ドイツ銀行グループ「アーティスト・オブ・ザ・イヤー2015」


Koki Tanaka Precarious Tasks #9 – 24hrs Gathering (2014) Collective acts, 24 hours event, Commissioned by Institute of Contemporary Arts, London, Courtesy of the artist, Vitamin Creative Space, Guangzhou and Aoyama Meguro, Tokyo

2014年7月5日、ドイツ銀行グループは「アーティスト・オブ・ザ・イヤー 2015」に田中功起を選出した。ホウ・ハンルゥ、オクウィ・エンヴェゾー、ウド・キッテルマン、ヴィクトリア・ノーソーンからなるドイツ銀行国際美術諮問委員会により、現在の美的および政治的な試みにおける重要な問題のひとつである「共同体の形成」に対する独創的なアプローチが評価された。今回の受賞により、来年、ベルリンのドイツ銀行クンストハレにて田中の個展が開催される。

田中功起は1975年栃木県生まれ。現在はロサンゼルスを拠点に活動する。日常のシンプルな行為に潜在する文脈を、映像やパフォーマンスを通じて、視覚化、分節化する実践を試みている。昨年の第55回ヴェネツィア・ビエンナーレでは、経験の共有をテーマとした「コレクティブ・アクト」を中心とした展示を日本館で発表し、特別表彰を受けている。同国際展以降も、『映画をめぐる美術——マルセル・ブロータースから始める』(京都国立近代美術館、東京国立近代美術館)やフリーズ・ニューヨークのプロジェクツのほか、ロンドンの現代美術センター(ICA)で開催中の企画展『Journal』、ファン・アッベ市立美術館(アイントホーフェン)で開催中の企画展『Positions-Five projects in dialogue』への参加と活動の幅を広げている。また、ArtReview Asiaへのインタビュー掲載時にテキストを用いた「インポッシブル・プロジェクト」を誌上およびインターネット上で展開するなど、従来の物理的な展示空間に限定されない活動も積極的に行なっている。

田中はART iTの取材に対し、次のようなコメントを寄せている。

ぼくの活動はいつも小さく、それほど大きな結果を残してきたとは言えません。でもそうした地道な活動でも、どこかで見てくれている人がいるということを、この賞は証明しています。この賞はどこか静かな場所で議論され、ノミネートされた本人たちに知らされることなく決定されました。ここ数年の活動を通して、ぼくはやっと何かの確信を得つつあります。そのひとつは、ごく当たり前なことですが、活動をつづけるということです。ぼくはスロースターターですが、それでもゆっくりと何かがめぐってくるものです。もちろんそれはそれぞれ別のあり方でそれぞれの人びとに訪れるものだろうけど。あなたの活動も、きっとだれかが見ているはず。とにかくぼくらはくさらずにやっていきましょう。

同賞は2010年に創設され、これまでにワンゲチ・ムトゥ(ケニア)、イト・バラダ(フランス/モロッコ)、ローマン・オンダック(スロバキア)、イムラン・クレシ(パキスタン)、ヴィクトル・マン(ルーマニア)が受賞している。

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