レポート:「中園町ミートアップvol.10:大須賀嵩幸」

▼「中園町ミートアップvol.10:大須賀嵩幸」終了!
7月24日(日)に、YCAMと市民が協働するアートプロジェクト「meet the artist 2022」の一環として、ゲストと参加者がディスカッションをおこなうイベント「中園町ミートアップvol.10:大須賀嵩幸」を開催し、終了しました。ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。
撮影:谷康弘
大須賀嵩幸さんは、京都大学大学院工学研究科修士課程に在籍中の2016年から、平田晃久研究室「新建築社 北大路ハウス」の設計に参加。現在は後期課程に在籍しながら、株式会社砂木の一員として「新建築社 小豆島ハウス」の設計にも参加しています。
イベントではまず、大須賀さんの自己紹介も兼ねて、この2つのプロジェクトの紹介から始まりました。。北大路ハウスは、雑誌『新建築』などで知られている建築専門の出版社・新建築社が「メディアとしての場作り」をテーマに実施している「新建築ハウスプロジェクト」のひとつで、建築を学ぶ学生向けのシェアハウスです。京都市北大路にあった空き家を、大須賀さんをはじめとした建築を学ぶ学生たちのアイデアをもとに改修するというプロセスが採られており、学生たちの試行錯誤が紹介されました。完成後は、学生が住みながら、展覧会やレクチャーなどのイベントを開催する場所として運営されており、現在は「どう暮らすか?」「どう使いこなすか?」など、今後の在り方を考える次のフェーズに入りつつあるとのことでした。
そして、現在大須賀さんが手がけている香川県小豆島町の「新建築社 小豆島ハウス」の紹介に移ります。こちらも先述の「新建築ハウスプロジェクト」のひとつで、北大路ハウスと同様に空き家をベースとした建物です。この物件はもともと、海運業で財をなした住民が高台に建てた豪邸で、欄間などの建具や調度品、庭にも裕福さがうかがえるものでした。小豆島ハウスの設計にあたってはこうしたものを残しながら、再構築することで進められている点が特徴です。また、設計に携わる大須賀さん自身が工事現場でもあるその空き家に居住し、暮らしながら設計、解体を進めていることも大きな特徴となっており、キッチンもトイレ、風呂も解体された、一見すると廃墟のような状況での大須賀さんの生活が披露されると、小豆島での生活についての質問が相次ぎました。また、滞在が長くなるにつれて、徐々に地域の人たちとのコミュニケーションも取れるようになってきたと語り、小豆島産の地ビールを手がける醸造場が経営する屋台で生まれる交流についても、楽しそうに語ってくれました。改修が終わった後は、展示やイベント開催しながら、クリエイターや建築を学ぶ学生向けのレジデンス施設としても使用していく予定で、8月から始まる瀬戸内国際芸術祭でも紹介されるそうです。
大須賀さんの島での暮らしにまつわる話を聞いているうちに、次第にディスカッションへと移行。観光をテコにした地域振興の可能性、地方都市における芸術祭のこれからについて議論が弾みました。そこから、さらに小豆島の空き家問題や移住しやすい施策のあり方、シェアハウスの運営の難しさと話題は目まぐるしく進展。シェアハウスでの暮らしについて、北大路ハウスを事例に大須賀さんが発言していると、参加者のひとりは「町内会と一緒だよね」とコメントしました。その後、イベントではある参加者から「集まりやすい公共の場とは?」との問いかけがありました。その参加者は「せっかく新しく出来た場所でも活用されていることがわからないし、活用もしにくい」と語り、「同じ人ばかりが集まってしまう」と問題提起を続けます。それに対し「敷居が高いのか?」、「よくわからない場所なのかも?」などディスカッションは白熱し、「そういった場所に来てもらいやすくするにはどうしたらいいか?」という問いかけに、別の参加者は「自分だったら、その場がどういうふうに素晴らしいのか、楽しいのかを伝える」とい答え、一同は頷いていました。
撮影:谷康弘
「meet the artist 2022」では、7月29日にも「中園町ミートアップvol.12:塩満直弘」など、さまざまなイベントを準備中です。詳細は随時YCAMのウェブサイトでお知らせします。ぜひチェックしてみてください。また、プロジェクトメンバーも募集中です。こちらのお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

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