レポート:「伊勢真一トークイベント」

▼「伊勢真一トークイベント」終了!
7月17日、特集上映「プロパガンダの背景」に関連し「いまはむかし 父・ジャワ・幻のフィルム」の 上映後、本作品を手がけた伊勢真一監督によるトークイベントを開催し、終了しました。ご来場いただいたみなさま、ありがとうございました。
撮影:谷康弘
伊勢監督は、日常を映し出す映像の中に、生きることの素晴らしさが込めた独特の作風で知られるドキュメンタリー作家です。本作は、伊勢監督の父である記録映画編集者・伊勢長之助(1912~1973)が戦時中に、「文化戦線」の一員としてインドネシアに渡り、大東亜共栄圏という名目でプロパガンダ映画をつくった父の思いを知るために、父の足跡やその「幻のフィルム」の行方を追ったドキュメンタリーです。
トークイベントでは、まず本作を制作することになったきっかけを語りました。いまから30年ほど前、名古屋大学大学院でインドネシアの社会史を研究する、倉沢愛子教授がオランダで伊勢長之助が携わった国策フィルムを発見したという新聞記事を監督が見つけたことからはじまります。
伊勢監督は、早速、倉沢教授にコンタクトをとり、教授が一部コピーしたフィルムを何本か見せてもらい、その内容に大きな衝撃を受け、このことを世間に伝えなければならないと思ったそうです。それから30年の月日が流れ、ようやく本作は完成。時間がかかった理由として監督は、「戦争はよくないというレベルのことは言えても、自分がしっかりと受けとめてドキュメンタリーにするという自信がなかった。決して他人事ではなく、自分のこととして引き受けて作品にすることが出来るのか?と思うと、なかなか作れずにいた」と語ります。そして、「父が携わった国策映画を思い起こして、自分だったらどう作ったのだろうと考えた。そして、今、現在の日本にプロパガンダはないのか?と考えた」と続けました。伊勢監督は全国の映画館以外に大学などの上映会にも出かけます。そうすると日本がアジアに行って戦争をしていたことを大学生のおよそ6割が知らないそうです。「教育とメディアが一番影響を与える。今も時代の波に押し寄せられ生きている。この映画を見てもらって、自分もこの映画が語ることを考えたい。作ったドキュメンタリーと一緒に生きていく」と結びました。その後の質疑応答では、近年のメディアの傾向についてふれ、「なんでも鵜呑みにせず、自分で考えることをしないと時代に押し流されてしまう。次の世代が大変な思いをしないように、自分で、きちんと考えなければならない」と応えました。
撮影:谷康弘
特集上映「いまはむかし 父・ジャワ・幻のフィルム」は、7月23日まで上映中です。ぜひ、この機会にご鑑賞ください。
YCAMシネマではひきつづき、さまざまな特集上映やトークイベントを行います。詳細はYCAMのウェブサイトや、YCAMシネマの上映スケジュールをご覧ください。みなさまのご来場を心よりお待ちしております。

Copyrighted Image