【PR】第20回台新芸術賞


Mr. Wing Theatre Company – A Journey towards sentiment (kanshoo ryokoo)—My Endless Melancholy Becomes Siberia Comprised of Oblivion After You Left for the Southern Villages, performance view at Guling Street Avant-Garde Theatre, Taipei, 2021. Image courtesy HSU Ping.

 

2022年7月2日、台新銀行文化芸術基金は、台湾国内で過去1年の間に発表された視覚芸術および舞台芸術における優れた表現を表彰する芸術賞「第20回台新芸術賞」の授賞式を開催した。視覚芸術、舞台芸術両部門の最終候補17組から選ばれた年間グランプリは、台北の牯嶺街小劇場で『A Journey towards Sentiment (kanshooryokoo)—My Endless Melancholy Becomes Siberia Comprised of Oblivion After You Left for the Southern Villages』を上演したミスター・ウイング・シアターカンパニーが受賞し、賞金150万台湾ドル(約690万円)を獲得した。舞台芸術賞は同じくミスター・ウイング・シアターカンパニーがボディ・フェーズ・スタジオとともに牯嶺街小劇場で上演した『Prince Hamlet』で受賞。そして、視覚芸術賞は台中の国立台湾美術館で開催されたアジアン・アート・ビエンナーレで《howdoyouturnthison》を発表したリ・イーファンが受賞した。

台新銀行創立30周年と台新芸術賞20周年が重なった本年度は、3年間の改修期間を経て活動を再開した台北の牯嶺街小劇場で上演された2作品が年間グランプリと舞台芸術賞を同時に獲得する結果となった。近年、台中国家歌劇院、衛武営国家芸術文化センター(高雄)、台南市美術館、台北パフォーミングアーツセンターといった国公立の大規模かつ複合的な劇場が次々と建てられるなか、日本統治時代に警察署として建てられた建築を利用し、小規模ながらも実験的な舞台表現を追求してきた牯嶺街小劇場が成し遂げた今回の偉業は、台新芸術賞においても台湾の実験演劇界においても画期的な出来事となった。最終審査を務めた立方計劃空間のエイミー・チェンは、「本年度の結果には、台新芸術賞が地域特有の文化生産に長く関心を持ち、地域性に深く根ざした視野を持つことで培ってきた同賞の精神や築き上げてきた価値の基盤となるものが表れている」と感想を述べた。

審査を担当したのは、インディペンデント・キュレーターで立方計劃空間の共同創設者ののエイミー・チェン[鄭慧華]のほか、批評家で国立台湾大学文学院専任助理教授のワン・チュンイェン[汪俊彥]、国立台南芸術大学副教授のゴン・ジョジュン[龔卓軍]、国立台北芸術大学副教授のジャン・チフォン[張啟豐]、国立台湾大学特別教授のチャン・シャオホン[張小虹]、アーティストのガオ・ジョンリー[高重黎]、インディペンデントキュレーターでやんばるアートフェスティバル芸術監督のイーファ・エヴァ・リン[林怡華]の計7名。前々回、前回に続き、パンデミックの影響もあり、台湾を拠点とする有識者のみで構成されることとなった。

年間グランプリを獲得したミスター・ウイング・シアターカンパニー[人力飛行劇團]は、牯嶺街小劇場で『A Journey towards Sentiment (kanshooryokoo)—My Endless Melancholy Becomes Siberia Comprised of Oblivion After You Left for the Southern Villages』を上演。演出家のリ・フアンシュン[黎煥雄]は、ツァイ・タイホ[崔台鎬]の一人芝居と牯嶺街小劇場の特色ある空間を組み合わせ、詩的かつ散文的な要素を含む、演劇、文学、政治が織り成す弁証法的な舞台をつくりあげた。審査員は、「(同作は)台湾文学における重要作家、陳映真(1937-2016)と、陳作品の登場人物たち、演劇人Mの人生を織り混ぜることで、台湾の現代演劇の美学的な継承と変遷を見事に表現した。緻密さと力強さを兼ね備えたツァイ・タイホの一人芝居は、ウー・ジジン[吳子敬]の手がける舞台美術とともに、牯嶺街小劇場の空間の多様性を切り拓くものであり、リ・フアンシュンの演出は、陳の人生と台湾の歴史的文脈における小劇場運動や左翼の密接な関係を描き出し、前衛や近代に対する理想や幻滅の数々を自己反省的に探究するものであった」と授賞理由を寄せた。

 


Body Phase Studio and Mr. Wing Theatre Company – Prince Hamlet, performance view at Guling Street Avant-Garde Theatre, Taipei, 2021. Image courtesy HSU Ping. Below: LI Yi Fan – howdoyouturnthison (2021), video, 17 min. 30 sec., Asian Art Biennial 2021, Taichung.


LI Yi Fan – howdoyouturnthison (2021), video, 17 min. 30 sec., Asian Art Biennial 2021, Taichung.

