Dressing Up: Pushpamala N @ シャネル・ネクサス・ホール

展示風景「Dressing Up: Pushpamala N」シャネル・ネクサス・ホール、東京、2025年 ©CHANEL

 

Dressing Up: Pushpamala N
2025年6月27日(金)-8月17日(日)
シャネル・ネクサス・ホール
https://nexushall.chanel.com/
開館時間:11:00–19:00(最終入場18:30)※6/27は17:30まで(最終入場17:00)、7/10、24は17:00まで(最終入場16:30)
会期中無休
展覧会URL:https://nexushall.chanel.com/program/2025/dressingup/

 

シャネル・ネクサス・ホールでは、昨年からスタートしたアジアのアーティストにフォーカスした展覧会シリーズの第2回として、インド出身のアーティスト、プシュパマラ・Nの個展「Dressing Up: Pushpamala N」を開催する。

プシュパマラ・N(1956年生まれ)は、インドのバンガロール(現ベンガルール)を拠点に多様な分野で活動している。彫刻家としてキャリアをスタートし、1990年代半ばから、さまざまな役柄に扮して示唆に富んだ物語を作り上げるフォト・パフォーマンスやステージド・フォトの創作を始め、女性像の構築や国民国家の枠組みといったテーマに取り組んでいる。近年の主な展覧会に「Collection 1980s–Present: Staging Selves」(ニューヨーク近代美術館、2024-)、「Capturing the Moment」(テート・モダン、ロンドン、2023-2024)、ジメイxアルル国際写真祭(中国・厦門、2019-2020)、第66回ベルリン国際映画祭(2016)、釜山ビエンナーレ(2016)など。今年の4月には、KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭にて、近年テート・モダンで展示された〈The Arrival of Vasco da Gama〉、〈Mother India〉、〈Avega~The Passion〉を含む3つの作品シリーズを展示した。

 

展示風景「Dressing Up: Pushpamala N」シャネル・ネクサス・ホール、東京、2025年 ©CHANEL
展示風景「Dressing Up: Pushpamala N」シャネル・ネクサス・ホール、東京、2025年 ©CHANEL

 

本展では、プシュパマラ・Nのシネマトグラフィーをテーマにした3つの作品シリーズを展示する。フォト・パフォーマンスという表現手法を探求し始めた初期シリーズ〈Phantom Lady or Kismet〉は、深層心理を描写するフィルム・ノワールの美学を取り入れつつその映画的描写をパロディ化した25枚のモノクロ写真で構成された作品。プシュパマラは、怪傑ゾロにインスパイアされたファントム レディに扮することで、視覚文化、フェミニズム、表象、インドの歴史といった重要なテーマに取り組み、1930年代から1940年代にかけて俳優やスタントパーソンとして活躍したインド女性たちへのオマージュを込めている。

その初期シリーズの続編である〈Return of the Phantom Lady〉では、ファントム レディが再登場し、現代のムンバイを舞台に、殺人、陰謀、悪事の巣窟を解き明かそうとするシリーズ作品。ミステリー小説のカバーページを思わせる21枚の大胆な色調のカラー写真で構成された本作品群は、現代の映画における今も変わらないインド社会の描写についての考察を促すと同時に、かつて冒険の舞台となった情緒あふれるムンバイの街並みが失われ、再開発により変貌を遂げた都市についても言及している。

〈The Navarasa Suite〉は、インド美学における9つの感情「ラサ」、すなわちShringara(恋情)、Adbhuta(驚き)、Hasya(ユーモア)、Bhayanaka(恐怖)、Bhibhatsa(嫌悪)、Karuna(悲しみ)、Raudra(怒り)、Veera(勇敢)、Shanta(寂静)を元に、緻密な演出が組まれた一連のセルフ・ポートレイト作品。本作品群は〈Bombay Photo Studio〉シリーズの一部で、1950年から1960年代のインド映画黄金時代に活躍した、俳優で写真家のJ・H・タッカーのフォトスタジオで3年かけて制作された。プシュパマラは、タッカーの初期のバロック様式を用いることで、リアリズムよりもファンタジーや物語性を扱ってきた、これまであまり注目されてこなかったインドの写真史を探求しようとしている。

 

プシュパマラ・N〈Phantom Lady or Kismet〉1996-1998 ©Pushpamala N
プシュパマラ・N〈Return of the Phantom Lady〉2012 ©Pushpamala N
プシュパマラ・N《Shringara/恋情》 The NavarasaSuite from the series Bombay Photo Studio, 2000-2003 ©Pushpamala N

 

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