■2014年6月29日[日]まで/「ニコラ ビュフ:ポリフィーロの夢」展[原美術館]

2012年にパリ、シャトレ座で上演された古典オペラ「オルランド」の斬新なアートディレクションで、一躍時の人となったフランス人アーティスト、ニコラ ビュフ。日本やアメリカ由来のサブカルチャーと、ヨーロッパの伝統的な美意識を融合させるビュフは、本展でもかつて邸宅であった原美術館の建築と屋外を舞台に、現代版冒険活劇とも言える世界へ観客を誘うインスタレーションを展開します。

《お知らせ》
展覧会関連企画
ニコラの「Kids’ Art Room(キッズアートルーム)」がオープン
6月8日[日]以降の土日
時間・詳細はこちらへ。


原美術館における展示風景 ⒸNicolas Buffe 撮影:木奥惠三

【概要】
2012年にパリ シャトレ座で上演されたオペラ「オルランド」のアートディレクションで高い評価を得た新進気鋭のフランス人作家、ニコラ ビュフの美術館における初個展を開催します。パリ生まれ東京在住のビュフは、ルネッサンスやバロックなどのヨーロッパの伝統文化と、子どもの頃から夢中になった日本やアメリカのマンガやアニメ、ビデオゲームなどのサブカルチャー、すなわち西洋と東洋、伝統と現代を融合した、壮麗で軽やかな作品に取り組んでいます。その制作は美術のみならず、舞台、ファッションなど多くの分野から注目を集めています。
ビュフは、ヨーロッパの古典と和製ロールプレイングゲームの世界観に類似性を見出し、驚いたと語ります。この展覧会では、主人公である少年ポリフィーロの冒険を通し、夢と愛、闘いと勝利、死と再生という、普遍的なテーマが提示されます。主に壁画と立体作品を組み合わせた大型インスタレーションで構成される本展は、さらにAR(Augmented Reality、拡張現実)の技術を用いて鑑賞者が仮想空間で甲冑をまとうことのできるインタラクティブなマルチメディアインスタレーション、屋外の大型インスタレーションを含み、美術館全体をファンタジーの世界に変える異色の試みです。


本展イメージビジュアル 2014年 ⒸNicolas Buffe


本展インスタレーションのための習作 2014年 ⒸNicolas Buffe

*AR:Augmented Reality(拡張現実)。現実の環境から知覚に与えられる情報に、コンピュータが作り出した情報を重ね合わせ、補足的な情報を与える技術。(参考文献:IT用語辞典)


「ユニコーンの皮」 2010年、オービュッソン国際タペストリー研究所のための織物プロジェクト ⒸNicolas Buffe

【展覧会の見どころ】
*キーワードは「まじめに遊ぶ」。古今東西の文化がリミックスした新しい表現を楽しめる。
*主人公ポリフィーロの冒険をベースに、オオカミ、鏡、ユニコーン、甲冑、瞑想空間などで構成された空間をたどり、観客がファンタジーの世界を体験する物語仕立ての展覧会。
*AR(拡張現実)を用いたマルチメディアインスタレーションでは、観客が甲冑をまとうことができ、展示の一部になる体験ができる。
*緻密な線で描かれたドローイングが壁を覆う、繊細かつ力強いインスタレーション。

【ニコラ ビュフとは】

Photo by Antoine Piechaud – Théâtre du Châtelet 

ニコラ ビュフは、2012年3月にパリ、シャトレ座で上演されたオペラ「オルランド パラディーノ(騎士ロラン)」の総合的なアートディレクションを担当しました。ヨーロッパの伝統的な美意識と日本やアメリカ由来のサブカルチャーとを見事に融合した仕事が高く評価され、評論家協会から同年の演劇・音楽・ダンス部門でのビジュアルデザイン最優秀賞を受賞し、一躍時の人となります。

1978年にパリで生まれたビュフは、日本においては銀座メゾンエルメスのウィンドウディスプレイ「赤ずきんのカレちゃん」(2010年)、フランス大使館旧庁舎でのグループ展「No Man’s Land(ノーマンズランド)」(2009年)のためのゲート制作や、東京都現代美術館でのグループ展「屋上庭園」(2008年)に参加している新進気鋭のアーティストです。

幼少期、パリでテレビ放映され夢中になった「宇宙刑事ギャバン」*が、実は日本で製作された実写特撮番組であることを後に知ったビュフは、日本への興味を強くかきたてられ、日本語や日本文化を勉強し、ついには活動拠点を東京に移し現在に至ります。

マンガやアニメは現代日本が世界に誇る文化ですが、その影響を遠くフランスで(輸入された文化である認識さえもない)子どもの頃から受けて成長したアーティストは、それを咀嚼し、自身が本来持つ文化的背景と融合させることで独自の表現を生み出しました。
http://nicolasbuffe.com