 

舞台芸術賞は、ボディ・フェーズ・スタジオ&ミスター・ウイング・シアターカンパニー[身體氣象館&人力飛行劇團]が牯嶺街小劇場で上演した一人芝居『Prince Hamlet』が受賞。劇作家兼俳優のヤン・チィーイン[楊奇殷]が、ひまわり学生運動(318学運)の文脈を用いて『ハムレット』の再解釈を試み、運動に参加した学生や市民のさまざまな闘争における信念や失望、運動の展開を反映する舞台をつくりだした。審査員は「演出家のワン・モーリン[王墨林]が『ハムレット』や政治史の闇を深く理解する一方で、逃げることなく存在の重さの喪失を引き受け、世代を超えたアナーキストたちの爆発的な勢いとともに身体の政治性を批判的に暴き出した」ことを高く評価した。

視覚芸術賞は、国立台湾美術館で開催されたアジアン・アート・ビエンナーレに《howdoyouturnthison》を出品したリ・イーファン[李亦凡]が受賞した。同作におけるゲーム用エンジンが生成するユーモラスな映像によるナラティブ・アプローチは、映像制作とは直接関係ないような深刻な社会問題を掘り下げる可能性を秘める。審査員は「(同作は)デジタル時代の遺伝子やその変異した記憶に独自のダークユーモアで応答する。そのばかばかしく奇妙に見えるイメージの裏側には、魅惑的な物語手法やシナリオが組み立てられており、リはゲーム用エンジンを利用したアニメ映画「マシニマ」の技術を駆使し、物理的制約を受けずに蠢くアバターを巧みに操作している。同作におけるポストヒューマンの身体と仮想現実モデリング言語(VRML)の相互生成は、インターネット世代のオルタナティブな現実を映し出し、そしてそれはイメージの生成に自由を与え、物語言語を解放する」と授賞理由を寄せた。

「台新芸術賞」は、2002年に台新銀行文化芸術基金が創設。2017年以降は台湾における視覚芸術、舞台芸術の領域横断的な精神の発展、また各領域における専門性を反映するために、年間グランプリと視覚芸術、舞台芸術の両部門への賞を設けた現行の形で実施されている。なお、本年度の授賞式の様子は、公式ウェブサイトで視聴することができる。

 

第20回台新芸術賞https://20award.taishinart.org.tw/
台新銀行文化芸術基金http://www.taishinart.org.tw/

 

 

最終候補(視覚芸術)
ホン・チェンレン[洪政任]、ヤン・シュンファ[楊順發]、ウー・モンジェン[吳孟真]、リン・シャオシー[林小溪]『THÓO-PŌO TÓO-GÍ Hung Cheng-Jen: A Survey』(2021/09/15-2021/12/11、Mezzo Art、台南)
マンボ・キー[楊登棋]『Father’s Video Tapes __ Avoid A Void』(2021/03/22-2021/06/04、国立政治大学芸文センター、台北)
ホアン・リーホイ[黃立慧]『The B-Side of Yueh-Tao—2021 Green Island Human Rights Art Festival』(2021/5/17-2021/9/15、白色恐怖緑島紀念園区/緑洲山荘、台東)
リ・イーファン[李亦凡]『howdoyouturnthison─ 2021 Asian Art Biennial』(2021/10/30–2022/03/06、国立台湾美術館、台中)
台湾コンテンポラリー・カルチャー・ラボ(キュレーター:チョアン・ウェイツー[莊偉慈])『Project : The Folly』(2021/05/15-2021/08/29、台湾現代文化実験場[C-LAB]、台北)
シェリー・ホアン[黃亦晨]『After the Last Shadow』(2021/02/06 -2021/ 02/28、AKI Gallery、台北)
ヤーチュ・カン[康雅筑]『Cotton Research Project III, IV and Side Chapter』(2020/10/22~2021/02、台南蕭壟文化園區A4-1館、台南/2021/01/16~2021/01/25、高雄駁二藝術特區大義倉庫C8-8、高雄/2021/03/02~2021/03/30、台中靜宜大學靜宜大學藝術中心、台中)
リン・ジェウェン[林介文]『A Mountain Enwrapped—2020-2021 Pulima Art Festival』(2021/03/06 – 2021/03/27、花蓮縣萬榮鄉紅葉村瑞欣礦區 / 泥椅工作室、花蓮)
リャオ・シェンジェン[廖烜榛]、ホアン・イーチェ[黃奕捷]『Save as』(2021/09/30-2021/12/05、MoCA台北現代芸術館、台北)
ムスキキ・チーイン[致穎]『There Are Lights That Never Go Out』(2021/07/27-2021/09/19、MoCA台北現代芸術館、台北)

最終候補(舞台芸術)
シンシン・ナングァン・アンサンブル[心心南管樂坊]『WANG Xin-xin Performs:The Song of Everlasting Sorrow』(2021/09/11、台南文化中心原生劇場、台南)
ボディ・フェーズ・スタジオ&ミスター・ウイング・シアターカンパニー[身體氣象館][人力飛行劇團]『Prince Hamlet』(2021/04/22、牯嶺街小劇場、台北)
ボディ・フェーズ・スタジオ&アプローチング・シアター[身體氣象館][窮劇場]『A Mother, King Lear』(2021/04/15、牯嶺街小劇場、台北)
パフォーマンス・ワークショップ[表演工作坊]『River/ Cloud—2021 Taiwan International Festival of Arts』(2021/04/02、國家戲劇院、台北)
LEE\VAKULYA リー・チェンウェイ[LEE\VAKULYA 李貞葳]『Ride the Beat—2021 Taoyuan Iron Rose Festival』(2021/10/29、桃園展演中心、桃園)
ワン・プレイヤー・ショート・アンサンブル[三缺一劇團]『The Land Project II—The Dream of Koxinga』(2021/12/03、牯嶺街小劇場、台北)
ミスター・ウイング・シアターカンパニー[人力飛行劇團]『A Journey towards Sentiment (kanshooryokoo)—My Endless Melancholy Becomes Siberia Comprised of Oblivion After You Left for the Southern Villages』(2021/03/26、牯嶺街小劇場、台北)

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