レポート:『わたしもアートがわからない vol.2「わからない」からはじまるコミュニケーション』

▼『わたしもアートがわからない vol.2「わからない」からはじまるコミュニケーション』終了!
7月30日(土)に京都芸術大学アート・コミュニケーション研究センター所長・福のり子を講師に迎え、『わたしもアートがわからない vol.2「わからない」からはじまるコミュニケーション』を開催しました。ご来場いただいたみなさま、ありがとうございました。
本イベントは、芸術作品をより楽しみ、鑑賞を深めるために、美術教育の専門家や研究者など、さまざまな背景をもつゲストを講師に迎えて、作品鑑賞の際に鑑賞者の中に生まれる「分からない」という感覚を出発点に、作品鑑賞をより楽しいものに変化させるための「コツ」を、レクチャーや作品の鑑賞会などを交えながら伝えていくイベントシリーズの第2弾です。今回、講師を務める福のり子は1991年にニューヨーク近代美術館(MoMA)で研修員として勤務している時に対話型鑑賞と出会い、「作品を深く鑑賞すること」と「他者とのコミュニケーション」には密接な関係があると考え、これまで教育現場や美術館で対話型鑑賞の普及活動に長く取り組んできた第一人者とも言える人物です。
レクチャーは終始平易な例え話を用いながら、作品鑑賞を取り巻くトピックを取り上げ、時に笑いが起きながら進んでいきます。「アートは作品と作品を観る人の間に起こるキャッチボールのようなものだ」と語る福は、アートにおける鑑賞者、つまり受け手の重要性を力説します。展覧会場などに時折掲出されている解説文などが、専門用語の多用によってむしろ鑑賞者に対して「わからない」といったネガティブな印象を与えている可能性を示唆するとともに、こうした「わからない」を紐解く手法としての対話型鑑賞を実例を交えながら紹介しました。何枚かの画像を参加者にスライドで見せ、参加者からそれに対する感想を集めます。すると、同じ画像をみているはずなのに参加者は驚くほど異なる意見を述べ始めます。対話型鑑賞とは、こうした異なる意見に対して相互に耳を傾け、対話を重ねることで、知を作り上げていくことであると福は語ります。こうしたタイプの知の形成のプロセスに慣れ親しむことは、想像力はもちろん、他者への配慮や主体性の醸成につながるため、変化の激しいこれからの社会を生きる力にもなり得ます。そのため、対話型鑑賞は芸術の文脈に留まらず、幅広い業界で導入されつつあるといった事例も示されました。
次回の「わたしもアートがわからないvol.3」は『「わからなさ」の重さをはかる』と題して、 2023年2月4日(土)に 俳優/専業主夫の渡辺健一郎を講師に迎えて開催します。現在、申し込み受付中ですので、お気軽にお申し込みください。

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