(左上から時計回りに)青柳菜摘 Photo by Shintaro Wada、MES(新井健、谷川果菜絵) Photo by Ayaka Endo、遠藤薫、荒井保洋、塚本麻莉 Photo by Kazuhito Tanaka、見留さやか Photo by Shingo Kanagawa
2025年4月23日、国立アートリサーチセンター(NCAR)は、日本の若手アーティストとキュレーターの国際的な活躍を目的とする育成プログラム「JUMP アーティスト+キュレーター国際協働プログラム」の育成対象者として、アーティストの青柳菜摘、MES(新井健、谷川果菜絵)、遠藤薫、およびキュレーターの見留さやか、塚本麻莉、荒井保洋の計6組7名を選出したと発表した。
JUMPの育成対象のキュレーターは公募で選出され、そのキュレーターと海外の美術館が協議し、アーティストを決定。対象者たちは一組となり、国際的な経験やネットワークを広げながら、それぞれCAM – グルベンキアン・モダンアートセンター(リスボン)、ロサンゼルス現代美術館、ニュー・サウス・ウェールズ州立美術館(シドニー)と協働し、2027年3月までに作品制作と展示を行なう。
CAM – グルベンキアン・モダンアートセンター ©CAM Fernando Canon Ambassador
CAM – グルベンキアン・モダンアートセンターと協働する青柳菜摘(1990年東京都生まれ)は、映像メディアを用いた同時代芸術のアーティストとして、フィールドワークやリサーチを元に、プロジェクトベースに主題を立て作品を発表している。プラクティショナーコレクティヴ「コ本や honkbooks」を主宰。詩集『そだつのをやめる』(thoasa、 2022)が第28回中原中也賞の受賞や、国立女性美術館日本委員会[NMWA Japan]第7回「Women to Watch」(2022)候補に選出されるなど、活動は多岐に渡る。近年の展覧会に、個展「亡船記」(十和田市現代美術館、2022)、「ICC アニュアル 2024 とても近い遠さ」(NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]、東京、2024)など。見留さやか(1986年東京都生まれ)は、十和田市現代美術館キュレーター(2016-2023)を経て、現在は山口情報芸術センター[YCAM]でキュレーターを務める。男性中心主義や近代的な価値観の下で捉えられてきたセクシュアリティやジェンダーに関する分類や分断の関係性を調査し研究している。方法論としては、キュレーションとエデュケーションを横断する仕組みに関心を持ち、地方の美術館やアート施設を軸に、特権的ではない美術館の在り方を模索している。これまで十和田市現代美術館で担当した主な展覧会に、「名和晃平 生成する表皮」(2022)、「百瀬文 口を寄せる」(2022–2023)、「劉建華 中空を注ぐ」(2023)などがある。
ロサンゼルス現代美術館 The Geffen Contemporary at MOCA, courtesy of The Museum of Contemporary Art, Los Angeles, photo by Elon Schoenholz
ロサンゼルス現代美術館と協働するMESは、新井健(1991年千葉県生まれ)、谷川果菜絵(1991年北海道生まれ)が、2015年から共同で制作をしているアーティストデュオ。クラブカルチャーと現代美術を行き来しながら、光や熱をとおして、世界の暗さを静かに、あるいは激しく照らすインスタレーションとパフォーマンスを行なう。近年の主な展覧会に、個展「祈り/戯れ/被虐的な、行為 P-L/R-A/E-Y」(CON、東京、2024)、「MYAF 2024: Super Spectrum Specification」(寺田倉庫G1ビル、東京)、個展「DISTANCE OF RESISTANCE/抵抗の距離」(gallery10[TOH]、東京、2021)、「Reborn Art Festival 2021夏」(旧つるの湯、宮城)など。塚本麻莉(1989年大阪府生まれ)は、2016年より高知県立美術館で学芸員を務める。作家との対話を重視しながら、会場毎の地域性や特性を生かしたキュレーションを行なう。2020年に高知ゆかりの作家を取り上げる個展シリーズ「ARTIST FOCUS」を立ち上げたほか(#1竹﨑和征、#2平川恒太、#4甫木元空の個展を担当)、2022年には「合田佐和子展 帰る途もつもりもない」展を企画した。高知県立美術館外の企画に、「竹﨑和征+西村有 続・並行小舟唄」(越後妻有里山現代美術館MonET、新潟、2023)、「原田裕規個展 やっぱり世の中で一ばんえらいのが人間のようでごいす」(日本ハワイ移民資料館、山口、2023)など。
ニュー・サウス・ウェールズ州立美術館 Aerial view of the Art Gallery of New South Wales’ Naala Badu building, 2023, photo © Iwan Baan
ニュー・サウス・ウェールズ州立美術館と協働する遠藤薫(1989年大阪府生まれ)は、沖縄や東北をはじめ国内外で、その地に根ざした工芸と歴史を基盤に、 生活と密接な関係にある社会的、政治的な関係性を紐解く。主に工芸技法を用いて「工芸」の拡張を試みる。その作品は、雑巾や落下傘、舟やその帆、ガラスや陶芸など、テーマによってさまざまな形を取る。近年、無意識の形に触れるべく、自身の夢から得た作品制作のアプローチがある。2013年に沖縄県立芸術大学工芸専攻染織科を卒業。2016年に志村ふくみ主宰アルスシムラを卒業した。近年の主な展覧会に「美術の中のかたちー手で見る造形 遠藤薫『眼と球』」(兵庫県立美術館、2023)、「Osaka Directory3 遠藤薫『重力と虹霓ー南波照間島について』」(中之島美術館、大阪、2023)、「国際芸術祭 あいち2022」(一ノ宮市豊島記念資料館、2022)など。荒井保洋(1986年福岡県生まれ)は、多摩美術大学芸術学科助手(2011-2015)を経て、現在は滋賀県立美術館で主任学芸員を務める。アーティストの制作に寄り添いながら、作品と空間の関係性が鑑賞体験に及ぼす影響を軸に置き、キュレトリアルな実践を行なっている。これまで滋賀県立美術館で担当した主な展覧会に、「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」(2023)、滋賀県立美術館リニューアルオープン記念展「Soft Territory かかわりのあわい」(2021)、「シガアートスポットプロジェクトVol.1-3」(2018-2020)などがある。
今後の活動内容や進捗については、NCARが運営するJUMPのウェブサイトおよびインスタグラムを通じて随時公開予定。
国立アートリサーチセンター:https://ncar.artmuseums.go.jp/