第24回台新芸術賞(年間グランプリ)TAIボディ・シアター[TAI身體劇場]「qaqay」 Photo by LIN Yen-Shao
2026年5月30日、台新銀行文化芸術基金は、台湾国内で過去1年の間に発表された視覚芸術および舞台芸術における優れた表現を表彰する芸術賞「第24回台新芸術賞」の授賞式を開催した。最終候補16組から選ばれる年間グランプリは、花蓮の太平洋左岸藝術季2025で「qaqay」を上演したTAIボディ・シアターが受賞し、賞金150万台湾ドル(約760万円)を獲得した。視覚芸術部門は、台北現代美術館で個展「Cosmic Sketches—The LuxuryLogico Exhibition」を開いたラグジュアリー・ロジコ、舞台芸術部門は、桃園鐵玫瑰音樂節2025で「Oh! Baby 2025」を上演したボディ・フェーズ・スタジオが受賞し、それぞれ100万台湾ドルを獲得した。
台新芸術賞は、2002年に台新銀行文化芸術基金が創設。視覚芸術、舞台芸術の領域横断的な精神、各領域における専門性を促進、表彰する芸術賞として、台湾アートシーンにおいて重要な役割を果たしている。本年度は、メディアや表現領域の境界を越え、機械仕掛けのインスタレーションと自然界との対話から、現代演劇における社会的身体の探究、原住民族の伝統と自然史に根ざした身体表現まで、いずれも過去への内省を伴いつつも、今という時代への関心を示す作品が受賞を成し遂げた。
第24回台新芸術賞(年間グランプリ)TAIボディ・シアター[TAI身體劇場]「qaqay」 Photo by LIN Yen-Shao
年間グランプリを獲得したTAIボディ・シアター[TAI身體劇場]の「qaqay」は、花蓮の太平洋左岸藝術季2025で上演された。「qaqay」とはタロコ語で「足」を指し、水面を踏む音を表す擬音「papak」や動物の足をも意味する。原住民族の言語と身体性に根ざした独自の「足譜(foot-scripts)」を軸とする本作は、倒れた巨人の身体が山となり、その足が島となったというタロコ族の神話を下敷きに、移ろう風景や堆積する時間、土地の哲学をたどる。固有の空間と歴史を刻んだ花蓮・吉安の旧たばこ工場(花蓮吉安菸廠)を舞台に、ディアスポラの忘れ去られた記憶を掘り起こし、山や森にこだまする声と足音に耳を澄ませることを観る者に促す。文化が消し去られていく現実と向き合いながら、TAIボディ・シアターは音楽と舞踊を回復の手立てに生きた記憶と伝統を結び直していく。審査員は、本作の核心を「精神の清算(spiritual reckoning)」と位置づけた上で、決して叶うことのない「帰還」という困難をものともせずに、過去を受け入れて未来へと向かう、生命力や自己回復力にあふれた作品であると評価した。
第24回台新芸術賞(視覚芸術賞)ラグジュアリー・ロジコ[豪華朗機工]「Cosmic Sketches—The LuxuryLogico Exhibition」より《Mindhand》 Photo by WANG Shih-Pang (ANPIS FOTO), courtesy of the Museum of Contemporary Art, Taipei
第24回台新芸術賞(視覚芸術賞)ラグジュアリー・ロジコ[豪華朗機工]「Cosmic Sketches—The LuxuryLogico Exhibition」より《Mindhand》 Photo by WANG Shih-Pang (ANPIS FOTO), courtesy of the Museum of Contemporary Art, Taipei
視覚芸術賞は、台北現代美術館で開かれた個展「Cosmic Sketches—The LuxuryLogico Exhibition」により、ラグジュアリー・ロジコ[豪華朗機工]が受賞。チャン・ゲンホア[張耿華]、リン・クンイン[林昆穎]、チェン・イー[陳乂]、そして2018年に逝去した共同創設者のチャン・コンハオ[張耿豪]らによって2010年に結成された同グループは、結成15周年を機に、過去作14点の再解釈と、宇宙をテーマにした新作1点をあわせた15点をまとめて発表した。空間的・技術的・創作的な制約の中で一貫して制作を続けた作品群は、独立しながらも互いに絡み合い、その場で展開していく宇宙的な劇場へと編み上げられた。審査員は、これらの作品を貫くのは、深い人間性、人と自然、そして社会の綻びゆく結びつきへの関心、そして芸術がそれを修復しうるという確信であるとし、テクノロジーに覆われた文化的状況の中で、同グループがデジタル時代の只中にあってなお、温かくゆるぎなく持続する「情動的な運動の詩学(affective kinetic poetics)」を提示していると評価した。
