2015年1月30日、京都国際現代芸術祭組織委員会事務局は、開幕まで1ヶ月を切った「PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015」の第四回記者会見を京都府京都文化博物館 別館 講義室で開催した。アーティスティックディレクターの河本信治が、新たに10組の参加アーティストを発表するとともに、展示内容の一部を明らかにした。
京都を舞台にした初の大規模な現代芸術の国際展として開催されるPARASOPHIAの主会場のひとつとなる京都市美術館は、参加アーティストの大半が展示を行なう予定で、1階の大陳列室に蔡國強が京都の竹を使用して中国・長安の仏舎利塔を模した高さ15メートルに及ぶ構築物を設置、そこに子どもたちがつくった大量のオブジェが飾られる。同館には、PARASOPHIAの作家関連の書籍などを取り揃えたブックショップ「SOPHIA BOOKSTORE by Books OGAKI」、PARASOPHIA以外のプログラムにも使用可能な申込制のオープンスペース「Parasophia Classroom」、同館東側入り口に特設のカフェコーナー「PARA CAFE」を開設する。
今回新たに発表されたアーティストの多くも同館での作品発表を予定している。パフォーマンス/レクチャーを取り入れた制作を行なうヘトヴィヒ・フーベンや、伝統的な技法で制作しつつも、精神分析的な時間や考古学的な遺物への関心を示すブラント・ジュンソーは、それぞれ異なる回路で彫刻を探求している。音楽家としても活動するラグナル・キャルタンソンはバンド「ザ・ナショナル」の演奏を記録した6時間に及ぶ映像作品、グシュタヴォ・シュペリジョンは有名なグラフ雑誌「LIFE」の記念図録にフェルトペンで書き込みを加えることで「公的な」記録を私的な記録へと変化させる作品の日本語版の発表を予定している。森美術館の『アラブ・エクスプレス展:アラブ美術の今を知る』にも出品したアフメド・マータルは、政府によって撮影が禁止されているカーバ神殿周辺が観光資本によって解体されていく過程を現場の労働者がスマートフォンで撮影した映像を元に非公式な記録映像を発表するとともに、来日中にワークショップも予定。京都の農業を視察したシュー・タン[徐坦]は、植物学者の助言を受けながら新作を制作しており、ジャン=リュック・ヴィルムートはポンピドゥー・センターに収蔵された観客参加型「CAFE LITTLE BOY」の再制作を試みる。また、倉智敬子+高橋悟によって、Temporary Foundationがヨコハマトリエンナーレ2014に出品した「法と星座・Turn Coat / Turn Court」が京都へと漂着、やなぎみわは「演劇公演『日輪の翼』のための移動舞台車」を美術館入り口に展示する。
(※本文中、太字表記は今回発表されたアーティスト。)
Above: Video still from Hedwig Houben, The Hand, the Eye and It (2013) Performance lecture. Video by Bas Schevers. Courtesy of Fons Welters Gallery, Amsterdam. Below: From Gustavo Speridião, The Great Art History (2005–15).
明治時代の洋風建築のディテールが残る重要文化財、京都府京都文化博物館別館では、ドミニク・ゴンザレス=フォルステルと森村泰昌の作品が展示される。森村は、プラド美術館所蔵のベラスケスのラス・メニーナスを参照した作品、マニフェスタ10に出品したエルミタージュ美術館へのオマージュを捧げた作品を発表する。また、世界的にも優れた日本映画の研究を積み重ねてきた同館を活かして、東アジア、とりわけ日本映画に造詣が深い映画研究者アレクサンダー・ザルテンが参加アーティストのひとりとして、1960年代から近年までの日本映画を中心に「アジアを照らさないミラーボール——日本映画のアジア」に焦点を当てたシネマプログラムを出品作品として上映。笠原恵実子が太平洋戦争時に製作された映画で構成したシネマプログラム「trigonometry」を上映する。
さらに、京都芸術センターではアーナウト・ミック、大垣書店烏丸三条店のショーウインドウではリサ・アン・アワーバック、鴨川デルタではスーザン・フィリップス、河原町塩小路周辺ではヘフナー/ザックスが展示を行ない、今回の記者会見で登壇し、制作風景をまとめた映像を紹介したピピロッティ・リスト、笹本晃、ブラント・ジューソーは1950年代初めに建てられた店舗併存集合住宅のモデル堀川団地で作品を発表する。
そのほか、今回の記者会見では、前売りチケットに関する情報や、カウントダウンイベントや会期中のイベントの一部が発表された(詳細は公式ウェブサイトを参照)。また、河本、リストに続いて登壇したプロフェッショナルアドバイザリーボードメンバーのロジャー・M・ビュルゲルは、グローバル化により世界各地の国際展が標準化していく「現代美術の危機」に対して、PARASOPHIAが示すであろう態度へ期待を寄せた。同コメントを引き継ぐ形で、会場から「現代美術の危機」に対するコメントを求められると、河本は自分自身が持っている解読コードや理解の仕方で処理するのではなく、戸惑いつつ、時間をかけて判断を保留しながら思考していく態度にこそ可能性があるのではないかと答えた。
PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015は、今回までに発表された36組のアーティストに3月6日の記者会見で発表される数名を加えた約40組のアーティストの作品を通じて、参加アーティストと鑑賞者の双方を巻き込みながら、10年後、20年後の文化資産に繋がる、思考と創造の継続的で世界に開かれたプラットフォームを京都に根付かせることを目指していく。
PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015
2015年3月7日(土)–5月10日(日)
http://www.parasophia.jp/
森村泰昌「侍女たちは夜に甦るV:遠くの光に導かれ闇に目覚めよ」2013年
※カタカナ表記は主催者資料に基づく。