Abraham Cruzvillegas(アブラハム・クルズヴィエイガス)「Autodestrucción5: Netsukumogamishungaseppuku」展

ラットホールギャラリーでは2014年7月4日(金)から9月14日(日)まで、メキシコ人アーティスト、アブラハム・クルズヴィエイガスの個展を開催いたします。作家がギャラリーで滞在制作を行ない、新作を発表する本展は、日本で初めてクルズヴィエイガスの作品を目にすることができる機会となります。


Abraham Cruzvillegas
Selfportrait as a sparkling frontierman, embracing the portrait of Gilberto Bosques, listening to pirekuas and gulping down esquites outside of the cathedral
2014
© Abraham Cruzvillegas Courtesy of the artist

1968年メキシコシティに生まれ、現在も同地を拠点に活動するアブラハム・クルズヴィエイガスは、80年代後半から90年代にかけてメキシコシティで起こった、コンセプチュアル・
アートの潮流の中心的作家として注目を集め、経済・社会・政治・歴史といった諸条件における、アイデンティティや自己構築の問題を問う作品でよく知られています。クルズヴィエイガスは、廃材や屑鉄、再生プラスチックや動物の排泄物といったファウンドオブジェを用い、小さな自律した立体作品から大型の建築的インスタレーションまで、幅広い作品を制作しています。ファウンドオブジェは、彼の手によってそのテクスチュアや形が大きく変化させられ、特定の場所や時間、そして特定のコンテクストがもつ意味や解釈にズレを発生させる、ダイナミックなアッサンブラージュへと姿を変えます。

故郷メキシコシティや幼少期を過ごしたセルフ・ビルドの家に見られる、即興的な手仕事にルーツをもつ彼は、労働経済や生産形式、工業製品と手工業品の対立に関する思考を、作品を通じて探究しています。ゆえに彼の制作プロセスでは、制作している場所や即興といった要素が大きな核を占めています。滞在制作による本展では、根付や春画、そして生け花といった日本の伝統美術を参照し、「アレンジメント」という概念のもと、小さなファウンドオブジェからなるハンギング・スカルプチュアが発表される予定です。

クルズヴィエイガスは、メキシコ国立自治大学でガブリエル・オロスコのもと美術と哲学を学び、これまで世界各地で個展を開催しています。主な個展には、ウォーカー・アート・センタ―からハウス・デア・クンストへと巡回したAbraham Cruzvillegas: The Autoconstrucción Suites(2013-14)、また本年10月からはユメックス財団(メキシコシティ)での展覧会が予定されています。このほか、ドクメンタ13や光州ビエンナーレ(2012)、ヴェネチア・ビエンナーレ(2003)など、国際展にも数多く出品しています。


Abraham Cruzvillegas
Autodestrucción 4: Demolicion
Installation view
© Abraham Cruzvillegas Courtesy of Thomas Dane Gallery, London


Abraham Cruzvillegas
Autodestrucción 4: Demolicion One More Time
2014
© Abraham Cruzvillegas Courtesy of Thomas Dane Gallery, London




2014年7月4日

ヴィクトリア・モートン 「Mouth Wave」展

ラットホールギャラリーでは2014年2月14日(金)より5月25日(日)まで、グラスゴー(スコットランド)を拠点に活動する作家、ヴィクトリア・モートンの個展を開催いたします。大型の新作ペインティングとアッサンブラージュの立体作品で構成される本展は、日本で初めて彼女の作品を目にすることができる機会となります。


Victoria Morton
Mouth Wave (2014)
Oil on canvas
200 x 210 x 4 cm (78.7 x 82.7 x 1.6 in)
© Victoria Morton Courtesy of the Modern Institute, Glasgow

1971年、グラスゴー生まれのヴィクトリア・モートンは、絵画というジャンルにおける視覚的・空間的な可能性の拡張、そして観者に及ぼす心理的作用のあり方を探究し続けている作家です。彼女のペインティングは、その緻密な細部や厚みのある筆触、水彩画のような油彩の扱い方から、抽象絵画でありながら、歴史や音楽、日常生活などが反映されて描かれたキャンバスには、身体などの具象的な要素を見てとることができます。鮮やかで繊細な輝きを放つ色彩のレイヤーと、運動・反復・断片化といった方法とを組み合わせる彼女のペインティングは、心理や感情を隠喩的に観者の中に呼び起こします。

