猪熊弦一郎展 夢をならべている

猪熊弦一郎展 夢をならべている Genichiro Inokuma: Arrangements of Dreams
同時開催「ジャネット・カーディフ 40声のモテット」

「猪熊弦一郎展 夢をならべている」
2025 年 12月13日(土)-2026 年 2月15日(日)

月曜日(2026 年 1月12日は開館)、2025 年 12月25日(木)-31日(水)、2026 年 1月13日(火)
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 3 階展示室 C、2 階展示室 B、1 階エントランス

自分なりの視点で自由に見出す猪熊の作品世界

猪熊弦一郎 《ポートレイトの会話》 1988年

 

開催趣旨                                                                                   

 

猪熊弦一郎 《鳥と遊ぶ》 1990年

香川県で生まれた猪熊弦一郎(1902 ー1993)は、東京美術学校に学んだ後も引き続き東京で制作を続け、第二次世界大戦が始まる前年の 1938 年から40 年までパリで学んで帰国します。さらに50 歳を過ぎて1955 年からニューヨークで約20年間を過ごした後は、東京とハワイの両方にアトリエを構え、90歳まで制作に励みました。時代や環境の変化をも吸収して描いた作品は、写実的な具象からデフォルメの効いた具象へ、ニューヨークでは抽象へと変化しましたが、時々の自分を画面に力いっぱいぶつける点においては生涯を通して揺らぐことがありませんでした。
その猪熊が晩年に制作したのは、具象も抽象もない、形はすべて面白く美しいバランスでできていると考え、それらを自分の秩序で絵の中に住まわせた作品です。丸や四角といった形も、何とも形容できない形も、顔や鳥といった生き物の姿も区別なく、さまざまな形が共存する絵画を描きました。見ることを大切にし、ものの形を正確に描くことができた猪熊ですが、長い画業の間に蓄積されたたくさんの形は常識に捉われることなく素直に自由に描かれ、作品は不思議に満ちています。
「俺は俺なりの一つの画面の上で夢をならべているだけで、あなたはあなたでこの絵を見てなんて感じるか」*
本展では猪熊が 80 歳を超えて制作した作品をご紹介します。70 年以上にわたって描きに描き続けた猪熊の、何ものにもとらわれない絵画をどうぞご覧ください。

*「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館オープン記念番組 guénまるがめの顔」(西日本放送、1991 年 11 月17日放送)より

 

本展の見どころ                                                                                

 

「具象も抽象も区別なく共存する絵画」をご紹介

猪熊の画業は約70年にわたり、彼が生きた時代や環境を映すように画風も変化していきました。晩年には、具象も抽象形態の集合体であり、形はすべて面白く美しいバランスでできていると考えた、さまざまな形が共存する絵画に到達します。
本展では、猪熊が80歳を超えて制作した、丸や四角と、顔や鳥といった生き物の姿が区別なく描かれ、さまざまな形が共存する作品をご紹介します。

猪熊弦一郎 《真昼のカーニヴァル》 1992年

鑑賞者自身が新たに見出す

猪熊は88歳の頃に次のように言い、鑑賞者に自由な解釈を委ねています。
「俺は俺なりの一つの画面の上で夢をならべているだけで、あなたはあなたでこの絵を見てなんて感じるか」*
猪熊が描いた形をありのままに受け止め、自分なりの視点でそれらの関係性を見つけて画面の構成を考え、猪熊作品を新しく見出してください。本展では一つの展示室だけでなく、1階のエントランスから、2階、3階の展示室へと立体的に広がっていく空間で、猪熊のおおらかな作品世界を体感できます。

*「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館オープン記念番組 guénまるがめの顔」(西日本放送、1991年11月17日放送)より

猪熊弦一郎 《三つの言葉》 1989年

二つの展覧会に共通するもの

猪熊の絵画作品を視覚に基づいて鑑賞する本展は、聴覚に働きかけるサウンドインスタレーション作品を出品する企画展「シャネット・カーディフ 40声のモテット」と同時開催します。鑑賞者がそれぞれに形の面白さや画面構成を見出す猪熊の作品と、音を聴きながら自由に移動することで彫刻的な空間を創造するカーディフの作品は、いずれも作品から得た体験をもとに鑑賞者自身が想像の中で作品を組み立て直し、より深い鑑賞体験ができる点が共通しています。二つの展覧会それぞれに異なる感覚を研ぎ澄まし、自分だけの作品をお楽しみください。

 

掲載している作品画像すべて ©公益財団法人ミモカ美術振興財団

 

開催概要                                                                                   

展覧会名:猪熊弦一郎展 夢をならべている
主 催:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、公益財団法人ミモカ美術振興財団
会 場:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 3 階展示室 C、2 階展示室 B、1 階エントランス
会 期:2025 年 12月13日(土)-2026 年 2月15日(日)
開館時間:10:00 ー 18:00(入館は17:30まで)
休館日:月曜日(2026 年 1月12日は開館)、2025 年 12月25日(木)-31日(水)、2026 年 1月13日(火)
観 覧 料:一般1,500円(団体割引1,200円、市民割900円)
大学生1,000円(団体割引800円、市民割600円)
高校生以下または18歳未満・丸亀市内に在住の65歳以上・各種障害者手帳をお持ちの方とその介護者1名は無料
*同時開催企画展「ジャネット・カーディフ 40声のモテット」、常設展「猪熊弦一郎展 物が在る」の観覧料を含みます。
*団体割引は20名以上の団体が対象です。
*市民割は丸亀市民が対象です。チケットご購入時に証明する書類(運転免許証、保険証など)のご提示が必要となります。団体割引を含み、他の割引との併用は出来ません。

