兵庫県立美術館開館20周年 関西の80年代

田嶋悦子《Hip Island》1987年 2017年西宮市大谷記念美術館での展示風景

岐阜県現代陶芸美術館蔵 撮影:高嶋清俊

見どころ
○「現代美術は西高東低」とも言われた1980年代、関西ならではの類を見ない作品群を一堂に紹介します。
○ 前身の兵庫県立近代美術館時代に、シリーズ展「アート・ナウ」で「関西ニューウェーブ」など当時の動向をいち早く紹介してきた兵庫県立美術館の開館20周年を記念して開催する企画展です。
○ 空間全体を使ったインスタレーションなど、今も国内外で活躍を続ける作家たちによる若き日の実験作を中心に、この時代特有のストレートなパワーに満ちた作品を展示します。
○ 若い世代はもとより、80年代をリアルタイムで知る世代にとっても、ただ懐かしいだけではない新鮮な作品の姿を通じ、困難ないまを生きる観客に芸術のポジティブな力を発信します。

開催趣旨
兵庫県立美術館の開館20周年を記念し「関西の80年代」を開催します。
なぜ、いま80年代なのでしょうか?
当館の前身である兵庫県立近代美術館では、かつて「アート・ナウ」というシリーズ展を開催していました。その年、目覚ましい活躍をみせた作家を紹介し、関西アート・シーンのいまを伝えようとする名物展覧会でした。特に80年代にはまだ20代の作家が続々と参加し、競うように大作を発表する場となります。折しも関西では活きのいい若手が「関西ニューウェーブ」として注目を集めており、この地域ならではの前例にとらわれない個性的な表現ゆえに、現代美術は「西高東低」とも言われました。
時代はバブル景気とポストモダン、何とも華やかで恵まれた状況にも思われますが、いまや国内外で活躍する作家たちも当時はまだ駆け出しです。70年代の禁欲的な傾向とは一転、心躍る色やイメージにあふれた作品群は、ニッポンの片隅で美術作家として何を作りどう生きていくのか、大いに悩みつつそれぞれのリアリティを掘り下げた成果であり、結果的に現代にまで引き継がれる数々の表現語彙を生み出しました。
現代アートの原点とも言える80年代、関西発の類を見ない作品群は、困難ないまをよりよく生きるヒントを与えてくれるに違いありません。

展覧会構成
■プロローグ 林檎と薔薇
展覧会の導入として、ともに美術の伝統的モチーフを扱った70年代(奥田善巳/林檎)と80年代(北辻󠄀良央/薔薇)の作例を対比的に示します。
出品予定作家:奥田善巳、北辻󠄀良央

北辻󠄀良央《WORK-RR2》1982年 和歌山県立近代美術館蔵

■ Ⅰ フレームを超えて

80年代に入ると現代美術の領域では、それまでの禁欲的な傾向から一転して、豊かな色彩やかたちによる表現が息を吹き返します。作家がそれぞれに造形言語を探るなかで、変形キャンバスやレリーフ、さらにはイラスト的表現など、従来の絵画や彫刻という枠組みを超えた表現が続々とあらわれました。
出品予定作家:朝比奈逸人、飯田三代、北山善夫、栗岡孝於、辰野登恵子、中谷昭雄、福嶋敬恭ほか

■ Ⅱ インスタレーション―ニューウェーブの冒険

1983~84年頃になると、当時の若手作家たちが京阪神の画廊などでみずみずしい作品を精力的に発表するようになり「関西ニューウェーブ」として注目を集めます。「私」の世界で画廊の空間全体を埋めつくすかのようなインスタレーションが、新たな発表形式として、おおいに隆盛しました。展示空間を前提とした表現のため現存する例は限られますが、いくつかの再現を行うとともに、関連資料による展示でも当時の鑑賞体験を生々しく伝えることを試みます。あわせて、新たな波に先立ち、美術のフレームをものともせず活動を続けていた、ニューウェーブの先達にしてライバルともいうべき年長作家の仕事を記録写真で紹介します。
出品予定作家:石原友明、杉山知子、藤浩志、松井智惠、【記録写真による展示】堀尾貞治、榎忠ほか

