
火の中から、土の中から、毎日、我が子や友人や隣人を探している人々を、私はスカートのポケットに入れて、
りんごを剥き猫を撫で子どもと笑っている。辛さから作るのは、作ることの本流から外れるだろうか?
でも今は、彼らに倣うようにして、何かを探し、見つけて来なければならなかった。
火と土の中から、ひとつひとつ、目を凝らして、手探りで取り出してきたけれど、これは単なる夢や幻なのかな。
この数年で、世界はすっかりと変えられてしまった。A氏の言う「新しい日常」になった。
でもそれはあからさまになっただけでずっと前からそうだったんだ。
燃え続けている星の光が辿り着き、今、ようやく見えた。
または、熱い火球が自分たちに接近したので慌てふためいている、ということなのかも。
人間のすることが怖い。
暗くて重たい気持ちの中、かつて読んだO氏の小説の一節を思い出す。
O氏の母上が、「あなたが死んだら、私がもう一度産んであげる」と言った、というエピソード。
物語なんて、紙に書きつけられた小説家の夢、と言う人もいるかも知れないが、失われてももう一度産む、
と書きつける小説家の横顔を思い描く時、その丸い眼鏡の奥の血走った目と火照った頬が、
私のとぼとぼ歩く暗い道を照らしてくれる。
-安藤正子-
安藤正子の現在地を観る展覧会
今春、原美術館ARCでは、特別展示室・觀海庵において「安藤正子:普通の日々」展を開催いたします。小さな楽焼約150点によるインスタレーション『ニューノーマル』(2024年)を中心に、新作の油彩画を含む絵画や映像を和の設えの展示室、觀海庵(かんかいあん)と呼応させ、小規模ながらも安藤正子の現在地を観る機会といたします。
原美術館(東京・品川、2021年閉館)での鉛筆画と油彩画の個展「安藤正子-おへその庭」(2012年)から早14年。かつての絵画表現に心理的な乖離が生じた時期に、陶のレリーフと格闘することで絵画的イメージを物理的に立ち上げるようになり、楽焼の作品『ニューノーマル』へと繋がっていきました。楽焼の手法に現在の心境が合致し、手と土と火とで、花、りんご、子供の足、猫など、まるで絵画の虚構から現実へと取り出してきたかのような小さな陶の数々を作る安藤。地球上のそこここで絶え間なく続く戦禍や災禍に心を痛めながらも、そのような「新しい日常」*¹に負けまいと、「赤々と燃える火や燻る煙の中にある何かに目を凝らし、光るかけらを探し出し」*²、ひとつひとつ、ひとりひとりを瓦礫の中から救い出しています。
*¹「ニューノーマル」の和訳 *²安藤正子との会話中の言葉
■安藤正子略歴
1976年愛知県生まれ。瀬戸市を拠点に活動。主な個展に、「ハラ ドキュメンツ9 安藤正子―おへその庭」(原美術館、東京、2012年)、「安藤正子展 ゆくかは」(一宮市三岸節子記念美術館、愛知、2023年)がある。現在、愛知県立芸術大学美術学部油画専攻准教授。令和5年度(第74回)芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。https://www.masakoando.com
■関連イベント(予定) *詳細は後日公式ウェブサイトに掲載
5月31日(日) 賛助会員イベント:安藤正子のスタジオ訪問
6月27日(土)午後、6月28日(日)午前 Meet the Artist:安藤正子による展覧会ガイド
■関連グッズ
出品作品「キャロットジュース」をモチーフにしたハンカチを販売します。詳細は後日公式ウェブサイトにて。
■参考
「おへその庭」展開催時インタビュー(全3回) https://www.art-it.asia/u/HaraMuseum/b2tinxckdiu910sata3r/
【開催要項】
展覧会名「安藤正子:普通の日々」
会期 2026年3月14日(土)から9月6日(日)
主催 原美術館ARC
助成 公益財団法人野村財団
協力 小山登美夫ギャラリー
会場 原美術館ARC 特別展示室 觀海庵(かんかいあん)
開館時間 9:30 am-4:30 pm(入館は4:00 pmまで)
休館日 木曜日(8月中無休)
入館料 同時開催「虹のつくり方」と共通チケット
一般1,800円、大高生1,000円、小中生800円、70歳以上1,500円
*前売りオンラインチケット(日にち指定) https://e-tix.jp/haramuseum_arc/
*原美術館ARCメンバーシップ会員は無料、学期中の土曜日は群馬県内小中学生無料
住所 〒377-0027群馬県渋川市金井2855-1
Tel: 0279-24-6585 / Fax: 0279-24-0449
E-mail: arc@haramuseum.or.jp
ウェブサイト: https://www.haramuseum.or.jp
X: @haramuseum_arc Instagram: @haramuseumarc
