第1回 『係の人』
おおよそ現代美術ってのは、世界で最も自由な表現形式じゃないだろうか? 絵画だろうとオブジェだろうとパフォーマンスだろうと作品でござい! と言ってしまえばそれはもう現代美術だ。しかし、そんな現代美術でも限界がある。それはコストだったり、作品を実現させる技術の問題だったり、あるいは公序良俗だったりする。だとすればこの世で一番自由なのは現代美術のプロポーザルかもしれない。プロポーザルってのはまぁ、作品や展覧会の企画書というか、提案書だね。つまり作品の構想の段階だ。これには実現するにあたっての制約はさしあたり何もない。つまり一番自由なのだ。というような理屈をこねて、今回から適当にやりたい企画を提案しちゃう「勝手にプロポーザル」をスタートさせます。
第1回目は『係の人』。美術館にいくと展示会場の隅に係の人が目立たないように座っているでしょ。でね、今回の企画では展示してある内容が全部その係の人の紹介なの。運動会の写真とか、美術部の時に描いた油絵とか、彼にプレゼントしそこねたセーターとか・・・で、見てる人は「何この女?」とか「ヘタクソな絵」とか見てるんだけど、ある瞬間それがみんな今まで目をとめなかった会場の隅の係の人だって分かるの。なんかその瞬間、見てる人と場の関係がガラガラって変化すると思うのね。「えーっ、これアンタのことなの? 今までオレが笑いながら見てたのを後ろから眺めてたの?」とか、空気が変わると思うんだよね。てなカンジでいかがでしょう? 「係の人」。どこかの美術館でホントにやらせてくれないかなー?
展覧会企画書
■展覧会タイトル
『係の人』
■企画趣旨
美術館によるいる見張りの係の人を紹介する展覧会
本人はいつものようにそこに座っている。
見る人は気づかない、オモシロイでしょ
■出品内容
・係の人(各部屋1人)
・係の人にまつわる作品(昔の写真、描いた絵、編んだマフラーなど)
■展覧会予算
・係の人へのお礼、各10万円
・作品運搬で10万円(テキトー)
■会期・会場
どこでもデカイ美術館。できるだけ長く
■観覧料
一般1500円 小人500円(テキトー)
■参考資料
全日本「係の人」名ボ 「係の人の歴史」(あるかどーか知らない)
初出:『ART iT』 No.18 (Winter/Summer 2008)