杉山知子《the drift fish》(部分)1984年ギャラリー手での展示風景 作家蔵 撮影:成田弘

石原友明《約束Ⅱ》1984年ギャラリー白での展示風景 現・高松市美術館および作家蔵 撮影:石原友明

■ Ⅲ 「私」のリアリティ―イメージ、身体、物語

80年代後半は、各作家がインスタレーションから絵画、彫刻、版画など各自の領域に戻るとともに、表現の内容を深めた時期と言えるでしょう。その際、起点になったのは「私」のイメージなり身体なり物語であり、それぞれのリアリティでした。
出品予定作家:池垣タダヒコ、河合(田中)美和、川島慶樹、小西祐司、中西圭子、中西學、濱田弘明、原田要、松井紫朗、松尾直樹、三村逸子、森村泰昌、安井寿磨子、山崎亨、吉原英里ほか

吉原英里《M氏の部屋》(部分)1986年番画廊での展示風景 作家蔵 撮影:濱田弘明

■ Ⅳ 「私」の延長に

80年代は「ミーイズム」の時代とも言われますが、それぞれが「私」のリアリティを探求してゆくなら、その先には必ずや「私」が生きる世界や芸術の普遍的な問題―たとえば生と死―が待ち受けているでしょう。80年代終盤の生命力あふれる大作や、ユニット、共同制作による作品を紹介します。
出品予定作家:赤松玉女+森村泰昌、KOSUGI+ANDO(小杉美穂子+安藤泰彦)、TRIO(福田新之助、浜本隆司、中澤テルユキ)、田嶋悦子、中原浩大、山部泰司ほか

KOSUGI+ANDO(小杉美穂子+安藤泰彦)《芳一-物語と研究》 1987年京都アンデパンダン展(京都市美術館)での展示風景 作家蔵 © KOSUGI+ANDO

開催情報
■ 開館時間:10:00-18:00 ※入場は閉館の30分前まで
■ 休館日:月曜日 ※ただし7月18日(月・祝)は開館、19日(火)休館
■ 主催:兵庫県立美術館、朝日新聞社
■ 助成:芸術文化振興基金、公益財団法人ポーラ美術振興財団
■ 協賛:公益財団法人伊藤文化財団
■ 特別協力:公益財団法人日本教育公務員弘済会 兵庫支部
■観覧料:一般1,500円(1,300円)〔1,300円〕/大学生1,100円(900円)〔900円〕/高校生以下無料/70歳以上750円/障がいのある方〈一般〉350円/障がいのある方〈大学生〉250円 ※〔〕内は前売り料金、()内は団体料金
○ 「県民プレミアム芸術デー」7月12日(火)~18日(月・祝)は無料(チケットをご提示いただいても払い戻しはいたしませんのでご注意ください)。
○ 団体:20名以上(団体鑑賞をご希望の場合は1ヶ月前までにご連絡ください)
○ 前売販売期間:5月10日(火)~6月17日(金)(会期中は販売しません)
○ 一般以外の料金でご利用される方は証明書を観覧当日ご提示ください。
○ 障がいのある方1名につき、介護の方1名無料です。
○ コレクション展は別途観覧料が必要です(本展とあわせて観覧される場合は割引があります)。
○ 混雑時は人数制限を行いますので、お待ちいただく場合がございます(予約制ではありません)。
■ 主なチケット販売場所
○ローソンチケット ○チケットぴあ ○セブンチケット ○楽天チケット ○イープラス ○CNプレイガイド など

関連イベント
■ 京阪神ニューウェーブ鼎談
講師:山部泰司氏、福田新之助氏、杉山知子氏(出品作家)
日時:6月26日(日)15:00-16:30 *開場は30分前から
会場:当館ミュージアムホール
定員:120名(先着順・要観覧券・芸術の館友の会会員優先席あり)

■ 講演会「1980年代を語れるのか?」
講師:島敦彦氏(国立国際美術館館長)
日時:7月24日(日)14:00-15:30 *開場は30分前から
会場:当館ミュージアムホール
定員:120名(先着順・要観覧券・芸術の館友の会会員優先席あり)

■ テーマ・レクチャー
①「アート・ナウと関西の80年代」7月9日(土)
②「インスタレーションを展示する」8月6日(土)
江上ゆか(当館学芸員)
いずれも15:00-15:40 *開場は30分前から
会場:当館レクチャールーム
定員:50名(先着順)

■ こどものイベント
詳細が決まり次第、当館ウェブサイトにてお知らせします。
こどものイベントについてのお問い合わせ TEL 078-262-0908

Copyrighted Image