レポート:「YCAM爆音映画祭2021」

8月27日に上映イベント「YCAM爆音映画祭2021」を開催し、終了しました。本来であれば29日までの開催予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止を目的とした臨時休館のため、27日をもって中止となりました。みなさまにはご面倒をおかけしたことをお詫びするとともに、ご来場いただいたみなさまに感謝申し上げます。ありがとうございました。

撮影:谷康弘

今回は、これまで培ってきたYCAMでの爆音上映のノウハウに加え、さらにスピーカーが増設され、大規模な映画館の音響環境を上回る繊細さと迫力を実現。その中で、27日には「YCAM爆音映画祭2021バックステージツアー」を開催し、爆音上映の魅力を解き明かしていきました。

このイベントでは、ふだん映画を上映しているスタジオCと、YCAM爆音映画祭の会場であるスタジオAを巡り、同じ映画の同じシーンを通常音量と、爆音仕様で聴き比べます。取り上げた作品『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』は、爆音映画祭主宰の樋口泰人さんイチ押しの一本です。
盛り上がるメロディーはナシ、迫力満点の効果音もナシの本作は、一見すると「誰も爆音を期待していない映画」とも言えます。こうした静かなフィルムを爆音化すると、通常の音量では聞き逃してしまいそうな、細やかな音が聴こえてきます。
女の子が弾くピアノの音色におじいさんが感じ入り、そっと近づいてくるシーン。なるべく音を立てないように気遣う彼の足音は、通常の音量では気づけないほど小さな音です。目立つボリュームに上げられたり、「どうせ聞こえない」と消されたりせず、かすかな音量で残されたこだわりの音が、爆音化することで、繊細さを保ったままくっきり伝わりやすくなりました。
こうした魅力を伝えるのは、爆音仕様の特殊なスピーカー。音を線のように伸ばす「ラインアレイスピーカー」を、何段にも重ねることで、どこに座っても耳元へまっすぐ音が飛び込んできます。今年は横や後方にもサラウンド・ラインアレイスピーカーを設置し、音で観客ひとりひとりを包み込むようにパワーアップ。自由に設備を動かせるYCAMのスタジオAだからこそできた、大胆な設計です。
樋口さんは今後の展望に、こうした爆音だからこそ気づける繊細な音を味わう『小さな声を聴く上映会』を行いたいと語りました。「究極の爆音は、誰も爆音とは感じない。かすかに染み出して、気づけば体に入り込んでいる音だ」樋口さんの言葉に、観客は耳を傾けました。

撮影:谷康弘

中止になった8月28日と29日の上映回の払い戻しは9月1日から。詳細は「YCAM爆音映画祭2021」のウェブサイトをご確認ください。

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