レポート:「映画を2回観る会」

2月11日と12日に、「ショートフィルムフェスティバル in YCAM supported by ShortShorts」の関連イベントとして「映画を2回観る会」を開催し、無事終了いたしました。ご来場いただいた皆さま、ありがとうございました。


撮影:塩見浩介

「映画を2回観る会」では、まず作品に関する情報を与えられずに映画を観たあとに、参加者同士で感想をやりとりします。さらに、ナビゲーターによる解説を受けてから2回目を観直し、最後に再び感想をやりとりします。12日の「映画を2回観る会」で取り上げたのは『見下ろすとそこに』という短編映画で、夜のアパートを長回しで映し続けた実験的作品です。

アパートには窓が12個あり、中では住民が思い思いに過ごしています。序盤で突然アパートの下から女性の怒鳴り声がし、やがて泣き叫ぶ声に変わりました。住民たちは、少し様子を伺ってカーテンを閉めたり、気づかず遊び続けたりと様々な反応です。

1回目の感想のやりとりでは、12個の窓のうち、どの窓に注目したかで意見が分かれました。とある参加者が「ヘッドフォンをつけたまま動かない男性が居た。叫び声が聞こえなかったのか、それとも無視していたのだろうか」と疑問を投げかけると、別の参加者が「一瞬ヘッドフォンを外すタイミングがあったが、すぐ付け直していた。外のできごとに関心を持っていないのだろう」と答えます。2回目の鑑賞後は、このシーンを確認できたか見逃したかで盛り上がりました。

映画の音声は、様子を見に行こうか迷う女性と、気乗りしない男性の会話が流れます。しかしその声の主は、12の窓のどこにも見当たりません。声の主はどこにいるのでしょうか。

画面のわずかな汚れに気づいた参加者が、12の窓と撮影カメラの間に、もう1枚ガラスがあると指摘しました。向かいの建物の中から、窓越しに撮っているのです。姿のない声の主は、この景色が見える窓の内側から、つまりと同じ位置から喋っているのではないかという仮説が生まれました。意識して2回目を観直すと、声の主の視点に入り込み、自分も部屋の中から外を眺めているような没入感を覚えます。「自分ならどうしていただろうと、心がざわざわした」という感想に、他の参加者も頷きました。

どんなトラブルが起きているかは終始映し出されず、鑑賞者は断片的な音声から事態を推測していきます。ナビゲーターは、「観る人が点と点を繋ぐように解釈する映画。感想をやりとりすることで、1人では結び付かなかったような重層的な線を描いてもらえれば」と呼びかけました。


撮影:塩見浩介

「映画を2回観る会」は終了しましたが、「ショートフィルムフェスティバル in YCAM」は本日(2月13日)まで開催しています。当日券も販売しておりますので、ぜひお気軽にご来場ください。

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