立体作品では、例えば楽器、衣服、梯子であれば、「鳴らす」「着る」「上る」というように、パフォーマンスの次元を喚起するオブジェが用いられる点に特徴があります。異なるオブジェが絡まり合ったアッサンブラージュは、個々のオブジェ同士がある連続性をもつものとして捉えられており、オブジェの複雑な絡まりが観者の視線のなかで統合されることを求める点では、ある種のリアリズムがそこで創出されていると言えます。

「複雑なイメージを生み出したり崩したりといった、精神的なエクササイズへの欲求に加えて、身体的な衝動が私を制作へと駆り立てている」とモートンは言います。制作過程における作品の変化に加えて、制作時における行きつ戻りつの時間感覚までもが織り込まれた彼女の作品からは、私たちの日々の生活の中で現れては消えてゆく、心理や意識・無意識的な振舞いが示唆されているのです。

ヴィクトリア・モートンは世界各地で展覧会を開催するほか、パフォーマンス集団Elizabeth Goの一員としての共同制作や、バンドMuscles of Joyで実験音楽の演奏なども行なっています。Glasgow School of Artで1993年に絵画文学士号、1995年には修士号を取得し、現在はグラスゴーとフォッソンブローネ(イタリア)で制作を行なっています。


Victoria Morton
Title tbc (2014)
Oil on canvas
220.5 x 240.5 x 4 cm (86.8 x 94.7 x 1.6 in)
© Victoria Morton Courtesy of the Modern Institute, Glasgow


Victoria Morton
Swinging Sleeves For An Unmarried Woman (2011)
Mixed media
147 x 70 x 64 cm (57.9 x 27.6 x 25.2 in)
© Victoria Morton Courtesy of the Modern Institute, Glasgow

2014年2月5日

荒木経惟展 「人妻ノ写真」

ラットホールギャラリーでは2013年11月8日(金)より2014年1月19日(日)まで、荒木経惟展「人妻ノ写真」を開催いたします。本展では、荒木が15年にわたって撮影してきた「人妻」のモノクロ写真作品約700点を展示いたします。


Nobuyoshi Araki Hitozuma no Shashin series
B&W Print, Acrylic marker
13 x 18 cm
2013

荒木経惟のライフワークとして知られる「人妻エロス」は、『週刊大衆』(双葉社)の連載企画として1998年に開始され、誌面を見て応募してきた人妻たちの赤裸々な姿が荒木によって撮り下ろされています。連載開始から15年、荒木が撮影してきた数百人もの人妻たちのカラー写真はこれまで、連載のほか写真集等でも発表されてきましたが、本展では、荒木がそれらのカラー写真と並行して撮影してきた、未発表の日付入り写真が初めて発表されます。荒木の展覧会としても、「人妻」の写真のみで構成された展覧会は、今回が初めての機会となります。

壁面にグリッド状に展開される約700点のキャビネ判写真は、35mm判カメラで撮影されており、連載「人妻エロス」の写真とはひと味異なり、被写体である人妻との親密な関係がより豊かに写し出されています。またそれぞれの写真には、7色のカラーマーカーで荒木自身の手によってペインティングがほどこされており、かつてない「人妻」の写真作品となっています。このほか、中判カメラで撮影された新作プリント約20点もあわせて展示いたします。

「彼女たち(人妻)自身がアートだ」と話す荒木の作品には、「撮る/撮られる」という撮影行為のなか、人妻たちの夫には見せることのない表情やひとりの女性としての魅力が引き出されており、見る者を人妻の世界へと誘うとともに、女性として生きることの意味を問いただしてもいます。

展覧会にあわせて、ラットホールギャラリーより写真集『人妻ノ写真』を刊行いたします。

荒木経惟写真集 『人妻ノ写真』
2013年11月8日発売 160頁 限定500部 価格未定
発行:RAT HOLE GALLERY


Nobuyoshi Araki Hitozuma no Shashin series
B&W Print, Acrylic marker
13 x 18 cm


Nobuyoshi Araki Hitozuma no Shashin series
B&W Print, Acrylic marker
13 x 18 cm

2013年10月13日

【翻訳:自動 原文:日】

Gardar Eide Einarsson展 会期延長のお知らせ

Gardar Eide Einarsson展に多くの方にご来場いただきまして誠にありがとう御座います。
つきましては、会期を10月20日(日)まで延長させていただきます。(なお、18日は都合により休廊の可能性が御座います。)
これまで都合のつかなかった方も、この機会に是非足をお運び下さい。
お待ちしております。


