プリツカー賞2020


Grafton Architects, Universita Luigi Bocconi photo courtesy of Alexandre Soria

 

2020年3月3日、アイルランド出身の建築家のイヴォンヌ・ファレルとシェリー・マクナマラが、建築界における最高の栄誉として知られるプリツカー賞を受賞した。

2018年の第16回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展で総合ディレクターを務めたことでも知られるイヴォンヌ・ファレル(1951年タラモア生まれ)とシェリー・マクナマラ(1952年リスドゥーンバーナ生まれ)のふたりは、ともに主宰するグラフトン・アーキテクツでの活動をはじめ、1970年代より建築家および教育者として建築界に重要な貢献をもたらしてきた。ファレルとマクナマラはともにユニバーシティ・カレッジ・ダブリンで建築を学び、卒業後も同校の教育に長く携わり、2015年には非常勤講師に就任。現在はスイスのメンドリシオ建築アカデミーの教授も務める。教育活動に並行して、ファレルとマクナマラを含む5名で1978年にグラフトン・アーキテクツを設立し(現在はファレルとマクナマラの2名)、「North King Street Housing」(ダブリン、2000)、「Urban Institute of Ireland, University College Dublin」(ダブリン、2002)、「Loreto Community School」(ミルフォード、アイルランド、2006)、「Offices for the Department of Finance」(ダブリン、2009)、「Medical School, University of Limerick」(リムリック、アイルランド、2012)など、アイルランド国内の建築を中心に手がける。2008年には初の国際的な仕事となったミラノの「Universita Luigi Bocconi」により、同年にバルセロナで開かれた世界建築祭でグランプリを獲得。2012年にはブラジルの建築家パウロ・メンデス・ダ・ロシャとともにペルーのリマ国立工科大学のプロジェクトを第14回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展で発表し、銀獅子賞を受賞。同建築は2015年に竣工し、翌2016年に王立英国建築家協会[RIBA]国際賞を受賞。最近作はパリの「Institut Mines Télécom」(2019)とトゥールーズの「Université Toulouse 1 Capitole, School of Economics」(2019)。2020年はその生涯の功績が認められ、RIBAゴールドメダルも受賞している。

 


Grafton Architects, Loreto Community School photo courtesy of Ros Kavanagh

 

審査委員会は、ふたりの40年以上におよぶ活動を建築の芸術性、建築を通じた人類への一貫した貢献を表彰するという同賞の方針をまさに反映するものとして認めるとともに、その建築および建築業務の遂行に対する誠実なアプローチ、共同作業への信頼、第16回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展などで実証された同僚への寛容さ、建築の卓越性への絶え間ない献身、環境に対する責任ある姿勢、場所ごとの固有性を取り入れつつも国際性を有する能力などが同賞の受賞に値すると授賞理由を述べた。また、授賞理由には、現在もなお男性優位が続く建築界において、後続の模範となる道を築く指針となる先駆者としての存在も挙げられた。同賞の長い歴史において、ファレルとマクナマラは、2004年のザハ・ハディド、2010年の妹島和世(SANAAとして)、2017年のカルメ・ピジェム(RCRアーキテクツとして)の3名に続く、女性の受賞者となる。

プリツカー賞https://www.pritzkerprize.com/

 


Grafton Architects, University Campus UTEC Lima photo courtesy of Iwan Baan


Grafton Architects, Town House Building, Kingston University photo courtesy of Ed Reeves

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