■2018年6月16日[土]ー 9月2日[日] 小瀬村真美:幻画~像(イメージ)の表皮 【原美術館】


「餐」ジクレープリント 2018年 © Mami Kosemura

【展覧会の見どころ】
原美術館では「小瀬村真美:幻画~像(イメージ)の表皮」展を開催します。本展は、絵画の構図を利用した映像や写真作品を国内外で発表している小瀬村真美の美術館初個展です。出品作品は、実在する静物画を模したセットを長期間インターバル撮影(一定の間隔で連続して写真を撮影)して繋げた初期のアニメーション作品や、ニューヨークの路上に打ち捨てられていたゴミやがらくたを用い、17世紀スペインの静物画と見紛う写真に仕上げた近作に加え、あえて自らの制作過程を露にすることで絵画および自作を批評的に再考する新作の組写真やインスタレーションなど約30点。実力派、小瀬村の魅力に迫るまたとない機会となります。

 
「粧」 ジクレープリント2018年(7点組) © Mami Kosemura

【開催要項】
展覧会名 小瀬村真美:幻画~像(イメージ)の表皮
(欧文表記 Mami Kosemura: Phantasies Over Time
会期 2018年6月16日[土] ― 9月2日[日]  開館日数 68日
主催・会場 原美術館 東京都品川区北品川4-7-25 〒140-0001
Tel  03-3445-0651
E-mail info@haramuseum.or.jp
ウェブサイト http://www.haramuseum.or.jp
携帯サイト http://mobile.haramuseum.or.jp
ブログ https://www.art-it.asia/u/HaraMuseum
ツイッター http://twitter.com/haramuseum
助成 公益財団法人五島記念文化財団
協賛 原美術館賛助会員
休館日 月曜日(7月16日は開館)、7月17日
開館時間 11:00 am – 5:00 pm(水曜は8:00 pmまで/入館は閉館時刻の30分前まで)
入館料 一般1,100円、大高生700円、小中生500円/原美術館メンバーは無料、学期中の土曜日は小中高生の入館無料/20名以上の団体は1人100円引
交通案内 JR「品川駅」高輪口より徒歩15分/タクシー5分/都営バス「反96」系統「御殿山」停留所下車、徒歩3分/京急線「北品川駅」より徒歩8分
*日曜・祝日には当館学芸員によるギャラリーガイドを実施(2:30 pmより30分程度)
*展覧会図録を発行予定[価格未定、B5判、約40ページ、6月下旬発行予定]

【関連イベント】
Meet the Artist: 小瀬村真美
日時 7月7日[土] 2:30-4:00 pm
場所:原美術館ザ・ホール 料金:無料(要入館料) 定員:80名 受付開始日:2018年6月19日[火]より
受付方法:電話(03-3445-0651)またはEメールにてお申し込みください。Eメールの場合は、件名に「イベント申込み:Meet the Artist」、本文に氏名、電話番号(日中繋がる番号)、参加人数をお書き添えの上、event@haramuseum.or.jpまでお送りください。

Screening:夜間上映プログラム
日時:7月11日から8月29日までの毎週水曜日5:00-8:00 pm(全8回)場所:原美術館ザ・ホール(要入館料・予約不要・入退出自由)上映方法:本展未出品作品より3点をループにて上映。
「Frozen – screening version -」21分20秒、カラー、ステレオ
「Under Water」14分20秒、カラー、ステレオ
「The Hotel That Time Forgot / Pendulum」12分, カラー、ステレオ

【展覧会概要】 
近年、日本では写実絵画の人気が高まっています。検索すればいくつもの写実絵画展がヒットし、キャリアの浅い画家の写実作品でさえ品薄であるという新聞記事も目にします。確かに写真であるかのように精密に描かれた人物や静物は、技術的な鍛錬を経た画家の手業を現し、純粋な感動を観る者に与えてくれます。また、画面上の細密な描写のみならず、その描写を通して物事の本質を表そうとする作家の姿勢にも心が動かされるでしょう。
小瀬村真美の作品は、写実絵画、中でも17世紀西洋の写実的な静物画を参照しています。初期の『Decaying』(2001年)はカラヴァジェスキ(注1)の静物画を引用したものですし、『Sweet Scent』(2003年)はフランシスコ デ スルバラン(1598-1664)の『オレンジ、レモン、水の入ったコップのある静物』(1633年)をもとにした作品です。但し、それらは一見したところ静謐な写実絵画のようでありながら、実は作家が組んだセットをデジタルカメラでインターバル撮影し、その数千もの写真を繋げたアニメーション。しかも制作にあたっては、写真の得意とする写実を希求するのではなく、カメラに写る三次元の現実を、構図および描写においていかにニ次元の絵画的写実に近づけるかに腐心しています。作家はその過程で、写実絵画の本物らしさが、対象や空間を変形したり整形したりして作られていることを発見し、画中の現実らしさと現実との差異=絵画の嘘、虚構性を明らかにしていきました。

