レポート:「中園町ミートアップvol.13:柴田寿美子」

▼「中園町ミートアップvol.13:柴田寿美子」終了!

8月9日(火)に、YCAMと市民が協働するアートプロジェクト「meet the artist 2022」の一環として、ゲストと参加者がディスカッションをおこなうイベント「中園町ミートアップvol.13:柴田寿美子」を開催し、終了しました。ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

撮影:谷康弘

今回のゲストは、萩市の映画館「萩ツインシネマ」の支配人・柴田寿美子でした。萩ツインシネマは1976年に、「キラク館」という名前で開館しました。柴田さんが支配人になったのは2014年のこと。地域の人から頼まれ、赤字が膨らんでいた状況を「放っておけないから」と引き受けました。現在はボランティアのメンバーで運営し経費を抑えています。映画人口の少ない萩市で、楽とは言えない経営を続ける動機は何かと尋ねられ、柴田さんは「使命感」と答えます。山口県のミニシアターはここ20年で次々閉館しました。萩ツインシネマのような、昭和レトロの趣が残る建物は貴重で、「先人が残してくれたこの場所を自分の代で終わらせる訳にはいかない」と責任感をにじませます。また、大きな映画館がある他の市まで遠出できない人に、新作映画を届けるのも役目の一つです。1日に1人2人でも、この場所を必要とする人がいる限り存続したいと語りました。柴田さん自身、映画館という場所を特別に想っています。生まれ育った地域には映画館がなく、足を運ぶようになったのは大人になってからでした。特に場末の人が少ないシアターが好きで、仕事帰りに一息つける特別な空間だったそうです。「萩ツインシネマという場所も、多くの人の居場所になってほしい。上映作品はこだわらず、観客の多様な感性を尊重したい」という考えに基づき、上映のラインナップは、大手製作会社のアニメから市民の自主製作映画まで様々。「自分のカラーを押し出さず、透明な支配人として、この場所を次世代に渡したい」とほほ笑みました。

参加者のひとりは、レトロな景観と、萩市に高齢者が多いことを結び付け、昭和の名作のリバイバル上映を提案しました。しかし過去にそうした特集が上手くいかなかったと柴田さんが打ち明けます。「老いをテーマにした新作なら、これからの人生の歩み方の例を知るニュースとしての需要があるのでは」「過去作品でも、若者も興味を持てる作品選びが重要」と意見が重ねられます。また「インスタレーションは作品に合わせて会場を設営することが多いから、映画も上映会をその都度セッティングすればいいのでは」「今は配信の時代」など、映画館の必要性を問う人もいました。その答えとして、映画館という“場所”が持つ雰囲気が挙げられました。暗やみで1人没入したり、応援上映ではみんなと一体感を感じたり、映画館でしかできない楽しみ方があります。さらに、昔の人には身近な娯楽だった歌舞伎が、今は伝統文化として保存されているように、映画館も日常的な場所から、伝統の1つとなって残っていくのかもしれないという未来図も描かれました。

撮影:谷康弘

「meet the artist 2022」では、8月13日から14日にかけて開催する「中園町で逢いましょうvol.3」をはじめ、さまざまなイベントを準備中です。詳細は随時YCAMのウェブサイトでお知らせします。また、プロジェクトメンバーも募集中です。お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

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