横溝静 Shizuka Yokomizo 「That Day あの日」

Shizuka Yokomizo  横溝静

 

That Day あの日

 

2020年3月17日 – 2020年4月25

 

That Day (あの日) 2020, video still (detail), 12min. 19sec. ©2020 Shizuka Yokomizo

 

 ワコウ・ワークス・オブ・アートではこの度、2020年3月17日(火)から4月25日(土)まで、イギリス在住の日本人作家・横溝 静(よこみぞ しずか)による7度目の個展『That Day あの日』を開催いたします。日本では5年ぶりとなる本展では照明効果と連動する映像作品を中心に、時間と記憶の行き先を問いかける新作を展示いたします。

  横溝は1966年に東京に生まれ、1995年にロンドン大学ゴールドスミス校の美術修士課程を卒業しました。以後ロンドンを拠点に活動し、写真や映像の特性を用いることで自己と他者の関係性に注目した作品の発表を続けています。主に人物を被写体としてきた横溝の作品は、自己に還元できない他者の在り方や他者の構造を問いかけ、不可視の要素が内在するものを探りながら認識や実存という普遍的な課題に言及します。近年はその中でもイメージの起源や生成される契機に注目し、作品に文化人類学的な視点を織り込みながら言及先を人物像以外にも発展させています。

 本展覧会は、緩やかに明滅する照明と連動した東北の海を舞台とする映像作品《That Day (あの日)》、毎日展示が替わる明け方の空の写真《Today / Yesterday》、 波の白黒写真《Waves》の、2020年に完成した3つの新作にて構成されます。

 映像作品《That Day》では、幼少期に父親が海辺で撮影した夏休みの家族写真と、同じ海辺で近年撮影した作家自身と母親の近影とが印画紙に現像される様が映し出されます。現像液の静かな水音や海の音に記憶を辿るセリフがオーバーラップするこの作品は、現像の度合いが進行するにつれ展示室の照明が強まり、投射されるイメージが光にかきけされていきます。セリフは作家自身の言葉でありながら日本語を知らない外国人がローマ字表記を頼りに読み上げ、不特定な音声として登場します。同時に展示される2点組みの写真作品《Today / Yesterday》は現在作家が暮らすロンドンの窓から見上げた明け方の空を2019年の3月から約2ヶ月に渡り撮影したものです。展示中にプリントが入れ替えられていく本作品や、映像内に登場する昔の家族写真の波の部分だけを引き伸ばした《Waves》とともに、時間と記憶の姿が多層的に浮かび上がります。

 これまでの作風とは異なり自らの私的な領域を舞台とする本展では、抽象化された私的な物語が、作品を通じて私達それぞれの時間と結びつき共有され、記憶の根底に根付くイメージの存在への問いかけが浮かびあがり始めます。個人の経験と、個人を超えた経験それぞれを構成する記憶の構造を頼りに時間や記憶という見えないものが私達をどう形作っていくのかを見つめる本展を、是非この機会にご高覧ください。

[営業時間のご案内]

新型ウイルスの拡大への影響を考慮し、3月末日まで11:00 – 16:00の営業とさせていただきます。尚、今後の状況や自粛要請を受けて変動する可能性がございます。随時弊社HP及びTwitterで随時更新いたしますが、ご不明な点はお気兼ねなくお問い合わせください。展示室内は衛生面に配慮しておりますが、マスクの着用をご推奨しております。

[Shizuka Yokomizo 横溝 静] 

1966年東京生まれ、ロンドン在住。中央大学で哲学を専攻した後、ロンドン大学大学院でファインアートを専攻。写真を用いながら、自己の存在と世界/他者の関係性をめぐる作品を制作している。これまで、友人が眠りについた姿を写した《Sleeping》(1995-97)、見知らぬ他者と言葉を交わさぬ邂逅で撮影した《Stranger》(1998-2000)、イメージの虚構と実在を見つめた《All》(2008-10)などの作品を発表。近年参加した主な展覧会に、2010年六本木クロッシング(森美術館)、2015年アーティスト・ファイル 2015(国立新美術館)2016年Japanese Photography from Postwar to Now, (SF MOMA), 2018年第10回恵比寿映像祭((東京都写真美術館), 2019年MAMコレクション011(森美術館)等がある。

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