「Transcending Borders 越境」@ CADAN 大手町

福岡道雄《私達は本当に怯えなくてもいいのでしょうか(椿)》2000, 木、FRP, H120 x W30 x D30 cm, Courtesy of FINCH ARTS

 

「Transcending Borders 越境」
2025年10月31日(金)–11月21日(金)
CADAN 大手町(東京都千代田区大手町2丁目6-3 銭瓶町ビルディング1階)
https://cadan.org/
開廊時間:12:00–19:00(最終日のみ17:00まで)
休廊日:日、月、祝
展覧会URL:https://cadan.org/cadanotemachi-transcendingborder/

 

2025年10月20日、同年3月にCADAN 有楽町を閉廊し展示活動を中断していたCADAN(⼀般社団法⼈⽇本現代美術商協会)が、一般財団法人カルチャー・ヴィジョン・ジャパン(CVJ)と三菱地所株式会社の協力の下、東京・大手町の銭瓶町ビルディング1階の「ぜにがめプレイス」にて、新たなギャラリースペース「CADAN大手町」の開廊を発表した。

10月31日から始まる新スペースでの第1回目の展覧会「Transcending Borders 越境」では、「越境」を国や地域といった地理的な境界を超えることにとどまらず、素材や技法、世代、精神性、文化的背景といった多様な枠組みを横断する創造的な行為として捉え、関西を拠点にする4軒のギャラリーが、それぞれの視点から選んだ8人のアーティストを紹介する。

 

井上廣子《Being in the Face #3_Yaroslava (Ukraine)》2025, archival pigment print, wax, 22.5×16cm, Courtesy of Yoshiaki Inoue Gallery
松谷武判《Deux Cercles -09/ 円》2009, Vinyl adhesive, graphite pencil, Japanese paper on canvas, mounted on plywood board, 21×15cm, Courtesy of Yoshiaki Inoue Gallery

 

Yoshiaki Inoue Gallery(大阪)からは、井上廣子と松谷武判の作品を出品。井上廣子(大阪府生まれ)は、1995年の阪神淡路大震災を契機に、社会的な視点を取り入れた制作に取り掛かり、孤立や隔離をテーマとした《不在 Absence》(1997–2001)で注目を集める。90年代後半から現在に至るまで、ドイツと日本を拠点に活動し、近年、2023年から2024年にかけて、ベルリンで出会った難民女性たちを信頼関係のもとに撮影した肖像シリーズ《Being in the face》を制作。人間の尊厳や境界の問題に継続的に取り組んでいる。松谷武判(1937年大阪府⽣まれ)は、1963年に「具体美術協会」に参加し、木工用ビニール接着剤(ボンド)の物質性を生かした有機的なレリーフ作品を発表し、膨らみや垂れといった官能的な形態で絵画の可能性を拡張。近年、絵画と彫刻の境界を越える実験的表現が国際的に再評価され、2017年には第57回ヴェネツィア・ビエンナーレの企画展に参加、2019年にはポンピドゥー・センターで個展を開催。2024年には東京オペラシティ アートギャラリーにて大規模な回顧展が開催された。

 

藤安淳《Layered Lights #010》Courtesy of The Third Gallery Aya

 

The Third Gallery Aya(大阪)からは、笠原恵実子と藤安淳の作品を出品。笠原恵実子は、彫刻、オブジェクト、写真、映像、パフォーマンスなどのメディアを用い、女性や身体、性差といったテーマから、宗教性や制度、植民地主義といった社会構造を問う表現を展開している。主なプロジェクトには、ヨコハマトリエンナーレ2014でも発表した85か国の教会の献金箱を記録した《OFFERING》や、PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭(2015)でも発表した戦時中の陶器製手榴弾を扱った《K1001K》などがある。藤安淳(東京都生まれ)は、「他者との関係性」をテーマに、自身が双子である事実と向き合いながらアイデンティティを掘り下げ、「見る」とは、あるいは「在る」とはについて考察した作品を、写真を主として発表している。これまでに「至近距離の宇宙 日本の新進作家 vol.16」(東京都写真美術館、2019)や「人間より大きな世界へ」(榕异美術館、上海、2021)などに出品。元淳風小学校、光兎舎(ともに京都)や⾼松市美術館1階図書コーナーなどで個展を開催している。

