サイトウマコト「みえるもの」@ タカ・イシイギャラリー(六本木)

Makoto Saito “fence [2025-1]”, 2022-2025, oil and acrylic on canvas, 163 x 210 cm © Makoto Saito / Photo: Kenji Takahashi
サイトウマコト「みえるもの」
会期2025年11月5日(水) – 12月13日(土)
会場タカ・イシイギャラリー(六本木) [MAP]
住所〒106-0032
東京都港区六本木6-5-24 complex665 3F
開館時間12:00–19:00
オープニング・レセプション:11月5日(水)17:00–19:00
休館日日、月、祝
URLhttps://www.takaishiigallery.com/jp/archives/35668/
タカ・イシイギャラリーは、11月5日(水)から12月13日(土)まで、サイトウマコトの個展を開催いたします。タカ・イシイギャラリーでの3回目の個展となる本展では、近年サイトウが取り組み始めた、抽象的な大型ペインティング作品の新作4点を発表いたします。

サイトウは、ルシアン・フロイドやフランシス・ベーコン、アントナン・アルトーなど、人間の狂気が刻み込まれた顔を主題に、コンピューター上でそれらを解体・再構成した網点状の設計図を制作し、これを膨大な時間をかけてキャンバス上に絵筆で描く、まるでデジタルデータが受肉するかのようなポートレート作品で知られています。

本展で展示される新作は、デジタル上での解体と再構成の過程において収集された、多数のポートレートのデータの断片を組み合わせることで制作されました。サイトウは、モニター上でいくつものレイヤーを重ねることによって作品の完成イメージを見いだすその過程を、「風景を探す旅」のようだと語ります。こうした作業に限らず、自身の創作意欲を掻き立てる風貌の見極めなど、作家のこれまでの制作には一貫して「みること」が通底しています。設計図をもとに、赤・青・黄といった原色の無数の網点で描かれるサイトウの絵画は、無数の錐体細胞からなる自身の網膜をキャンバス上に移植する行為といえるでしょう。鑑賞者は、作家が描いた「絵」を見るのではなく、風景を見いだしたサイトウの網膜そのものをのぞき込むことになります。

今回展示される作品には、サイトウ自身が鉛筆で描いたドローイングのレイヤーが加えられています。黒で描かれた曖昧な線と形は、何かを表象しているようでありながら、寸前のところで意味を結ぶことを拒みます。これまで自身の網膜が見続けてきた風景に、今回初めてサイトウは「描く」という手の行為を介入させました。

細胞が自壊するかのようなサイトウのポートレートシリーズは、欲望に駆られて情報の速度と量が際限なく膨張し続ける現代社会の末路を示唆するかのようです。昨年発表された「トロール」シリーズの絵画でも顕著に見られるように、近年サイトウは現実世界から距離を置き、より原初的な主題を選ぶ傾向を強めており、自らそれを魂の救済と呼んでいます。鋭敏な受信機のように時代の気配を受け取り、作品へと翻訳してきたサイトウの制作のアプローチは転機を迎えつつあります。

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