2013年10月6日

Gardar Eide Einarsson  「I Am The Only Free Man On This Train」

ラットホールギャラリーでは2013年8月2日より10月6日まで、ガーダー・アイダ・アイナーソンの個展を開催いたします。本展では、新作のペインティング、シルクスクリーン作品、立体作品が発表されます。当ギャラリーでは、オスカー・トゥアゾンとの二人展(2010年)に参加していますが、今回は初めてのアイナーソンの個展となります。


Gardar Eide Einarsson
Fluorescent Pink III (2012)
Acrylic on canvas
213 x 183 cm (83.9 x 72.0 in.)
© Gardar Eide Einarsson Courtesy of the artist

ガーダー・アイダ・アイナーソンは、1976年ノルウェー生まれ、ニューヨークと東京を拠点に活動する作家です。ペインティング、立体、コラージュ、写真、インスタレーションと様々な作品形式を展開するアイナーソンは、現代の社会・政治・経済の権力構造に見られる、権力/反権力の一筋縄ではいかない関係性を浮かび上がらせる作品で知られています。

アイナーソンは、政治、ポップカルチャー、サブカルチャーなどの幅広い領域から、そこで機能している記号やシンボルを作品に用います。作品に取り込まれた記号やシンボルは、極端に拡大されたり、一部分のみ切り取られたり、控え目に用いられたりすることで本来の意味を失い、実体をもたない空虚なものへと脱構築されています。彼の作品には、権力/反権力いずれに対しても思考を促す仕掛けが幾重にも埋め込まれております。また彼の作品は、レディ・メイドやポップアート、コンセプチュアル・アートといった1960〜70年代の美術動向を参照するにとどまらず、徹底したモノクロームの使用を通じて、ミニマリズムや構成主義における絵画作品のボキャブラリーとも交差するものとなっています。

本展では、Fluorescent Pinkシリーズからのモノクローム・ペインティングが発表されます。シリーズ名でもある蛍光ピンクのアクリル絵具がカンヴァスを占めるこれらの作品は、モノクローム・ペインティングのハイ・モダニズムへの徹底をより推し進めるものとなっている一方で、彼のこれまでの作品同様、権力構造への示唆が多分に埋め込まれている点においては、モノクロームの新たな可能性を切り開くものとなってもいます。

このほか、アメリカの刑務所の独房内に設置されている、懸垂用の棒を連想させる鉄製の立体作品や、郵便切手をモチーフにしたシルクスクリーン作品が発表されます。これらの作品の核には、9・11以後のアメリカに顕著な管理社会下における、権力/反権力の闘争への示唆、そして本展のタイトルが映画「ドクトル・ジバゴ」(1965)でクラウス・キンスキー演じるアナーキストのセリフから引用されていることからも窺えるように、アウトロー像の神話や歴史への意識が強く込められています。

アイナーソンの作品は近年、ベルゲン美術館での個展や、オスロ、レイキャヴィク、ストックホルム、カッセルへと巡回した展覧会Power Has a Fragranceで注目を集めるほか、シドニー・ビエンナーレ(2010年)、ホイットニー・ビエンナーレ(2008年)、イスタンブール・ビエンナーレ(2005年)などにも出品されています。

また本展にあわせて、Stainless Steel (Fine)とFluorescent Pinkのペインティング・シリーズを収録したモノグラフを刊行いたします。

作品イメージ


Gardar Eide Einarsson
He’s Doing His Job, Let’s Do Ours (2012)
Acrylic on canvas
Diptych: 2 paintings, 220 x 183 x 3.2 cm (86.6 x 72.0 x 1.3 in.) each
© Gardar Eide Einarsson Courtesy of the artist


Gardar Eide Einarsson
The Mess (2010)
Acrylic on canvas
220 x 183 cm (86.6 x 72.0 in.)
© Gardar Eide Einarsson Courtesy of the artist


Gardar Eide Einarsson and Oscar Tuazon
Sex Booze Weed Speed
Installation view
Rat Hole Gallery, 2010
2013年7月10日

