ドクメンタ13 開催


大竹伸朗 「モンシェリー」 写真 ARTiT

2012年6月9日より9月16日までドイツ、カッセルにてドクメンタ13が開催される。1955年に開始された大型国際現代美術展ドクメンタは、5年に1度行われ、今回で13回目。過去のドクメンタと同じく会期は100日間である。

アーティスティックディレクターは、2008年に行われた第16回シドニー・ビエンナーレのアーティティックディレクターを務め、トリノにあるカステロ・デ・リボリ現代美術館のキュレーターの任にあったアメリカとイタリアの二重国籍を持つキュレーターおよびライターのキャロライン・クリストフ=バガルギエフ。

開催に先立つ6月6日に行われた記者会見で、クリストフ=バガルギエフは「テーマは特にない」としながらも、ドクメンタが持つ展覧会としてのアイデンティティを理解していると述べた。つまり、今回のドクメンタもヴェネツィア・ビエンナーレなど戦前からある植民地主義的な部分を併せ持つ万国博覧会のようなイベントを起源として持たず、戦後、第二次世界大戦のトラウマから前衛芸術の復興を図った展覧会という位置づけに沿った展覧会であるとした。
一方、今回独自の点として、芸術に限らず、古今を問わず存在する知識とそれに関する現在の研究における国際的な関係と政治が強く結びついている分野を取り上げていること、また経済成長に対する強い信頼に懐疑的な、全体的かつロゴス中心主義ではない視点を持っていることを挙げた。

今回のドクメンタは、複数の場所と時間が同時存在する中に位置し、アーティストや思想家が置かれた現在の状況に合う4つの主要な見解を通して表現される。プロジェクトが精神的および現実的な空間の中で作用するよう「ステージ上」「包囲されている状態」「希望を持った状態」「撤退、退却」の4つの条件が与えられた。そしてそれらはカッセル、カブール、アレクサンドリア/カイロ、バンフの4カ所と連動し現実の空間と時間を共有する。

複数の参加アーティストから聞くところによれば、ドクメンタへの参加が決まり、カッセルを訪問した際に、クリストフ=バガルギエフによりカッセル郊外にある町、グックスハーゲンのブライテナウ地区にあるブライテナウ追憶の地に連れていかれたとのこと(ジェローム・ベル インタビュー参照)。この場所はかつてベネディクト修道会の修道院があった場所であり、第二次世界大戦中は強制収容所として使われ、現在は精神病院としても使用されている場所である。そうしたカッセル市、ひいてはドイツおよびヨーロッパが抱える過去の負の記憶を浮き上がらせるプロジェクトも多い。中心となるフリデリチアヌム美術館の展示ではリー・ミラー、モランディを始めとする物故作家や、アジアやアフリカのオブジェなど人類学や歴史資料が多く展示されている。
またパフォーマンス作品も多く、ジェローム・ベル、ティノ・セーガルなどの他、ヤン・ヘギュもオープニングに合わせてパフォーマンス作品をプロデュースした。
日本からの唯一の参加アーティストである大竹伸朗は、カールスアウエ公園内で「モンシェリー」と題したインスタレーション作品を発表している。カールスアウエ公園には、他にもピエール・ユイグ、ローズマリー・トロッケル、テア・ジョルジャッチェ、アンリ・サラなど複数のアーティストが新作を発表している。

ドクメンタ13
2012年6月9日–9月16日
カッセル
d13.documenta.de

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