コミュニケーションの部屋

野田哲也《日記 1971年5月15日》1971年 和歌山県立近代美術館蔵

 

今回の展覧会は、「コミュニケーション」がテーマです。近年ではメールやSNS、オンラインミーティングといった、デジタルベースのコミュニケーションが活発になっていますが、本来コミュニケーションとは、なんらかの情報を伝え、「共有」することを指します。つまり道具のいらない一番シンプルな方法は、ひとところに集まり会って話すこと、つまり「いま・ここ」を共有することです。

「いま・ここ」を共有するという意味では、美術館の展覧会は、まさにコミュニケーションのための場だと言えます。そうは言っても「あまりおしゃべりしてはいけない雰囲気なのに、なぜ?」「ひとりで来ているけれど、なぜ?」と思われるかもしれません。しかし作品とじっくり向き合い、作者の考え方を追体験することは、わたしたち一人ひとりと作品とのコミュニケーションのかたちです。さらには互いに知らない者同士でも、各自の見方や意見がさまざまに重なったり、ズレていることに気づいたりすることで、作品という存在を介してコミュニケーションをすることができます。作られた時代も地域も違う作品が集う場所を共有する――そこにはもはや時間や空間の制限はありません。まさに展覧会はコミュニケーションのための特別な空間です。

では展覧会という場では、どのようなコミュニケーションが生まれているのでしょうか。展覧会に並ぶ作品の作者、展覧会を見る人、そして展覧会を作る美術館の立場も含めたさまざまなコミュニケーションのかたちを、まさに「コミュニケーションの部屋」である展覧会において、考えてみたいと思います。

 

会場 和歌山県立近代美術館 2階展示室
会期 2021年08月15日(日)~10月10日(日)
開館時間 9時30分〜17時[入場は16時30分まで]
休館日 月曜日(ただし920日は開館し、翌21日休館。)
観覧料 一般520(410)円、大学生300(260)円( )内は20名以上の団体料金
*高校生以下、65歳以上、障害者、県内に在学中の外国人留学生は無料
*08月28日、09月25日(毎月第4土曜日)は「紀陽文化財団の日」として大学生無料
*09月05日、10月03日(毎月第1日曜日)は無料観覧日
主催 和歌山県立近代美術館
関連事業 和歌山県立近代美術館のサイトをご覧ください

 

トーマス・ルフ《肖像(P. フリース)》1987年 和歌山県立近代美術館蔵 © Thomas Ruff / Courtesy of Gallery Koyanagi
前川紘士《風景に同期する》 2011年 個人蔵 *那須大輔との協働制作「D50 の時間」2011‒2021 の一部

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