シュウゴアーツオンラインショー 小林正人「この星の絵の具」

小林正人, Unnamed #10, 1998, oil, canvas, wooden frame, 290x190x85cm

 

シュウゴアーツ では第4回目のオンライン企画として、小林正人著、自伝的小説「この星の絵の具」を取り上げます。2018年に刊行されたシリーズ第1作目の上巻では「せんせい」との運命的な出会いを通じて絵画の世界へ導かれ、描くことで成長する少年・小林正人の姿が広く感動を呼びました。中巻では日本のアトリエを飛び出した著者をめくるめく絵画的冒険の旅が待ち受けています。時は1996年、国際的なアートシーンを駆け回り、キャンバスを張りながら描くという独創的な絵画のスタイルを獲得した著者の青年期を描いた傑作です。
本作が好評を博す理由として、ストーリーもさることながら、主人公である小林正人の人生と作品がいかに不可分であるか、作品の背景に重層的な生命の営みと思考が横たわり、それらと描く行為を統合するためにアーティストはいかに格闘するのかということが鮮やかな臨場感を持って語られているからではないでしょうか。
小説の構成はあたかも蓄積された日々のスケッチから一枚の絵画が着想されるように、主人公の記憶や想いを起点として様々な情景が時空を往来しながら展開し、ビルドゥングスロマンを織り成していきます。物語が進むにつれ、変化する現実に反応し成長する主人公の意識とともに絵画の枠組みが構築され、高揚する感情が光となり画に色彩を与えていきます。このような構成は小説と絵画論を同時に成立させているという点においても特異であり、小林正人の新たな表現の到達ともいうべきものです。
本展はこの類稀な小説の言葉にのせて小林絵画の一端をご紹介するとともに、小説の舞台である90年代当時に制作された大作二点をオンラインで公開するという試みです。これらの大作はその大きさゆえ、日本ではあまり発表されてこなかったものですが、今回のために小林正人立会いのもと作品を撮り下ろし、細部まで映像としてご鑑賞頂けるようにいたしました。リンクよりテキストと動画をお楽しみください。
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公開:2021年2月20日(土) より
プレスリリースPDF
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小林正人『この星の絵の具[中]ダーフハース通り52』

368ページ、ソフトカバー文庫判
デザイン:木村稔将
協力:シュウゴアーツ
発行:アートダイバー
定価:本体1,800円(+税)
2020年10月刊行
ISBN:978-4-908122-17-0

全国主要書店およびWEB書店、シュウゴアーツにて販売中

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