アジア太平洋酒造協会基金シグネチャー・アートプライズ2018


Phan Thao Nguyen Tropical Siesta (2015–2017)

 

2018年6月29日、シンガポール美術館[SAM]とアジア太平洋酒造協会[APB]基金が主催するシグネチャー・アートプライズ2018の授賞式典がシンガポール国立博物館で開かれ、最終候補15作品の中から、ファン・タオ・グィンの「Tropical Siesta」がグランプリを受賞した。ファン・タオ・グィンには副賞として6万シンガポールドル(約487万円)が授与された。また、審査員賞には、シュビギ・ラオ「Pulp: A Short Biography of the Banished Book. Vol I: Written in the Margins (2014–2016)」とタッサナイ・セータセーリー「Untitled (Hua Lamphong)」、観客の投票をもとに選出されるピープルズチョイス賞には、ゲデ・マヘンドラ・ヤサ「After Paradise Lost #1」(インドネシア)が選出された。

ファン・タオ・グィン(1987年ホーチミン生まれ)は、文学や哲学、そして日常生活を通じて、社会的慣習や歴史、伝統における多義的な問題を観察している。ホーチミン市美術大学、シンガポールのラサール・カレッジ・オブ・アーツを経て渡米し、2014年にアート・インスティテュート・オブ・シカゴで修士号を取得。2000年代後半より、東南アジア、アメリカ合衆国、ヨーロッパなど各地で作品を発表している。2016年から2017年にかけて、ロレックスのメントー&プロトジェ アート・イニシアチヴに参加し、ジョーン・ジョナスに師事している。昨年はホーチミンのFactory Contemporary Art CentreとハノイのNha San Collectiveで個展『Poetic Amnesia』を開催している。日本では2007年に日本国際パフォーマンスアートフェスティバル(NIPAF)に参加している。個人の制作活動のほか、アーレット・クィン=アン・チャン、チャン・コン・トゥンとともに、アートのみならず、社会や生活科学の領域を横断した活動を展開するコレクティヴ「アート・レイバー」を結成している。受賞作「Tropical Siesta」は、ベトナム語をラテン語で表記する方法を考案したとされるイエズス会のフランス人宣教師、アレクサンドル・ドゥ・ロードの生涯と功績に関するリサーチを基にしたプロジェクト「Poetic Amnesia」の一部を構成する2チャンネルの映像インスタレーションと6点の絵画作品からなる。

 


Phan Thao Nguyen Tropical Siesta (2015–2017)


Phan Thao Nguyen Tropical Siesta (2015–2017)

 

2008年にアジア太平洋地域の現代美術の発展を目的に設立されたシグネチャー・アートプライズ2018は、同地域出身のアーティストが過去3年以内に制作した作品を対象に約3年に1度のペースで開催されている。4度目の開催にあたり、40を越える国や地域の専門家によって推薦された113作品の中から15作品が最終候補に選ばれた。最終審査は、片岡真実(森美術館チーフキュレーター)、ボース・クリシュナマチャリ(コーチ・ビエンナーレ財団理事長)、ジョイス・トゥ(シンガポール美術館シニア・キュレーター)、ジェラルド・ヴォーン博士(オーストラリア国立美術館ディレクター)、ウォン・ホイチョン(アーティスト、インディペンデントキュレーター)の5名が担当した。各賞受賞作品を含む最終候補15作品は、9月2日までシンガポール国立博物館で開かれている『Signature Art Prize 2018』に展示されている。

 

Signature Art Prize 2018
2018年5月25日(金)-9月2日(日)
会場:シンガポール国立博物館
http://nationalmuseum.sg/
主催:シンガポール美術館
http://www.singaporeartmuseum.sg/

 


Shubigi Rao Pulp: A Short Biography of the Banished Book. Vol I: Written in the Margins (2014–2016) (2014-2016)


Thasnai Sethaseree Untitled (Hua Lamphong) (2016)


Gede Mahendra Yasa After Paradise Lost #1 (2014)

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