戸田沙也加《沈黙と花》2025年 発色現像方式印画 作家蔵
アーティストとひらく 戸田沙也加展 沈黙と花
2025年6月28日（土）－11月3日（月・祝）
横浜美術館 ギャラリー5
https://yokohama.art.museum/
開館時間：10:00–18:00 入館は閉館30分前まで
休館日：木
展覧会URL：https://yokohama.art.museum/exhibition/202506_openingdialogues/
横浜美術館のギャラリー5では、戦後80年を迎える2025年に、アーティストの戸田沙也加と共に今なお私たちにとって大きな課題であり続ける争いや共生の可能性について考える小企画展「アーティストとひらく 戸田沙也加展 沈黙と花」を開催している。
横浜美術館では、将来活躍が期待される若手アーティストを紹介する小企画展「New Artist Picks（通称NAP）」を2007年から2023年まで継続して開催してきた。「アーティストとひらく」はこのプログラムを引き継ぐもので、新進アーティストと共に、これからの美術、これからの美術館の可能性について考え、試行錯誤をする場として年1回実施される。リニューアル後の横浜美術館がキーワードのひとつに掲げた「多様性」の理念に基づき、新進アーティストと同館の多様なコレクションのコラボレーションや、横浜のグローバル／ローカルな歴史の探求などを行なうプログラムとして、2025年から始まった。
戸田沙也加（1988年埼玉県生まれ）は、画家としてキャリアをスタートし、醜美をテーマとしたペインティングを制作してきた。ここ数年は写真や映像インスタレーションなどの技法を使い、その世界観を表現している。2012年に女子美術大学大学院美術専攻洋画研究領域を修了し、現在は茨城と東京を拠点に活動。近年の主な個展に、「Voice of Silence」（京都写真美術館ギャラリー・ジャパネスク、2025）、「東京にカンナの花を添える」（KANA KAWANISHI PHOTOGRAPHY、東京、2024）、「TOKAS Emerging 2024 消えゆくものたちの言葉なき声」（トーキョーアーツアンドスペース本郷、2024）など。受賞歴に、アートアワードトーキョー丸の内2010 木幡和枝賞、シェル美術賞展2010入選。
戸田沙也加《Tokyo Canna Project #1》2023年 発色現像方式印画 作家蔵
小川原脩《双生児対話》1940年 油彩、カンヴァス 横浜美術館蔵
戸田は、コロナ禍の2021年より、中南米原産の花であるカンナと、ロシアから日本に移住した友人をモチーフに作品を制作してきた。カンナの花は、広島に原子爆弾が投下され焦土と化し「今後75年間は草木が生えない」と言われた約1カ月後の1945年9月、爆心地から約800ｍ離れた場所に花を咲かせ、その姿を当時朝日新聞のカメラマンであった松本栄一が撮影。カンナの花の写真は戦後、広島平和記念資料館において希望のシンボルとして語られるようになった。いまの日本で「平和」や「異なる地から海を越えてこの島国に根付き自生するもの」を考えるきっかけになったこのふたつのモチーフについて、戸田は、「東京の街並みをカンナの花と共に歩き、絶えず移り変わる景色に力強く咲き誇るカンナを忍ばせ記録する。終わりのない悲しみや、叫び、絶望に耳を傾け、愛する友人を想いながら、私なりの平和を願うささやかなデモを行う。」と記している。
世界が新たな対立や紛争に直面している2025年現在に開催中の本展において戸田は、横浜美術館のコレクションの中から、北海道に生まれ、戦前に東京で美術文化協会に参加したあと戦地へと招集された小川原脩と、カタルーニャに生まれ、第一次世界大戦、スペイン内戦、第二次世界大戦と、多くの戦争を目の当たりにしたジョアン・ミロに着目。戦争に翻弄されながらも、それぞれの立場と姿勢を貫き作品を作り続けたふたりの画家に対する思いをもとに、カンナの花とロシア人の友人を再びモチーフにした新作を発表している。
なお本展は、戦争と美術をテーマに構成された同時開催のコレクション展「平和であることへの、控えめななにごとかを」と連動するかたちで開催。終戦80年の節目に、コレクション作品約115点を展示し、戦争や社会と向き合いながら作品を生み出したアーティスト、写真家たちの足跡をたどっている。
北脇昇《眠られぬ夜のために》（習作）1937年 油彩、カンヴァス 40.9×53.0cm 横浜美術館蔵
沢田教一《十字架、テト攻勢》1968年2月15日（1986年の再プリント）ゼラチン・シルバー・プリント 21.8×32.4cm 横浜美術館蔵
同時開催
横浜美術館リニューアルオープン記念展 佐藤雅彦展 新しい×（作り方＋分かり方）
2025年6月28日（土）－11月3日（月・祝）
https://yokohama.art.museum/exhibition/202506_satomasahiko/
コレクション展 戦後80年特集展示「平和であることへの、控えめななにごとかを」、奈良原一高「Blue Yokohama」、ハイライト「サルバドール・ダリ、ポール・セザンヌ、奈良美智」
2025年6月28日（土）－11月3日（月・祝）
横浜美術館 ギャラリー4（戦後80年特集展示）、ギャラリー6（奈良原一高、ハイライト）
https://yokohama.art.museum/exhibition/202506_collection/
コレクション展（じゆうエリア／グランドギャラリー、3F回廊）
2024年11月1日（金）－11月3日（月・祝）
横浜美術館 グランドギャラリー、3F回廊（一部）
https://yokohama.art.museum/exhibition/202506_jiyu-area/