 

黒田アキ《COSMOGARDEN》2025, mixed media on canvas, 91×116.7cm, Courtesy of Mori Yu Gallery
藤原康博《迷宮〜記憶の稜線を歩く〜》2025, oil on canvas, 53×45.5cm, Courtesy of Mori Yu Gallery

 

MORI YU GALLERY(京都)からは、黒田アキと藤原康博の作品を出品。黒田アキ(1944年京都府生まれ)は、1970年よりパリに拠点を置きながら、パリ国際ビエンナーレ(1980)、ポンピドゥー・センター(1989)などで作品を発表。1993年には東京国立近代美術館にて個展「黒田アキ:廻廊=メタモルフォーゼ」を開催(翌年に国立国際美術館に巡回)。その後も国際展や舞台美術、パブリックアートの制作など幅広い活動を展開。80歳を超える今尚、絵画とオプジェ、インスタレーションと常にメディアを越境し、旺盛な制作活動を続けている。藤原康博(1968年三重県生まれ)は、平面作品に加え、自身が夢をみた記憶を絵画ではなく箱に閉じ込めるオブジェシリーズや記憶の稜線と題して現実と夢の線引きを越境するかのような絵画を描き続けている。近年の主な展覧会に「パラランドスケープ“風景”をめぐる想像力の現在」(三重県立美術館、2019)、「感覚の領域 今、『経験する』ということ」(国立国際美術館、大阪、2022)など。2023年には三重県立美術館柳原義達記念館の次代を担う美術家を発信する新たな事業としてY² projectの第2弾として、個展「記憶の稜線を歩く」が開かれた。銀座メゾンエルメスや Hermès Hong Kong など国内外のエルメスウィンドウのディスプレイも手がける。

 

谷本真理《Pansies》2024, ceramic, φ100×H165 mm, Courtesy of FINCH ARTS

 

FINCH ARTS(京都)からは、⾕本真理と福岡道雄の作品を出品。谷本真理(1986年兵庫県生まれ)は、「遊び」や「偶然性」を孕んだ作品を制作。主な個展に「デイリー・セラピスト」(NADiff A/P/A/R/T、東京、2023)、「Story Time」(PETER AUGUSTUS、ダラス、2023)、主なグループ展に「ON-ものと身体、接点から」(清須市はるひ美術館、2022)、「Slow Culture」(京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA、2021)、「新・陶・宣⾔」(豊田市美術館、2011)など。現在、瀬戸内国際芸術祭2025(秋会期)に参加し、高見島にて作品を発表している。

福岡道雄(1936年大阪府生まれ)は、生後まもなく中国北京に渡り、終戦後に帰国。早くから彫刻家を志し、1955年に大阪市立美術研究所彫刻室に入所。1958年に海辺の砂に石膏を流し込んだ〈SAND〉シリーズを白鳳画廊(大阪)で発表した。以降、反芸術的作品《何もすることがない》、ため息を彫刻素材として捉えた《ピンクバルーン》、黒い箱状のアトリエや周辺の光景、波の表情による彫刻、平面に⾔葉を刻み込んだ《僕達は本当に怯えなくてもいいのでしょうか》」などを国内外で発表。しかし、2005年12月の個展「福岡道雄−腐ったきんたま」(信濃橋画廊、大阪)を最後の発表と宣言、以後、制作を断ち、「つくらない彫刻家」となる。主な展覧会に「現代美術の新世代展」 (東京国立近代美術館、1966)、第16回サンパウロ・ビエンナーレ(1981)、ヨコハマトリエンナーレ2014、「福岡道雄 つくらない彫刻家」(国立国際美術館、大阪、2017)などがある。

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