Tokyo Contemporary Art Award 2019-2021

 

2019年3月15日、東京都とトーキョーアーツアンドスペース(公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館)は、昨年創設したTokyo Contemporary Art Award(TCAA)の第1回受賞者に、風間サチコと下道基行のふたりを選出したと発表した。

TCAAは、海外での展開も含め、更なる飛躍とポテンシャルが期待できる国内の中堅アーティストを対象とする新たな現代美術の賞。国内外の有識者からなる選考委員に公募者リストを送付し、公募者を含む候補アーティストの推薦を依頼し、議論によりノミネートアーティストを決定する。その後、各アーティストの事前調査、スタジオ訪問など、アーティストの思考や作品表現、キャリアステージへの理解を深めた上で審査し、2名の受賞者を決定する。アーティストのキャリアにとって最適な時期に最善の支援内容を提供する必要性を重視し、受賞者には、賞金300万円のほか、海外での制作活動支援、東京都現代美術館での成果・受賞展の機会、日英表記のモノグラフの作成など、3年間にわたる継続的な支援が提供される。

 


風間サチコ「ディスリンピック 2680」2018年、木版画(和紙、油性インク) 撮影:宮島 径 © KAZAMA Sachiko Courtesy of MUJIN-TO Production


風間サチコ「決闘!硫黄島(近代五種麿参上)」2017年、木版画(和紙、油性インク) 撮影:宮島 径 © KAZAMA Sachiko Courtesy of MUJIN-TO Production

 

風間サチコ(1972年東京都生まれ)は、「現在」起きている現象の根源を「過去」に探り、「未来」に垂れこむ暗雲を予兆させる黒い木版画を中心に制作している。ひとつの画面にさまざまなモチーフを構成した木版画は、漫画風でナンセンス、黒一色のみの単色でありながら濃淡を駆使した多彩な表現を試み、彫刻刀によるシャープな描線によって、きわどいテーマを巧みに表現している。昨年は原爆の図丸木美術館で個展『ディスリンピア2680』を開催し、ブリスベンのクイーンズランド州立美術館の企画展『The Long Story』にも作品が出品された。そのほか、ヨコハマトリエンナーレ2017、光州ビエンナーレ2016、2015アジアン・アート・ビエンナーレ(国立台湾美術館)、『六本木クロッシング2013展:アウト・オブ・ダウト』(森美術館)などに参加している。2016年には公益財団法人日本文化藝術財団の「第8回創造する伝統賞」を受賞している。

下道基行(1978年岡山県生まれ)は、2000年代初頭より、旅やフィールドワークをベースにした制作活動を展開。主な作品に、日本各地に残る戦争遺構を調査撮影したシリーズ『戦争のかたち』(2001-2005)、自らの祖父の遺した絵画を追って旅したシリーズ『日曜画家』(2006-2010)や、日本の国境線の外側を旅し日本植民地時代の遺構の現状を調査するシリーズ『torii』(2006-2012)などがある。昨年だけでも、『MOVING STONES』(KADIST、パリ)、『Our Daily Our Border』(大館現代美術館、香港)、光州ビエンナーレ2018、『高松コンテンポラリーアート・アニュアル vol.07』(高松市美術館)などで作品を発表。そのほか、『下道基行展-風景に耳を澄ますこと』(黒部市美術館、2016)、岡山芸術交流2016、『六本木クロッシング2013展:アウト・オブ・ダウト』(森美術館)などに参加。2012年の光州ビエンナーレでは、NOON芸術賞(新人賞)を受賞。2019年の第58回ヴェネツィア・ビエンナーレの日本館展示への参加も決定している。

 


下道基行「漂泊之碑」2015年-、ガラス、ミクストメディア


下道基行「津波石」2015年-、ビデオ

 

4月21日には授賞式及び受賞記念シンポジウムを東京都現代美術館地下2階講堂で開催。シンポジウムでは、受賞者の風間と下道のほか、選考委員を務めた神谷幸江(ジャパン・ソサエティー、ニューヨーク、ギャラリー・ディレクター)、住友文彦(アーツ前橋 館長/東京藝術大学大学院 准教授)、ドリュン・チョン(M+ 副館長/チーフ・キュレーター)、キャロル・インハ・ルー(北京インサイドアウト美術館 ディレクター)、近藤由紀(トーキョーアーツアンドスペース プログラムディレクター)が登壇。塩見有子(特定非営利活動法人アーツイニシアティヴ ディレクター)がモデレーターを務める。(※選考委員のマリア・リンドは都合により登壇しない)

 

Tokyo Contemporary Art Award 2019-2021https://www.tokyocontemporaryartaward.jp/

 

授賞式及び受賞記念シンポジウム
登壇者:風間サチコ(受賞者)
下道基行(受賞者)
神谷幸江(ジャパン・ソサエティー、ニューヨーク、ギャラリー・ディレクター)
住友文彦(アーツ前橋 館長/東京藝術大学大学院 准教授)
ドリュン・チョン(M+ 副館長/チーフ・キュレーター)
キャロル・インハ・ルー(北京インサイドアウト美術館 ディレクター)
近藤由紀(トーキョーアーツアンドスペース プログラムディレクター)
モデレーター:塩見有子(特定非営利活動法人アーツイニシアティヴ ディレクター)
2019年4月21日(日)15:00-17:00
会場:東京都現代美術館 地下2階講堂
入場無料、要事前申込、先着順
※日英同時通訳あり
申込方法は公式ウェブサイトを参照:
https://www.tokyoartsandspace.jp/archive/event/2019/20190421-6420.html

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