――絵画の中で描かれた風景を実際に日常へと、三次元の空間へと引き戻した時、描かれた風景と現実とのずれは明るみになります。「変形」や「整形」された日常は、再び現実へと引き戻されて初めて、日常の姿とはかけ離れた奇妙で滑稽な風景となって現れるのです――(注2)

しかし興味深いことに、一旦は虚構となった絵画は、小瀬村によってアニメーションになることで再び現実らしさを獲得します。そこには写実絵画の現実感とは別の、アニメーションの“動く”という時間的要素が観る者にもたらす強靭な“生”の感覚が現れています。

――どんなに奇妙で滑稽な姿に成り果てたとしても、映像として一枚の絵画を動かした瞬間、その風景は、そのものの持つ本来の「生のイメージ」を私たちにふいに垣間見せます。時間や動きは、絵画という「変形」され、「整形」された奇妙な風景へと成り果ててしまった日常が、日常へと帰ろうとするきっかけになり得るのです――(注3)


「Objects – New York III – 」 ジクレープリント 2016年 © Mami Kosemura

このように、 “静物動画”制作を通じて、絵画×写真×映像の豊かな可能性を見出した作家は、さらに気付きのひとつひとつを丁寧に作品化していきます。異なるメディアの時間的・空間的構造についての考察、像(イメージ)の表面への関心、物質的・触覚的な映像への挑戦など、作品は作家の探究心とともに展開していきました。
小瀬村作品が魅力的なのは、知的な美術的探究が作品に反映されていることに因りますが、他方、地道なインターバル撮影による動画制作の結果、自身の目では気付くことのなかった、写真や映像特有の視覚的世界、ヴァルター ベンヤミンの言う「無意識が織り込まれた空間」(注4)が立ち現れる瞬間を体験し、撮影するとはどういうことか、制作の何たるかに気付いたことも理由のひとつでしょう。その体験とは『Decaying』を再生させた時の出来事――引用したヴァニタス画(注5)のように、ただただ枯れていくと思われていた切花の蕾が、予想に反して勢いよく大きく花開いた――という出来事でした。

――映像や写真を撮影するということは、その設定がどんなに演劇的、虚像的であったとしても現実を映すことであり、私がすべきことは、その予測不可能な現実を、ただ注意深く見るための設定を整えることなのではないだろうか?もっと現実とは曖昧で、重要なことはその曖昧さの中に隠されているのではないだろうか?――(注6)

上記のような経験を背景に、近年の『Pendulum』(2016年)や『Objects – New York – 』(2016年)など、作家が「エラーの要素」と呼ぶ映像の歪みや正体不明のオブジェクトを絡める作品、つまり、美術の問題に還元されず、自身のコンセプトに縛られず、偶然を受け入れ、観る人の視線や経験に解釈を委ねる作品が生まれていると思われます。17世紀の静物画の引用から始まった小瀬村の制作は、絵画、写真、映像の間を作品名のPendulum(振り子)のようにゆれながら続き、自身も含めた観る人それぞれが、それまで見えていなかった現実を見出す場、予測できない現実が立ち現れる場を提供するものとなりました。流行の写実絵画かどうかに関わらず、アーティストが制作し続ける動機とは、そのような見えない現実を見てみたいという欲求かもしれません。
なお、本展は五島記念文化賞の海外研修の成果を発表する場であるとともに、作家支援を目的とする原美術館賛助会員の協賛を得て開催される展覧会でもあります。

(注1)カラヴァジェスキとは、ミケランジェロ メリージ ダ カラヴァッジョ(1571-1610)の作風に影響された、17世紀のスペインやオランダの作家達を指す言葉。主に彼の写実描写と陰影の強いコントラストを受け継ぐ
(注2)アーティストステートメント、「取手アートプロジェクト」、2006年、http://www.toride-ap.gr.jp/sg/past/2/kosemura-1.html
(注3)同上
(注4)ヴァルター ベンヤミン「複製技術時代の芸術作品」、浅井健二郎編訳、久保哲司訳、『ベンヤミン・コレクション1 近代の意味』ちくま学芸文庫、1995年
(注5)「ヴァニタス」とは、人生の儚さ、虚しさを表す寓意。ヴァニタス画は、枯れていく花や腐っていく果物等を儚さの隠喩として描く静物画のこと
(注6)本展開催に際して行ったインタビューより