第24回台新芸術賞(舞台芸術賞)ボディ・フェーズ・スタジオ[身體氣象館]「Oh! Baby 2025」 Photo by HSU Ping
第24回台新芸術賞(舞台芸術賞)ボディ・フェーズ・スタジオ[身體氣象館]「Oh! Baby 2025」 Photo by HSU Ping
舞台芸術賞は、桃園鐵玫瑰音樂節2025で上演された「Oh! Baby 2025」により、ボディ・フェーズ・スタジオ[身體氣象館]が受賞。ヤオ・リーチュン[姚立群]の演出のもと、韓国出身の身体障害をもつパフォーマー、カン・ソングクと、台湾のダンサー、ポン・ペイシュアン[彭佩萱]の出会いから幕を開ける本作は、「失語の身体を接続する」ことを起点に、舞台をエネルギーと欲望がぶつかり合う場へと変え、しなやかな強さと創造性をもって混沌としたエロスを解き放つ。型にはまらない身体をめぐる前提を覆し、主体性がつくられていく過程を浮かび上がらせることで、本作はいわゆる障害がいかに定義されるのかを問い直し、その中に残された可能性を肯定する。審査員はこれを「人生の過酷な現実に捧げる賛歌」と称賛した。
本年度の最終審査は、演劇批評家のチェン・ヂェンシー[陳正熙]を審査委員長に、美術批評家のチェン・タイソン[陳泰松]、キュレーターでドラマトゥルクのチョウ・リンチー[周伶芝]、台南応用科技大学美術学科副教授のチェン・シェンファ[鄭勝華]。さらに国際審査員として、スウェーデンのマルメ近代美術館ディレクターのエリザベス・ミルクヴィスト、日本のSPAC-静岡県舞台芸術センターのドラマトゥルクの横山義志、アメリカのキュレーターで深圳のJD Museum次期エグゼクティブディレクターのロビン・ペッカムの計7名が務めた。
第24回台新芸術賞:https://www.taishinart.org.tw/en/art-award-year-news/2025
台新銀行文化芸術基金:http://www.taishinart.org.tw/
第24回台新芸術賞:受賞者3組、最終審査委員会、推薦委員、ならびに台新銀行文化芸術基金会理事会の集合写真
最終候補(視覚芸術)
チュワン・ウェイツー[莊偉慈]「Sounds of Babel」台湾現代文化実験場(C-LAB)、台北
アウ・ショウイー[區秀詒]、チェン・ヨウルー[陳侑汝](Her Lab Space)「The Rocking Dream」立方計画空間、台北
ホァン・スンクォン[黃孫權]《Trilogy of Culture and Technology》「Featured in Reimagining Radical Cities」新北市美術館
ポン・ホンヂィ[彭弘智]「Psychic Theater」台北市立美術館
ツァイ・ミンリャン[蔡明亮]「Footprints of the Walker: Tsai Ming-Liang」高雄市立美術館
ラグジュアリー・ロジコ[豪華朗機工]「Cosmic Sketches」台北現代美術館
チェン・チャオトン[陳肇彤]「Phantom Topographies」嘉義市立美術館
最終候補(舞台芸術)
チャオ・ティンティン[趙亭婷]x アナーキー・ダンスシアター「KINGDOM」C-LAB 台湾声響実験室2025、台北
ボディ・フェーズ・スタジオ[身體氣象館]「Oh! Baby 2025」桃園鐵玫瑰音樂節2025、桃園
TAIボディ・シアター[TAI身體劇場]「qaqay」太平洋左岸藝術季2025、花蓮
HORSE[驫舞劇場]、スー・ウェイジア[蘇威嘉]「FreeSteps-murmur」台湾国際芸術祭2025
アンチノミー・カンパニー[二律悖反協作體]「Embarking on a Drift to the Unknown」衛武営国家芸術文化センター、高雄
ボディ・フェーズ・スタジオ[身體氣象館]「Macbeth Does a Ritual」牯嶺街小劇場、台北
スンソン・シアター[身聲劇場]「Lament of the Wandering Head」牯嶺街小劇場、台北
ヤン・ナイシュエン[楊乃璇]「Worn Yet Unfolding」NTCH Ideas Lab 2025、国家両庁院実験劇場、台北
クオ・ジンムー[郭靖沐]「Waterfall II」郭靖沐古筝独奏会、国家両庁院、台北
