海にねむる龍 ―働正がのこしたもの @ 宇城市不知火美術館


 

海にねむる龍 ―働正がのこしたもの
2025年4月10日(木)-6月10日(火)
宇城市不知火美術館 展示室
https://www.museum-library-uki.jp/museum/
開館時間:9:00–18:00(土曜は21:00まで)入場は閉館30分前まで
会期中無休
企画:田中雅子(キュラトリアル・アドバイザー)
展覧会URL:https://www.museum-library-uki.jp/museum/project/2025/03/905/

 

熊本の宇城市不知火美術館では、福岡の戦後美術を語る上で欠かせない前衛美術集団「九州派」の理論的支柱となった働正の活動を、「九州派」のみならず、児童美術教育や晩年に回帰した絵画に至るまで、その足跡をたどる企画展「海にねむる龍 ―働正がのこしたもの」を開催する。

働正(1934-1996)は、熊本県宇土郡不知火町松合(現・宇城市不知火町)に生まれ、1960年代に「九州派」に参加した論客のひとり、既存の美術表現や制度に反発し、路上でのハプニングやインスタレーションなど、その場限りの表現を実践した美術家として知られる。同じく九州派のメンバーだった谷口利夫が福岡県大牟田市に1958年に開設した画塾「西部美術学園」を1965年に引き継ぎ、たんに技術を教えるだけではなく、自らの想像力によってイメージ生み出すことを伝えるなど、およそ30年にわたって児童美術教育に取り組んだ。1980年代から晩年にかけては絵画に取り組み、近代美術が重視したような、個の作家や作品のみに認められる「オリジナリティ」から解放された表現を試みた。主な展示に、個展(大牟田井筒屋、1973)、個展「毳つエッジ」(ギャラリーおいし、福岡、1986)、個展「毳つエッジ 87」(島田美術館ギャラリー、熊本、1987)、「九州派」展(福岡市美術館、1988)、個展「働正 83~ 93」(島田美術館ギャラリー、熊本、1994)など。1988年の「九州派」展には、シンポジウム「九州派を解剖する」のパネリストとしても参加している。1996年、62歳で死去。児童美術教育や絵画への回帰という、一見<九州派>の理念や活動とは相容れないように見える活動を通じて、集団と個人のはざまで、 美術の「中心」から遠く離れた「地方」における生活において、いかに芸術を成立させるのかという問題を問い続けた。

 


働正・谷口利夫によるハプニング 九州派展 新天会館 1963年 写真提供:谷口利夫


働正《作品No3》1980年 不知火美術館蔵

 

本展は、美術史においてあまり語られてこなかった「作品」の周縁に存在するものに目を向け、「前衛」や「九州派」という言葉の奥にある、働正の足跡をたどる。展覧会タイトルにもある『海にねむる龍』は、福岡・大牟田の大蛇山まつり、熊本・不知火に伝わる不知火伝説に着想を得て、西部美術学園で2年にわたって子どもたちと制作した版画創作絵本。本展では、美術館では初となる絵本『海にねむる龍』の版画や版木、西部美術学園で発行していた働正による手書きの機関紙『えのぐばこ』など貴重な資料を展示。また、作品制作の試行錯誤が読み取れるスケッチブックや絶筆とされている絵画作品などを公開する。

会期中、5月3日には、働が絵本製作や同人誌「反存在」の活動をしていたことにちなんで、文章や絵、写真など、さまざまなコンテンツを冊子で表現する「ZINE」を中心としたクリエイターマーケットを開催。ガリ版体験ワークショップや不知火竜燈太鼓も行なわれる。また、5月25日には「西部美術学園」主宰の働淳によるトークイベント「働正がのこしたもの」も開催予定。

 


働正《毳だつエッジNo5》1987年 不知火美術館蔵


働正《無題》1995年 西部美術学園蔵

 

関連イベント
担当学芸員によるギャラリートーク
2025年4月13日(日)、6月7日(土)14:00–14:30
会場:宇城市不知火美術館 展示室
定員:なし
参加費:無料(要展覧会チケット)
受付:当日参加

Uki ZINE Market
2025年5月3日(土)10:00–15:00
会場:宇城市不知火美術館・図書館 館前広場
定員:なし
受付:当日参加

ガリ版体験ワークショップ
2025年5月3日(土)10:00–15:00随時受付(12:00-13:00は休止)
講師:後藤早智子(後藤ガリ版印刷所)
会場:宇城市不知火美術館・図書館 館前広場「Uki ZINE Market」内
定員:なし
対象:5歳以上(未就学児は保護者同伴)
参加費:1,000円+印刷する素材代
受付:当日参加

不知火竜燈太鼓
2025年5月3日(土)12:00–12:30
会場:宇城市不知火美術館・図書館 館前広場「Uki ZINE Market」内
定員:なし
参加費:無料
受付:当日参加

トークイベント「働正がのこしたもの」
2025年5月25日(日)14:00–15:00
登壇者:働淳(「西部美術学園」主宰)
会場:宇城市不知火美術館・図書館 ブック&カフェエリア
定員:20名
参加費:無料(要展覧会チケット)
受付:4/1(火)より不知火美術館・図書館カウンターまたは電話にて

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