札幌国際芸術祭2020、参加アーティスト第一弾発表


 

2020年2月、札幌国際芸術祭実行委員会は、「Of Roots and Clouds: ここで生きようとする」(アイヌ語:Sinrit / Niskur)をテーマとする札幌国際芸術祭2020(SIAF)に参加するアーティストの一部を発表した。

初の冬開催に挑むSIAF2020は、作品の一方的な提示に甘んじることなく、芸術祭と関わりを持つすべての人々が互いに影響し合い、知的な循環・交流の場の構築を目指す。企画ディレクターの天野太郎とアグニエシュカ・クビツカ=ジェドシェツカは、そうした場の構築に向けて、現在の社会が暗示する窮屈な未来とは別の未来の可能性に希望を見出しながら、新しい創造と抵抗の姿勢を提示しうるアーティストを各キュレーターと共に検討している。そうした中で今回、第一弾として発表されたのは物故作家を含む19組のアーティスト。

SIAF2020の入り口となる札幌市民交流プラザでは、クラクフのAGH科学技術大学のRe:Sensterが修復したメディアアート史に残る全長5メートルのキネティック・スカルプチャー《Senster》をアジアで初めて公開する。周囲の音や動きに反応する姿が動物のようにも見える同作は、ポーランド出身でロンドンを拠点にした彫刻家エドワード・イナトビッチが1968年に当時の最先端のロボット工学や人工知能の技術を活用して制作し、1970年より長く行方不明となっていたが、近年、Re:Sensterによる修復が完了し、昨年のWROメディアアートビエンナーレで一般公開された。劇場を有する複合施設の札幌市民交流プラザでは、国内外の先鋭的なパフォーマンスも紹介される予定。モエレ沼公園では、2015年に逝去した三上晴子の大規模な体験型インスタレーション《欲望のコード》を作家の意思を受け継いだ専門チームが修復、新しい技術によって更新した最新バージョンの世界初展示をはじめ、公園内のガラスのピラミッドや貯雪庫における展示のほか、モエレ山など冬ならではの屋外プロジェクトを展開する。

 


エドワード・イナトビッチ《Senster》Photo by Natalia Kabanow, Courtesy of WRO 2019/ WRO Art Center

 

札幌芸術の森では、急速な技術的進歩や、アート、科学、テクノロジーについて考える手がかりを掴むべく、1990年代初めのニューメディア領域における先駆者として知られるスザンヌ・トレイスターをはじめ、メディアアートに焦点を当てた展示を展開。「Of Roots and Clouds: ここで生きようとする」を端的に表現する会場として、北海道立近代美術館ではコレクション作品と、芸術祭が招聘したアーティストによる作品群とが渾然としながら共鳴する空間の構築を試みる。そのほか、mima 北海道立三岸好太郎美術館、札幌市資料館、札幌大通地下ギャラリー500m美術館といった各会場においても、日々の生活を見つめ直し、時に生きづらい現代をしなやかに生きていくための方法を探っていく知的な循環・交流の場の構築を目指した、さまざまなアプローチが展開される。

 

札幌国際芸術祭2020(SIAF)
2020年12月19日(土)- 2021年2月14日(日)
https://siaf.jp/siaf2020/
ディレクターチーム:天野太郎(企画ディレクター:現代アート担当/統括ディレクター)
アグニエシュカ・クビツカ=ジェドシェツカ(企画ディレクター:メディアアート担当)
田村かのこ(コミュニケーションデザインディレクター)

 


三上晴子《欲望のコード》2010年, 山口情報芸術センター[YCAM](山口)Photo by Ryuichi Maruo (YCAM) Courtesy of Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM]

 

会場別参加アーティスト
札幌市民交流プラザ
Re:Senster|Re:Senster
Cod.Act|Cod.Act

モエレ沼公園
三上晴子|Seiko Mikami
ジュリアン・シャリエール|Julian Charrière
中﨑透|Tohru Nakazaki
持田敦子|Atsuko Mochida

札幌芸術の森
スザンヌ・トレイスター|Suzanne Treister
キャロリン・リブル&ニコラス・シュミットプフェーラー|Carolin Liebl and Nikolas Schmid-Pfähler

 


神田日勝《室内風景》1970年、北海道立近代美術館蔵


大槌秀樹、旧住友赤平炭鉱坑口浴場での撮影

 

北海道立近代美術館
一原有徳|Arinori Ichihara
神田日勝|Nissho Kanda
後藤拓朗|Takuro Goto
大槌秀樹|Hideki Ozuchi

mima 北海道立三岸好太郎美術館
青山悟|Satoru Aoyama
原良介|Ryosuke Hara
三岸好太郎|Kotaro Migishi

札幌市資料館
プシェミスワフ・ヤシャルスキ|Przemysław Jasielski
ライナー・プロハスカ|Rainer Prohaska
村上慧|Satoshi Murakami

札幌大通地下ギャラリー500m美術館
クラウス・ポビッツァー|Klaus Pobitzer

 


三岸好太郎《飛ぶ蝶》1934年、北海道立三岸好太郎美術館蔵


クラウス・ポビッツァー

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