徳永彩「HER WORLD」@ AL

徳永彩「HER WORLD」
会期2026年1月16日(金) – 1月20日(火)
会場AL [MAP]
住所〒150-0022
東京都渋谷区恵比寿南3-7-17 1F
開館時間12:00–19:00
オープニングレセプション:1月16日(金)17:00–20:00
休館日会期中無休
観覧料無料
URLhttps://al-tokyo.jp/gallery/tokunagaaya_her-world/
「HER WORLD」によせて

「種」をこえた親愛のまじわり。それは日々のかさなりとともに深く強くなっていく。そばにいる。息をしている。食べている。眠っている。たがいを見ている———生きものが感じあい、ともに暮らす。それが15年をこえていたといえば、育まれていたかけがえのない心情は、人の心のよすがとして置き換えができないものであることは想像に難くない。しかし犬は自分が何を感じ見ているかを示すことはできない。そして犬(HER)はすでに旅立っている。



写真家・徳永彩のまなざしは1990年代の出発地点からずっと一貫している。自分とひとつながりにある存在や光景を繊細な写真にする人だ。世界を切り取り写真という断片として投げ出すというより、徳永の作品のなかでは写されたもの自体が写真にされたことを気づいていないかのように、空や植物や街並みは虚心にたたずんでいる。

おだやかな画面の向こう側に、徳永と暮らした犬(HER)がいる。写真家は、彼女(HER)が見たものをあらためて写真にした。写真という静的なヴィジョンによって、作者とわれわれはその世界を読むことができるようになったのだ。「光」で「描かれた」【photo/graph】として。

「HER WORLD」には、生命の黄昏時に彼女(HER)が見たであろう光景が静かに息づいている。過去の光をいまの光で描き、その行為がまた過去になる。われわれは時のうつろいのなかで描かれた偶然と出会い、また描こうという意図を読み、かみしめる。そのささやかで澄んだ光景は、われわれが見るたびにその陰影と色彩を濃くしていく。

池谷修一(写真編集者 / インディペンデント・キュレーター)

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