Nnena Kalu. Photo: James Speakman/PA Media Assignments
2025年12月9日、世界有数の現代美術賞として知られるターナー賞の授賞式が、ブラッドフォードのグラマースクールで開かれ、J・M・W・ターナー生誕250周年の記念すべき年の受賞者として、ロンドンに拠点を置く、学習障害を持つアーティストの活動を支援する団体「Action Space」に在籍、制作活動を続けるニーナ・カルーが選出された。カルーには賞金25,000ポンド(約521万円)が授与された。
BBCニュースで中継された授賞式では、授賞プレゼンターを務めた国際的な人気を誇るマジシャンのスティーヴン・フレイン(ダイナモ)から名前を呼ばれたニーナ・カルーが、Action Spaceでスタジオマネージャーなどを務めるシャーロット・ホリンズヘッドらと共に登壇。自閉症を抱えるカルーの一言に続き、長きにわたり制作活動に協力してきたホリンズヘッドが厳しい道のりを経て成し遂げたその重大な功績を称賛した。
受賞者カルーをはじめ、レネ・マティッチ、モハンマド・サーミ、ゼイディー・チャの最終候補4名による展覧会は来年2月22日まで引き続き、カートライト・ホール・アートギャラリーにて開催している。
Nnena Kalu. Photo: James Speakman/PA Media Assignments
Nnena Kalu. Turner Prize 2025. Cartwright Hall Art Gallery. Bradford. Photograph by David Levene
Nnena Kalu. Turner Prize 2025. Cartwright Hall Art Gallery. Bradford. Photograph by David Levene
ニーナ・カルー(1966年グラスゴー生まれ)は、紙や布、セロファンやビデオテープなど、さまざまな素材を繭のような形に仕上げた色彩豊かな立体を展示空間の柱に巻きつけたり天井から吊り下げた彫刻インスタレーション、渦巻くような軌跡を繰り返し描いた2点組あるいは複数点からなる抽象的なドローイングなど、行為の反復に根差した作品を発表してきた。2024年から2025年にかけてリバプールのウォーカー・アートギャラリーで開かれた企画展「Conversations」におけるドローイング《Drawing 21》(2021)の発表、2024年にバルセロナ都市圏で開かれたマニフェスタ15のコミッション作品として旧発電所の建物で発表したインスタレーション《Hanging Sculpture 1-10》(2024)の評価によりターナー賞の最終候補に選出されていた。
そのほか、主な個展に「Creations of Care」(クンストハル・スタヴァンゲル、ノルウェー、2025)、「Nnena Kalu」(Arcadia Missa、ロンドン、2024)、「Infinite Drawing」(Deptford X、ロンドン、2022)、「Studio Voltaire elsewhere」(Old Burlington Street、ロンドン、2020)、「Wrapping」(Humber Street Gallery、キングストン・アポン・ハル、2019)、「Nnena Kalu」(Project Ability Gallery、2018 ※グラスゴー・インターナショナル2018)。主なグループ展に「Kaleidoscopic Realms」(ノッティンガム城博物館美術館、2024)、「Trickster Figures: Sculpture and the Body」(MK Gallery、ミルトン・キーンズ、2023)、「Summer Exhibition」(ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ、ロンドン、2021)、「Spectrum Arts Prize」(サーチ・ギャラリー、ロンドン、2018)、「Radical Craft: Alternative Ways of Making」(Pallant House Gallery、チチェスター、2016)、「The Trouble with Painting Today」(Pump House Gallery、ロンドン、2014)、「Side by Side International Exhibition」(サウスバンク・センター、ロンドン、2013)、「Big Show」(Studio Voltaire、ロンドン、2004)など。
「ターナー賞2025」の展示会場となったカートライト・ホール・アートギャラリーの展示空間でも、天井から吊り下げた彫刻インスタレーションや複数組のドローイング作品を展開。審査員は、表現力豊かな身振りを観客を魅了する抽象的な彫刻やドローイングに生き生きと昇華した点を高く評価し、その独自の表現方法や作品におけるサイズ、構成、色彩の妙を取り上げ、カルー作品の持つ存在の力強さを絶賛した。本年度の審査は、審査委員長のアレックス・ファーカーソン(テート・ブリテン ディレクター)をはじめとする、アンドリュー・ボナチーナ(インディペンデント・キュレーター)、サム・ラッキー(リバプール・ビエンナーレ ディレクター)、プリエシュ・ミストリー(ナショナル・ギャラリー近現代美術プロジェクト担当アソシエイト・キュレーター)、ハブダ・ラシード(フィッツウィリアム美術館近現代美術担当シニア・キュレーター)の5名が担当した。
Nnena Kalu. Turner Prize 2025. Cartwright Hall Art Gallery. Bradford. Courtesy of the artist Action Space, London and Arcadia Missa, London. Photograph by David Levene
Nnena Kalu. Turner Prize 2025. Cartwright Hall Art Gallery. Bradford. Courtesy of the artist Action Space, London and Arcadia Missa, London. Photograph by David Levene
来年のターナー賞の開催地は、イングランド北部ノース・ヨークシャー州のミドルズブラのティーズサイド大学ミドルズブラ現代美術館(MIMA)。2018年よりミドルズブラ文化パートナーシップと称して、市内の文化施設や文化事業などを連携し、英国一の創造都市を目指してきた同市にとっても重要な機会として期待が高まる。
また、来年2月に東京、6月に京都で開幕する「テート美術館 - YBA&BEYOND 世界を変えた90s英国アート」には、レイチェル・ホワイトリード(1993)、ダミアン・ハースト(1995)、ジリアン・ウェアリング(1997)、クリス・オフィリ(1998)、スティーヴ・マックイーン(1999)、ヴォルフガング・ティルマンス(2000)、ジェレミー・デラー(2004)、マーク・ウォリンジャー(2007)など、数多くの同賞歴代受賞および最終候補者による出品が予定されている。
ターナー賞:https://www.tate.org.uk/art/turner-prize
ターナー賞2025
2025年9月27日(土)- 2026年2月22日(日)
カートライト・ホール・アートギャラリー
「ブラッドフォード2025」公式ウェブサイト:https://bradford2025.co.uk/event/turner-prize/
参加アーティスト:ニーナ・カルー、レネ・マティッチ、モハンマド・サーミ、ゼイディー・チャ
