レポート:「中園町ミートアップvol.7:平野浩靖」

6月25日(土)に、YCAMと市民が協働するアートプロジェクト「meet the artist 2022」の一環として、ゲストと参加者がディスカッションをおこなうイベント「中園町ミートアップvol.7:平野浩靖」を開催し、終了しました。

撮影:谷康弘

今回のゲストは山口市を拠点に小屋暮らしや身の回りの必需品のDIYを研究する平野浩靖さんです。本イベントでは平野さんのこれまでの実践や調査をもとに、参加者とディスカッションを繰り広げました。
山口出身の平野さんは大学進学を機に上京し、その後東京でサラリーマン生活を送っていましたが、一念発起し、生まれ育った山口に帰郷。以来、もともと関心のあった経済や貨幣の問題について独学で研究をはじめます。研究の過程で平野さんは日本の社会制度の疲弊や、国民の生活環境や経済状況の変化について危機を抱くようになり、研究の軸足を農業や小屋暮らしなど、身近な衣食住をDIYする方向へ舵を切るようになり、いまに至ります。平野さんの研究は単なる研究だけではなく、実践も伴います。小屋暮らしに関しては、大工さんのもとで1年半に渡って仕事をともにし、また農業については山口市内の耕作放棄地で自然農法を実践するなど、身体を動かすことで技術の体得も図ってきました。

イベントでは、現代における小屋暮らしや、自動車を中心とした生活「バンライフ」の潮流が平野さんから紹介されつつ、ディスカッションが展開していきます。ある参加者は、空き家が生まれる事情のひとつには、居住者が老齢になり、福祉施設に入居するようになっても、親族が居住者に対して感情的に慮ることで解体に二の足を踏んでしまうことがあると指摘しました。別の参加者は、自身の親族が暮らす古民家のリフォームを手がけている理由にそうした理由を挙げていましたが、このように親族が実際に対応できる事例はごくわずかで多くがそのまま老朽化を迎えてしまっていると思われます。ほかの参加者から、住まわれなくなった段階で積極的に解体に踏み切るためには、人間における葬式のような、祝祭を開催することで、前向きな気持ちを作り出すことが必要なのではないかという提案もありました。
また、ある参加者は、バブル経済期の頃までは人生における成功モデルも画一的なところがあり、経済的に豊かであったかもしれないが、「自由」が乏しかったと証言。現在は良くも悪くもそれが多様化しており、自ら生活における「豊かさ」を定義した上で、小屋暮らしに舵を切る人々の暮らしに希望を感じるという話題も出ました。このほか、DIYによる小屋暮らしに清潔感や快適性を導入することはできるのか、DIYに付随して発生する法的な問題など、多岐に渡るトピックが出てきました。

撮影:谷康弘

「meet the artist 2022」では、7月3日(日)開催の「中園町ミートアップvol.8:平川紀道」をはじめ、さまざまなイベントを準備中です。詳細は随時YCAMのウェブサイトでお知らせします。ぜひチェックしてみてください。プロジェクトメンバーも募集中です。お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

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