Glenn Ligon 「Glenn Ligon」

ラットホールギャラリーでは2013年3月29日より6月30日まで、ニューヨークに拠点を置くアーティスト、グレン・ライゴンの個展を開催いたします。新作のペインティングやネオン作品、ドローイングで構成される本展は、日本ではじめてライゴンの作品を目にすることができる機会となります。


Glenn Ligon
Double America (2012)
neon and paint
91.4 x 304.8 cm (36 x 120 in.)
© Glenn Ligon Courtesy of the artist

1960年、ニューヨーク・ブロンクス生まれのグレン・ライゴンは、ペインティング、ネオン、シルクスクリーン、写真、インスタレーション、ビデオといった、多岐にわたるメディウムを用いて制作しています。なかでも、代表作として最も知られている作品は、1980年代後半から制作され始めた、テキストを用いた抽象画のシリーズです。ステンシルを用い、黒のオイルスティックで文字が繰り返し描かれたそれらの作品は、過剰なまでの厚塗りで画面が隆起し、何層ものレイヤーが重なることでカンヴァス上の文字はほぼ判読不能な状態となっています。
人種やセクシュアリティ、アイデンティティを問う面がしばしば強調されがちなライゴンの作品ですが、一方で、従来のモダニズム絵画やコンセプチュアル・アートの潮流に基礎をおきつつ、批評性をもって制作されています。また、アメリカ文学から絵本、そして奴隷体験記に至るまで、幅広いソースから引用されたテキストやイメージを用い、アメリカの歴史や文化に対する鋭い考察をもたらしてもいます。

本展では、Strangerシリーズのテキスト・ペインティングと、ガートルード・スタインの小説「3つの女Three Lives」(1909)から引用されたフレーズ「negro sunshine」を、オイルスティックと粉炭で繰り返し描いたドローイングを展示します。
Strangerシリーズは、一人のアフリカン・アメリカンとしてスイスの小村を訪れた時の経験を綴った、ジェームズ・ボールドウィンのエッセイStranger in the Village (1953)を引用した作品です。粉炭が塗り込められたその作品は、カンヴァスに独特のテクスチャーと照りをもたらすだけでなく、粉炭が石炭加工時に余剰として出る産業廃棄物でありながら、マテリアルとして黒光りする粉炭の美しさとのコントラストを浮き上がらせてもいます。
ライゴンのペインティングやドローイングでは、モノクローム、ステンシル、テキストの反復といった形式的な面と、テキストそれ自体が保有する感情的な面との間で対話が生み出され、引用されたテキストは抽象的なコンポジションへと変容させられています。また、言葉の影響力やひとつの言葉が世代間で異なる意味を持つことへの興味、そして文化・歴史と切り離せない自己やアイデンティティといった概念を変化させることに対する作家の関心が、それらの作品には如実に現れています。

本展ではまた、2つのネオン作品、Double America (2012)と、今回が初めての発表となるUntitled (Orpheus and Eurydice) (2013)を展示します。2005年からライゴンは、歴史的なテキストを引用したネオン作品を制作しています。文字の前面が黒く塗られているために、ネオンの光は鑑賞者側にではなく背面の壁へと柔らかく広がるように作られています。ネオンが作り出す黒と白の対比は、人種・社会・政治的問題の複雑さへの隠喩であるとともに、光と影、見えるものと見えないもの、生と死、といった相反する概念への思考をもたらすものでもあります。

ライゴンの作品はこれまで、ホイットニー・ビエンナーレ(1991、1993)、ヴェネチア・ビエンナーレ(1997)、ドクメンタ11(2002年)で展示され、2011年には回顧展「Glenn Ligon: America」がホイットニー美術館で開催され、その後、各地へ巡回するなど、個展も数多く開催されています。また近年では、オバマ大統領のセレクトにより、ホワイトハウスへの貸出が決まるなど、華々しく活躍している作家です。


Glenn Ligon
Study for Negro Sunshine #52 (2010)
oilstick, coal dust, and gesso on paper
30.5 x 22.9 cm (12 x 9 in.)
© Glenn Ligon Courtesy of the artist
2013年2月28日