「Drape IV」 ジクレープリント 2014年 © Mami Kosemura

【展覧会名「幻画~像(イメージ)の表皮」について】
本展覧会名の「幻画」は、初期の映画的装置である「幻燈」と小瀬村の“動く絵画”を掛けた題名である。また、副題の「像(イメージ)の表皮」には、デジタル作品でありながら小瀬村作品に特徴的な生々しさ、身体的触覚、匂い、物質性というニュアンスを表し、「絵画からのアプロプリエーション作品*、という捉え方から、もう一歩、わたしの作品世界に踏み込むきっかけになってほしい」という彼女の思いが込められている。「表皮」とは、画像、絵画、映像、写真などの媒体、イメージを媒介するカンヴァスやスクリーンそのもののことも指し、イメージを巡る虚構と現実を連想させてもいる。
*「アプロプリエーション」とは、美術作品の中に過去の有名作を引用すること。1980年代以降、作品のオリジナリティに揺さぶりをかける手法として行われた。


「Objects – New York V– 」 ジクレープリント 2016年 © Mami Kosemura

【各展示室テーマ】
[ギャラリーI] はじまりとおわりの部屋~ドローイングワークと各作品のはじまり、または終わり(きっかけ、または残骸)
[ギャラリーII] 西洋絵画の部屋
[ギャラリーIII] 人物の部屋~episode III 呼吸の音
[ギャラリーIV] ニューヨークの部屋~絵画からの拡張とラフな実験
[ギャラリーV] 黒い静物画の部屋~おわりに向かって、動く映像から静止画へ

【小瀬村真美 略歴】

1975年生まれ。2005年、東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程美術専攻油画研究領域修了。国内外のギャラリーでの個展の他、「MOTアニュアル2004 -私はどこからきたのか/そしてどこへいくのか-」(東京都現代美術館、2004年)や「East of Eden」(The Freer Gallery of Art and the Arthur M. Sackler Gallery/ワシントンDC、2007年)などグループ展に多数参加。主な受賞歴は、久米賞(1996年)、高橋芸友会賞(2001年)、野村国際文化財団賞野村賞(2004年度)、五島記念文化賞美術部門新人賞受賞(2015年度)など。東京都現代美術館、東京藝術大学大学美術館、群馬県立館林美術館、Asia Society Museum、Kuandu Museum of Fine Arts(台北)に作品が収蔵されている。http://mamikosemura.com

【五島記念文化財団と五島記念文化賞】
五島記念文化財団は、豊かな生活環境の創造に力を尽くした、故・五島昇東急グループ代表の事績を記念するために設立されました。美術とオペラの分野で将来性のある優秀な新人を「五島記念文化賞」(美術新人賞、オペラ新人賞)として顕彰し、海外研修および研修終了後の成果発表への資金面の助成を行っています。
本展は、研修終了後の成果発表として助成を受けています。

【カフェ ダール 展覧会関連「イメージケーキ」のご案内】

原美術館館内の「カフェ ダール」では、緑ゆたかな庭に展示された作品を眺めながら、季節感あふれるお菓子やお食事、ワインやシャンパンをお楽しみいただけます。美術館のカフェならではのメニューとして人気が高いのが、開催中の展覧会にあわせた「イメージケーキ」(755円)。「小瀬村真美:幻画~像(イメージ)の表皮」展のケーキは、作品に登場する花や果物などをイメージしたブルーベリームースです。ムースの上にはブルーベリーのグラッサージュを、そしてバタークリームの花とドライオレンジ、黄色のエディブルフラワーをあしらっております。展覧会と合わせ、イメージケーキもぜひお楽しみください。*カフェのみのご利用にも入館料が必要です。

※本展に限り、作家の許可を得て撮影可能となっております。撮影時は館内に表示されているご注意事項をお守りください。
#小瀬村真美 #原美術館 #MamiKosemura #HaraMuseum

—————————————————————–
原美術館とハラ ミュージアム アークはTwitterで情報発信中。
http://twitter.com/haramuseum (@haramuseum)
http://twitter.com/HaraMuseumARC (@HaraMuseumARC)

原美術館ウェブサイト
http://www.haramuseum.or.jp
http://mobile.haramuseum.or.jp

原美術館の基本情報、アクセスはこちら

原美術館とハラ ミュージアム アークは割引券一覧iPhoneアプリ「ミューぽん」に参加。
http://www.tokyoartbeat.com/apps/mupon

Copyrighted Image