 

同時開催の企画展

「ジャネット・カーディフ 40 声のモテット」
会場:3階展示室 C

同時開催の常設展

「猪熊弦一郎展 物が在る」
会場:2 階展示室 A

次回企画展のお知らせ

「猪熊弦一郎展(仮称)」
会期:2026 年 3 月1日(日)ー 6 月21日(日)予定

 

関連プログラム

キュレーター・トーク

本展担当キュレーター(松村円)が展示室で来館者に見どころをお話しします。

日時:2026 年 1月4日(日)、2月1日(日) 各日14:00 ー
参加料:無料(別途、本展観覧券が必要です)、申込不要
親子でMIMOCAの日
高校生以下または18 歳未満の観覧者 1 名につき、同伴者 2 名まで観覧無料となります。
日時:2026 年 1月24日(土)、25日(日) 10:00ー18:00(入館は17:30まで)

 

出品作家プロフィール

猪熊弦一郎(いのくまげんいちろう)

1902年 香川県高松市生まれ。少年時代を香川県で過ごす。
1921年 旧制丸亀中学校(現 香川県立丸亀高等学校)を卒業、上京し本郷洋画研究所で学ぶ。
1922年 東京美術学校(現 東京藝術大学)西洋画科に進学、藤島武二教室で学ぶ。
1926年 帝国美術院第 7 回美術展覧会に初入選する。以後、1934 年まで毎年出品し入特選を重ねる。
1927年 東京美術学校を中退。
1935年 新帝展に反対し不出品の盟を結んだ有志と第二部会を組織、第1回展に出品する。
1936年 同世代の仲間と新制作派協会(現 新制作協会)を結成、以後発表の舞台とする。
1938年 渡仏、パリにアトリエを構える(~1940)。滞仏中アンリ・マティスに学ぶ。
1949年 建築家の山口文象とともに、新制作派協会に建築部を創設する。慶應義塾大学学生ホール(谷口吉郎設計)壁画《デモクラシー》を制作。三越の包装紙「華ひらく」をデザインする。
1950年 国鉄上野駅(現 JR 東日本上野駅)の大壁画《自由》を制作。
1951年 渡米、ニューヨークにアトリエを構える。
1955年 具象の面影は消え、直線と円を中心とした幾何学的な作品を多数制作。
1958年 香川県庁舎(現 東館、丹下健三設計)陶画《和敬清寂》を制作。
1975年 ニューヨークのアトリエを閉じ、東京に戻る。冬はハワイで制作するようになる。鮮やかな色彩で、不定形の複雑な形があふれる作品を描く。
1988年 香川県へ作品 100 点を寄贈。香川県文化功労者として表彰される。
1989年 妻、文子を亡くす。作品に顔や動物たちも描かれ、多様な形が共存するようになる。
1991年 丸亀市名誉市民証を授与される。丸亀市猪熊弦一郎現代美術館が開館。
1993年 逝去、90 歳。

 

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA)について                                  

1991 年開館、30 年を超える活動

1991 年 11月23日、JR 丸亀駅前に開館。同時代の新しい表現を積極的に紹介する「現代美術館」を望んだ猪熊弦一郎の考えを受け継ぎ、猪熊作品を中心とした常設展、現代美術にフォーカスした企画展、子どものためのワークショップなど、多彩なプログラムを展開しています。
さらに、当館は猪熊弦一郎の遺した絵画やドローイングなど作品約 2 万点を所蔵しています。猪熊が「対話彫刻」と名付けた小さな作品群、猪熊夫妻が各地で収集しその生活を彩っていたコレクションなどの多数の資料とともに、常設展や企画展を通して、猪熊の活動を深く、広く紹介しています。

現代美術に特化した美術館として

現代美術を中心とし、企画展として国内外のアーティストの活動を展観。これまでにヤン・ファーブル、マリーナ・アブラモヴィッチ、マルレーネ・デュマス、エルネスト・
ネト、杉本博司、塩田千春、ホンマタカシ、石内都らの個展を開催する一方、金氏徹平、小金沢健人、志賀理江子、中園孔二ら気鋭のアーティストの紹介にも積極的に
取り組み、近年では若手作家を対象とした公募展「MIMOCA EYE」を立ち上げました。また、同時代のクリエイティブな表現にも着目し、ファッションやファニチャーといったデザイン、現代建築にも拡張しています。

谷口吉生の設計による美しい建築

設計は、数々の美術館建築を手がけ、高い評価を受ける谷口吉生。猪熊との対話によって、アーティストと建築家の理念が細部に至るまで具現化されています。
猪熊弦一郎の巨大な壁画《創造の広場》が眼を引く伸びやかなファサードは、駅前広場と建築をゆるやかに結びつけ、館内に入ると自然光をふんだんに取り込んだ、開放的な空間が広がります。2 階には対照的なプロポーションをもつ2つの展示室があり、3 階の天井高約 7mの豊かなスケール感をもつ展示室へと続きます。
さらに、正面左側の大階段はアートへのさまざまなアプローチを可能にするパブリックな空間へと接続しています。2 階のアートセンターには、ライブラリー、ホール、スタジオが備わり、3 階最奥部にあるカスケードプラザとカフェも来館者に心地よい時間を提供します。

 

 

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