Monica Bonvicini 「Off the Grid」

ラットホールギャラリーでは2012年11月2日より2013年2月3日まで、ベルリンを拠点に制作するイタリア人アーティスト、モニカ・ボンヴィチーニの、立体作品とドローイングによる展覧会を開催いたします。


Monica Bonvicini
Straps and Mirror, 2010
Installation view: Galerie Max Hetzler, Berlin, Monica Bonvicini Bet Your Sweet Life, 2010
Courtesy of the artist © Monica Bonvicini, VG Bild-Kunst, Bonn

 1965年ヴェネツィア生まれのモニカ・ボンヴィチーニは、慣習や社会的なコノテーションに注目し、空間や権力、そしてジェンダーの関係を探究する作家です。その作品形態も、立体、インスタレーション、写真やビデオ、紙作品、と様々なかたちで展開されています。鉄やガラスといった伝統的に「雄々しい」とされる、モダニズム建築を参照した工業材を作品に用い、それらを革、鎖、ゴムといった性的フェティシズムを想起させるものと結びつけることで、ボンヴィチーニは私たちを取り囲む建築がもつ力構造や性的誘惑と対峙しています。一方で、彼女の作品は労働、性、政治、社会表象の間に築かれている関係を暴くものでもあります。

 本展では、立体作品で構成されるサイトスペシフィックなインスタレーション《Straps and Mirror》をメインスペースで展示します。SMカルチャーを暗示する皮ヒモやハーネスで吊るされた鉄製の足場に、巨大なガラスミラーが固定された本作は、男性中心的な建築史への批判に加え、物理的空間と社会的空間の相互関係への考察、そしてモダニズム建築における機能と美学の関係を脱構築するものでもあります。鏡が作り出す空間に置かれた作品がもつ攻撃的な存在感、そして工業材の使用は、建築物や建築空間が決して中立的なものではなく、イデオロギーやセクシュアリティに満ちていることに気づかせてくれます。同時に、ミニマリズム彫刻に対するひとつの註釈としても彼女の作品は提示されています。

 本展ではまた、「RUN」や「RAGE」といった単語、そして彼女の作品でしばしば目にするヒモや鉄鎖に似たパターンが描かれた《Off the Grid》シリーズの中から、黒のテンペラで描かれたドローイングを展示します。ドローイングは彼女にとって、主題に取り組むプロセスで獲得した気づきを、個人的かつ直接的なかたちで表現しうる手段として捉えられています。

 また、黒革でぴたりとくるまれた工具が台座に乗せられた立体作品《Leather Tools》や、ラジオペンチの形をした刺繍が赤い糸で紙に縫い付けられた作品《NeedleKnows》も展示される予定です。ラジオペンチはフロイト的な象徴作用を参照するものとして、そしてボンヴィチーニがシンボルとして多用する針は、ファルス(男根)的なオブジェとして捉えられています。

 モニカ・ボンヴィチーニの作品はこれまで、個展やグループ展として世界各地で展示されています。ヴェネツィア・ビエンナーレ金獅子賞(1999)やドイツのPreis der Nationalgalerie für Junge Kunst(2005)を受賞し、2012年には巨大な野外彫刻《RUN》が、ロンドン・オリンピックのコミッションワークとして、オリンピック・パークに恒久的に展示されています。今回のラットホールギャラリーでの個展は、日本ではじめてボンヴィチーニの作品に触れることができる機会となります。


Monica Bonvicini
NeedleKnows, 2012
Embroideries on paper
21.7 x 28 cm (23 x 29.7 cm framed)
Courtesy of the artist © Monica Bonvicini, VG Bild-Kunst, Bonn


Monica Bonvicini
Leather Tool (’point end’ hammer), 2009
hammer covered in black leather, black leather string
2 x 27.5 x 12 cm + pedestal
Courtesy of the artist © Monica Bonvicini, VG Bild-Kunst, Bonn


Monica Bonvicini
Off the Grid (Untitled), 2012
black tempera on paper,
271 x 380 cm
Courtesy of the artist © Monica Bonvicini, VG Bild-Kunst, Bonn

2012年10月29日

荒木経惟 「センチメンタルな空」展

ラットホールギャラリーは2012年8月24日(金)より10月7日(日)まで、 荒木経惟展「センチメンタルな空」を開催いたします。本展では、3000枚の空の写真で構成された映像作品「三千空(さんぜんくう)」の上映に加え、自宅のバルコニーを30年近くにわたって記録した「愛のバルコニー」シリーズからの写真作品を展示いたします。
 