*「宇宙刑事ギャバン」: 1982年-83年にテレビ朝日系列で放映された東映製作の特撮テレビ番組。

【この展覧会について】

本展インスタレーションのための習作 2013 年 ⒸNicolas Buffe

原美術館と関わった多くのアーティスト同様、ニコラ ビュフもかつて個人邸宅だった歴史的建造物が、時を経て最先端の現代美術を展示する美術館へと姿を変え、世界各国の作家や美術愛好家を迎える空間となっていることに強く惹かれました。西洋と東洋、伝統と現代の融合は、ニコラ ビュフ自身の作品世界のテーマでもあるからです。

15世紀末ヨーロッパの古典文学「ヒュプネロトマキア ポリフィリ」(Hypnerotomachia Poliphili、1499年 ヴェネツィアで初版)へのオマージュをベースに、日本のアニメ、マンガ、特撮ヒーローもの、ビデオゲームなどの影響が加味された独特の表現世界を展開します。この本は初期ルネサンス様式で描かれた細密な木版画の挿絵を特徴としており、格調高いタイポグラフィやレイアウトデザインはビュフの装飾的な壁画制作にも大きな影響を与えました。また、初めてこの本と出会った時、ビュフは「ゼルダの伝説」「スーパーマリオブラザーズ」「ファイナルファンタジー」など和製ビデオゲームとの共通点を多数見つけたと語っています。「Hypnerotomachia」とはギリシャ語のhypnos(夢)+eros(恋)+mache(戦い)からなる言葉です。つまりこの本の題名は「ポリフィーロの夢の中の恋の戦い」という意味になります*。そして「夢」「恋」「戦い」は、現代の冒険活劇にも欠かせない要素となっています。

先ごろ東京芸術大学大学院において博士号を取得したニコラ ビュフは、博士論文「オルターモダン時代の中で自分のマニエラを作ることの思考」*のなかで、ニコラ ブリオー(パリ国立美術大学ディレクター/キュレーター)による「オルターモダン宣言」を参照し、<多様性><文化的放浪><接続>の3つを自らの作品の主要テーマに据えました。西洋と東洋を往還し、古典と現代を切り結び、美術史上の様式とサブカルチャーを融合させ、新たなモダニティのなかで自らのマニエラを確立しようとするニコラ ビュフが、今回、原美術館の空間全体を使ってひとつの物語を作り上げます。

*Hypnerotomachia: 渋澤龍彦はこれを「ポリフィルス狂恋夢」と訳した。主人公ポリフィーロが夢の中で冒険をし、恋人ポーリアと再会するが、彼女と結ばれぬまま夢から覚める物語。
*オルターモダン: ニコラ ブリオーが提唱。ポストモダン終焉後の2010年代以降の時代状況を指す言葉。
*マニエラ: 手法、様式

【作家略歴】
ニコラ ビュフ Nicolas Buffe
1978年 フランス パリ生まれ。2007年来日し現在は東京在住。
2000年 フランス国立高等工芸美術学校(ENSAAMA)卒業、 環境・建築デザイン免状取得
2005年 パリ国立高等美術学校(Ecole Nationale Supérieure des Beaux Arts)卒業、DNSAP(フランス国家造形芸術 免状)取得
2007年 フランス国立東洋言語文化研究所(INALCO)卒業、 日本語・日本文化学士取得
2011年 東京芸術大学 大学院美術研究科 先端芸術表現専攻、修士課程修了
2014年 東京芸術大学 大学院美術研究科 先端芸術表現専攻、博士号取得

2008年 東京都現代美術館にてグループ展「屋上庭園」に参加
2009年 現フランス大使館の会議室のための壁画制作
2009-2010年 旧フランス大使館を会場とするグループ展「ノーマンズランド」に参加
2010年 メグミオギタギャラリー(東京・銀座)にて個展「タワワップ」開催
2010年 銀座メゾンエルメス(東京)のウィンドウディスプレイ「赤ずきんのカレちゃん」制作
2012年 パリ、シャトレ座公演オペラ「オルランド パラディーノ」ビジュアルデザイン全般を担当
2014年 山本現代(東京・白金)にて個展開催予定


「ノーマンズランドの門」 2009年、旧フランス大使館「ノーマンズランド」展における展示風景
ⒸNicolas Buffe (参考図版)


「黄金時代」 2008年、東京都現代美術館「屋上庭園」展における展示風景 ⒸNicolas Buffe (参考図版)


「オルランド」 ポスター 2012 年 ⒸNicolas Buffe (参考図版)

【開催要項】
展覧会名 「ニコラ ビュフ:ポリフィーロの夢」 (英題 Nicolas Buffe, The Dream of Polifilo)
会期 2014年4月19日[土] - 6月29日[日]
主催 会場 原美術館
後援 フランス大使館
助成 フランス大使館、アンスティチュ・フランセ日本/アンスティチュ・フランセパリ本部、フランス国立映画・映像センター、フランス国立グラフィック・アート造形芸術財団、笹川日仏財団
特別協賛 エルメスジャポン株式会社
協賛 ソシエテ ジェネラル、ヴランケン ポメリー ジャパン株式会社、LM3LABS
協力 山本現代

