レポート:「中園町ミートアップvol.9:金子春香」

▼「中園町ミートアップvol.9:金子春香」終了!
7月11日(月)に、YCAMと市民が協働するアートプロジェクト「meet the artist 2022」の一環として、ゲストと参加者がディスカッションをおこなうイベント「中園町ミートアップvol.9:金子春香」を開催し、終了しました。ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。
撮影:廣田祐也 
去年の夏、山口市中心商店街で、畳に座ったまま道を移動していく「うごく畳」や、自動で人の後ろについて来る「ペットロボ」を見かけたことはありませんか。実はこれらは、小学生が開発したものです。「VIVISTOP mini in YAMAGUCHI」では昨年7月から10月にかけて、山口市の子どもから「こんな商店街あったらいいな」というアイディアを集め、実際に作り、商店街で試すというプロジェクトを実施しました。今回のゲストは、そんなVIVISTOP YAMAGUCHIの代表・金子春香さんです。
VIVISTOPとは、株式会社VIVITA JAPANが運営する、小中学生向けのクリエイティブ・スペースです。子どもがアイディアを自分の手で形にするのをサポートする、最先端の機器が揃っています。VIVISTOP YAMAGUCHIは、山口市の「中心市街地の活性化のために、商店街にモノ作りのスペースを設けたい」という方針を受け、2021年夏に誕生しました。
作りたいものを作れるはずのVIVISTOPに、「商店街」という縛りが有ることは、子どもの自由な発想の足かせにならなかったのでしょうか。他のVIVISTOPでは「なんでも作って良い」と言われてかえって何も思いつかず、見たことがあるものの再現しかしようとしない子どもが少なくありません。VIVISTOP YAMAGUCHIでは、商店街の人に作ったものを試してもらい、感想というフィードバックをもらえることが、アイディアを発展させる糸口になりました。
使ってもらうことを意識するあまり、利用者の役に立たなそうなアイディアは切り捨てようとする子どもも居ました。そんな時金子さんは「面白そうだからやってみない?」と呼びかけます。「目的はモノそのものではなく、1人でも多くの子に、自らの手でアイディアを形にする“体験”をしてもらうこと。その子の将来に影響する原風景になるかもしれない」と語りました。金子さんの原風景は、自身が通う児童館で、利用者の声を聴いてルールの改善案を話し合い、行政に提出した体験です。子どもの時に自分の居場所を自らの手で変えられた手ごたえが、今の活動に繋がっていると言います。
VIVISTOP YAMAGUCHIでの子どもの過ごし方はそれぞれです。金子さんが特に印象に残っているのは、VIVISTOP YAMAGUCHIで知り合った子同士が、仲良くなった商店街の人の元へ遊びに行ったことでした。子どもの居場所がVIVISTOPに留まらず、商店街全体に広がっている証です。また、お年寄りが「子どもたちが作品作りのために自分の知恵を求めてくれ、交流できて楽しかった」と言うこともありました。街を活性化させるのは「スペース」ではなく、取り組みがもたらすコミュニケーションだと気づいたそうです。
VIVISTOP YAMAGUCHIが市の支援を受けられるのは3年間限定で、その後の在り方を考えなければなりません。たとえば山口各地の伝統文化を担う地域の人が、自身のノウハウを活かして子どもたちの発明の手助けをするなど、新しいVIVISTOP YAMAGUCHIの形を探りました。
撮影:廣田祐也 
「meet the artist 2022」では、7月15日から16日にかけて開催する「中園町で逢いましょうvol.2」をはじめ、さまざまなイベントを準備中です。詳細は随時YCAMのウェブサイトでお知らせします。ぜひチェックしてみてください。また、プロジェクトメンバーも募集中です。お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

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