1990年に愛妻ヨーコが亡くなって以降、空の写真を撮影することが日課となった荒木にとって、空とは自分の心を映す鏡でもあります。空の表情の変化は、淡々と過ぎてゆく日常、そして人生の似姿でもある、私的なものだ、と荒木は話します。荒木にとって写真そのものが私小説であるように、空の写真は他の誰のものでもない「自分の空」、つまり「私空(しくう)」なのです。

映像作品「三千空」では、自宅バルコニーから撮影された3000枚の空がモンタージュされ、4時間にわたって大型スクリーンに投影されます。雲一つない青空、絡み合う飛行機雲、
暮れゆく夕空など、表情豊かな空が観る者を包み込み、電柱や電線、家々の屋根、木々もまた、荒木の「空」から切り離せない存在として表情の一部をなしています。また、ノスタルジー漂う空は、ヨーコや愛猫チロの遺影とも言えるでしょう。

このほかに、さまざまな愛を刻んできた自宅バルコニーを1983年から2011年まで記録した「愛のバルコニー」の写真作品を約20点、そしてヨーコを描いたシルクスクリーン作品を3点、展示いたします。

これまでも数々の作品に登場し、荒木にとって特別な場所であったバルコニーのある自宅を、昨年去ることになりました。ヨーコとの最後の日々を記録した写真集『センチメンタルな旅 冬の旅』(1991年)、そしてチロとの別れを綴った写真集『センチメンタルな旅 春の旅』(2010年)に続いて、本展「センチメンタルな空」でもまた、ひとつの愛の物語の幕が描かれています。





展覧会に合わせまして、ラットホールギャラリーより写真集『センチメンタルな空』を刊行いたします。

荒木経惟写真集 『センチメンタルな空』  
2012年8月24日発売                                                      
170頁 4,725円(税込)予定 
発行: RAT HOLE GALLERY
2012年7月24日

Elad Lassry 「Elad Lassry」

ラットホールギャラリーでは、2012年5月26日より7月29日まで、エラッド・ラスリーの新作による展覧会を開催いたします。写真、16mmフィルム、立体によるインスタレーションが展開される本展は、ラスリーの日本初の展覧会です。


エラッド・ラスリーは1977年、テルアビブに生まれ、ロサンジェルスを拠点に活動している作家です。彼の写真作品やフィルム作品は、広告写真のように魅力的でありながら、どこか離隔した印象を与えます。彼自身の歴史やフォーマリズムに対する問題意識のもと、現代の視覚文化における「イメージ」の在り方に対する問いと探究が試みられています。

写真作品は、人物や動物、日常的なオブジェなどをモチーフとし、けばけばしい色の地を背景にすることにより、モチーフが本来のコンテクストから引き離されています。また、どの写真作品も一般的な雑誌サイズに限定して制作されており、フレームはすべて、各作品の鮮やかな基調色に塗り覆われ、写真イメージと一体化しています。広告やヴィンテージ雑誌、絵本、映画のスチル写真といったものを基に、画面構成や色の選択が厳密にコントロールされて制作された写真作品は、既製のイメージを用いたコラージュとも、アナログとデジタルの間を戯れる新たなステージド・フォトとも、フレームと一体となってオブジェ化したイメージとも受け取ることができます。ラスリー自身が「苛立たしい映像nervous pictures」と名指すこれらの作品は、「知覚を狂わせ、視覚情報を受け取る際の、あるいは世界を知るうえでの、安定をどこか揺るがすもの」です。派手な色彩、あるいは多重露光やぶれによってその揺らぎは増幅され、見る者の視線は決して落ち着くことができません。ラスリーは、これらの作品が、そのイメージ性あるいは物性、はたまたその両方の、いずこにあるのかという問題を提起し、映像を経験する際の物質/非物質性について問うています。