開館時間 11:00 am-5:00 pm (水曜は8:00 pmまで/入館は閉館時刻の30分前まで)
休館日 月曜日(祝日にあたる5月5日は開館)、5月7日
入館料 一般1,100円、大高生700円、小中生500円/原美術館メンバーは無料、学期中の土曜日 は小中高生の入館無料/20名以上の団体は1人100円引
*2014年4月1日からの消費税増税に伴い、入館料を上記のとおり一部改定いたします。

交通案内 JR・京浜急行「品川駅」高輪口より徒歩15分/都営バス「反96」系統「御殿山」停留所下 車、徒歩3分/京浜急行「北品川駅」より徒歩8分

原美術館 東京都品川区北品川4-7-25
Tel 03-3445-0651
Eメール info@haramuseum.or.jp
公式サイト http://www.haramuseum.or.jp
携帯サイト http://mobile.haramuseum.or.jp
ブログ https://www.art-it.asia/u/HaraMuseum
ツイッター http://twitter.com/haramuseum

当館学芸員によるギャラリーガイドを日曜・祝日2:30 pmより30分程度行ないます。

-【関連する展覧会予定】 ————————————–
2014年4月24日[木]-6月1日[日] 「ポリフィーロの手帳」、アンスティチュ・フランセ東京(飯田橋)
http://www.institutfrancais.jp/tokyo/

2014年5月31日[土]-6月28日[土] 「ポーリアの悪夢:ニコラ ビュフ」、山本現代(東京・白金)
http://www.yamamotogendai.org/

【関連イベント】————————————–
アーティストトーク 「バロック・アニメ」 ニコラ ビュフの作品世界をめぐって
「ニコラ ビュフ:ポリフィーロの夢」展を記念し、アンスティチュ・フランセ東京において、アーティストトークを開催します。ゲストにはミカエル・リュケン氏(日本美術史研究者)、伊藤俊治氏(美術史家)、八谷和彦氏(メディアアーティスト)を招き、新進気鋭のフランス人作家ニコラ ビュフの作品世界を語っていただきます。

日時:4月23日[水]19:00-(開場:18:40)
会場:アンスティチュ・フランセ東京 エスパス・イマージュ
問合わせ/申込み:アンスティチュ・フランセ東京(TEL: 03-5206-2500)
http://www.institutfrancais.jp/tokyo/events-manager/rencontre-nicolas-buffe/
※問合せ先・会場をお間違えのないようご注意ください。

コンサート 及川潤耶:ポリフィーロと音の夢

photo by: Hiroyuki Agetsuma
「ニコラ ビュフ:ポリフィーロの夢」展出品作品『Locus terribilis』のサウンドを手がけた及川潤耶による電子音響コンサートを開催します。
声や物音の変容によって生まれる物語性や、空間に超自然現象を呼び起こすかのような神秘的な力をもつと評される及川のサウンド。ニコラ ビュフの作品とともに皆様をもうひとつのポリフィーロの夢へと誘います。

日時:5月3日[土] 18:30開場 19:00開演
会場:原美術館ザ・ホール
料金:一般3,000円、学生2,500円、原美術館メンバー2,000円
*当日、現金にてお支払いください。学生の方は学生証をご提示ください。展覧会もご覧いただけます。
定員:40名
申込方法:※受付終了(4月27日追記)
申込開始日:2014年4月14日[月]

及川潤耶(おいかわ じゅんや)
1983年生まれ。2011年、東京藝術大学先端芸術表現修士課程修了。フランス最大の電子音楽賞「Qwartz Music Award 2013」で実験/研究部門で最高賞を受賞。主な活動に、東京都現代美術館「トランスフォーメーション」(2010-2011年)、DOMMUNE(東京、2014年)、Bains Numériques(フランス、2014年)等。現在、公営メディア芸術センターZKM(ドイツ)の客員芸術家として世界を舞台に活躍する若手サウンドアーティスト。
————————————————————-

《写真撮影についてのご注意》
本展に限り、作家の許可を得て撮影可能となっております。作品保護のため、下記をお守りください。
・撮影する作品および周囲の作品の安全を考慮してください。
・事故防止のため作品の接写を禁止します。
・フラッシュの使用を禁止します。
・動画の撮影を禁止します。
・三脚の使用を禁止します。
・プライバシーに配慮するため、ご来館のお客様に対する撮影は禁止します。
・他のお客様の観覧を妨げないようご注意ください。
・撮影した作品写真の営利目的での使用等、著作権を侵害する二次使用を禁止します。
・撮影禁止マークのついた常設作品の撮影を禁止します。
・混雑時には撮影を制限させていただく場合があります。あらかじめご了承ください。

——————————————————————

原美術館とハラ ミュージアム アークはTwitterで情報発信中。
http://twitter.com/haramuseum (@haramuseum)
http://twitter.com/HaraMuseumARC (@HaraMuseumARC)

原美術館とハラ ミュージアム アークは割引券一覧iPhoneアプリ「ミューぽん」に参加。
http://www.tokyoartbeat.com/apps/mupon

原美術館ウェブサイト
http://www.haramuseum.or.jp
http://mobile.haramuseum.or.jp

原美術館へのアクセス情報はこちら

Copyrighted Image