第20回バロワーズ賞

2018年6月12日、バーゼルに本社を置く保険会社バロワーズ・ホールディングスは、アート・バーゼル内のステイトメント部門で発表したアーティストを対象とするバロワーズ賞を、ワンアンドジェイ・ギャラリー(ソウル)から出品したハン・ソギョンと、モール・シャルパンティエ(パリ)から出品したローレンス・アブ・ハムダンのふたりに授賞した。両者にはそれぞれ賞金3万スイスフラン(約330万円)が授与される。また、両者の作品はバロワーズが購入し、ベルリン国立美術館群とルクセンブルク・ジャン大公現代美術館[MUDAM]に寄贈される。

 


Suki Seokyeong Kang’s installation © One and J. Gallery, Seoul

 

ハン・ソギョン(1977年ソウル生まれ)は、色や形、鉄やウールなど異なる素材の組み合わせを試行錯誤し、複数の抽象的な彫刻からなるインスタレーションを制作する。朝鮮音楽の伝統的な記譜「井間譜(チョンガンボ)」を参照したその作品には、しばしば音の高さや長さの規則が刻まれたグリッド状に組織された矩形が用いられる。ハンのインスタレーションが生み出すリズムを通じて、空間における作品と観客の動きの相互的な関係を探り、彫刻への身体的なアプローチの誘発を試みている。

ローレンス・アブ・ハムダン(1985年アンマン生まれ)が発表した「This whole time there were no land mines」は、ナクバの記念日に当たる2011年5月15日に、シリアとイスラエルとの国境沿い、ゴラン高原で起きたパレスチナ人のデモ隊とイスラエル軍の衝突という出来事を扱った映像インスタレーション。通常、目撃者の報告とともにメディアが使用する携帯電話で撮影されたフッテージや録音された音のモンタージュが、同作品内では「不確からしさ」を観客に植え付ける。なかでも、その音響はその土地の地政学的な状況を凝縮した要素として、作品に切迫感を与えるものとして有効に機能している。

審査員は、ルクセンブルク・ジャン大公現代美術館[MUDAM]のマリー・ノエル・ファルシー、ベルリン国立美術館群ハンブルガー・バーンホフ現代美術館のガブリエレ・クナプシュタイン、クンストハレ・バーゼルのマルティン・ハテバー、シュテーデル美術大学のフィリップ・ピロット、そして、審査委員長はバロワーズのアートアドバイザー、マルタン・シュワンダーが務めた。

 

バロワーズ賞https://artprize.baloise.com/

 


Lawrence Abu Hamdan This whole time there were no land mines (2017) © mor charpentier

 

過去の受賞者

2017|サム・ピュリッツァー、マーサ・アティエンザ
2016|サラ・スウィナー、マリー・レイド・ケリー
2015|ベアトリス・マチュー・クレイベ・アボネン
2014|ジョン・スクーグ
2013|ジェニィ・ティシャー、ケマン・ワ・レフレーラ
2012|サイモン・デニー、カールステン・フェーディンガー
2011|アレハンドロ・セサルコ、ベン・リヴァース
2010|クレア・フーパー、サイモン・フジワラ
2009|ゲルト・ゴイリス、ニナ・カーネル
2008|ダンカン・キャンベル、トリス・ヴォナ=ミッシェル
2007|ヤン・ヘギュ、アンドレアス・エリクソン
2006|ケレン・シッター、ピーター・ピラー
2005|ジム・ドレイン、ライアン・ガンダー
2004|アレクサンドラ・ミル、ティノ・セーガル
2003|モニカ・ソスノフスカ、サスキア・オルドウォーバース
2002|キャシー・ウィルクス、ジョン・ピルソン
2001|ロス・シンンクレア、アニカ・ラーソン
2000|ユルーン・デ・レイケ+ウィルム・デ・ローイ、ナヴィン・ラワンチャイクン
1999|ローラ・オーウェンス、マシュー・リッチー</span

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