イメージと物の関係や、ある文化的な参照項を持つイメージの受容に対する関心は、フィルム作品や立体作品にも見ることができます。本展に出品される16mmフィルム作品Untitled (Passacaglia)は、革新的なコレオグラファーであるドリス・ハンフリーのコレオグラフィーPassacaglia(1938)に基づいたテレビ・ドキュメンタリーに想を得ています。このドキュメンタリーは、ロベール・ドローネーのペインティングTall Portuguese Women(1916)が掛けられた壁面の前で踊るニューヨーク・シティ・バレエ団を撮影したものですが、ラスリーの作品は、コレオグラフィーや舞台、脚本へ言及しているわけではありません。構成主義映画を想起させるカメラのアングルや動き、抽象とも具象ともつかない曖昧さ、平面と奥行きの間を行き来する画面、これらはすべて「見る」という行為自体に対する問いを提起しています。

ラスリーはまた、本展の立体作品のひとつとして、フレームを示唆する、木製のベッドを模した作品を制作しています。ベッドと呼ぶには小さいその作品は、4つの十字架の飾りを持ち、緑色の塗料に覆われています。機能性や象徴性、あるいは絵画性にも還元しきれないこの作品もまた、写真作品やフィルム作品と同様に、作品の在処を問うものです。

イメージと物との間の緊張関係を生み出すことでジャンルを超えた問いを立ち上げるラスリーの作品は、クンストハレ・チューリッヒやホイットニー美術館での個展や、昨年では第54回ヴェネチアビエンナーレなどで、国際的に注目を集めています。

2012年5月26日

JACK GOLDSTEIN "Jack Goldstein"展

ラットホールギャラリーでは2012年1月25日より3月25日まで、ジャック・ゴールドスタイン(1945-2003)の展覧会を開催いたします。

1970年代後期から80年代初期にかけてのゴールドスタインのパフォーマンス、フィルム作品、ペインティング、音響作品は、ポストモダニズム美術の初期段階を決定づける役割を果たしました。シェリー・レヴィン、ロバート・ロンゴ、リチャード・プリンスら、表象批判に主眼を置く美術へとパラダイムシフトをもたらした「ピクチャー・ジェネレーションPicture Generation」の一人として、彼の作品はいまだ多くのアーティストに多大な影響を与えています。本展は、ジャック・ゴールドスタインの作品を日本で目にするはじめての機会となります。

ジャック・ゴールドスタインは1945年にカナダ・モントリオールに生まれ、カリフォルニア芸術大学でジョン・バルデッサリのもとで学びました。ゴールドスタインは、キャリア初期にミニマリズム彫刻をいくつか制作した後まもなく、パフォーマンスやフィルムへと作品形態を移行します。

1973年からは、ロサンゼルスに住んでいたこともあり、映画などの娯楽産業やコマーシャルフィルムのプロの技術者や特殊効果を利用して、カラーフィルム作品を制作し始めました。アートフィルムというよりも時にコマーシャルフィルムに近いイメージの表象構造や鑑賞者の立ち位置を突き崩すようなそのスペクタクル性は、けばけばしい色彩とあいまって、メディアや観客に多くの問いを投げかけており、ポップカルチャーやハリウッド・イメージへの作家の強い関心を読み取ることもできます。

今回展示される作品のなかでも、赤く塗装された壁面に投影される26秒ループのフィルム作品、The Jump(1978)は昨年のヴェネチア・ヴィエンナーレの企画展で上映されるなど、近年最も知られた作品です。レニ・リーフェンシュタールのオリンピックドキュメンタリーを基にして制作された本作は、アニメーション技術に由来するロトスコープで撮影され、ほぼ光だけで構成されており、イメージから参照項を取り去る顕著な例となっています。

1976年には、商業アーカイブに音源をもつ、Burning ForestやTwo Wrestling Catsと題した、強烈な映像を想起させる色付きビニール・レコード作品を発表しました。フィルム作品よりはるかに抽象性を増したこれら音響作品は、再生できない状態で壁面展示される「イメージ」としても企図されています。「レコード、それはイメージとして音を出す。だから私はそれらを映像picturesとして見るのです」と作家自らが言うように、ゴールドスタインはサウンド・メディアそしてビジュアル・メディアの両面においてレコード作品を捉えています。

彼の作品の中核である、1970年代につくられたフィルム作品とレコード作品は、同時代のポスト・コンセプチュアルアートの最たるものとして捉えることができます。本展では、ジャック・ゴールドスタインのレコード作品の展示と、The Jump、MGM、Some Butterfliesを含む、16mmショートフィルム10作品を上映いたします。


2012年2月15日

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