老爺行旅)
ワン・シーウェイ[王世偉]《Masses – 2019 New Points on Stage》(2019/12/14、松山文創園区 東向製菸工場2階LAB)
ユー・イェンファン x ダーク・アイズ・パフォーマンス・ラボ[余彥芳 x 黒眼睛跨劇団]《Propositions on Disappearance III》(2019/11/22、驫舞劇場)

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