
2018年9月6日、ドバイを拠点に中東の美術や教育、伝統を支援するアート・ジャミールは、中東初の現代美術を扱う非政府系美術機関として11月11日に開館するジャミール・アートセンターの複数のオープニングプログラムを発表した。
ジャミール・アートセンターは、計10室の展示室、中東初のオープンアクセスの図書館、資料センターなどを備え、延べ面積10,000平方メートルの広さに及ぶ。豊富なコレクションや図書館を提供するだけでなく、国内外の協力を得ながら質の高い展覧会の企画を行なう美術機関を目指していく。ロンドンを拠点に活動するセリエ・アーキテクツが設計を手がけた同アートセンターは、中東の石油の歴史や現状をテーマとした企画展『Crude』と、塩田千春、ララ・ルーク、マハ・マルー、ムニーラ・アル・ソルフといった日本、パキスタン、中東地域を代表する4人の女性アーティストの個展をオープニングプログラムとして開館する。
5つの展示室を使った大規模企画展となる『Crude』では、中東地域の地政学的変動や、社会的、文化的、経済的変遷の要因とも言うべき石油に関する考察を、17組のアーティストの作品を通じて深めていく。シャルジャとニューヨークを拠点とする美術史家兼キュレーターのムルタザ・ワリのキュレーションの下、石油企業の密着取材の経験を持つイラクを代表する写真家、ラティフ・アル・アニが1950、60年代に撮影した写真や、アレッサンドロ・バルテオ・ヤズベクが2003年のイラク侵攻に美術と外交の歴史を結びつけたインスタレーションが並び、ハジラ・ワヒード、マイケル・ジョン・ウィーラン、ランティアン・シェがコミッションによる新作を発表する。そのほか、人形を使った「十字軍芝居」三部作で知られるエジプト出身のワエル・シャウキー、ル・コルビュジエが設計した建築を中心にバグダッドの歴史を考察したインスタレーション「Plan for Greater Baghdad」が第56回ヴェネツィア・ビエンナーレ企画展で注目されたクウェート出身のアラ・ヨニスなどが出品する。


一方、「Artist’s Rooms」では、塩田千春が、港湾都市として長きにわたり通商と交流の場として栄え、ジャミール・アートセンターが位置するアラブ首長国連邦の歴史的および現在のアイデンティティから着想したインスタレーションを展示室全体に展開する。そのほか、キッチン用品やカセットテープなど日用品を使った大規模なインスタレーションで知られるサウジアラビアを代表するアーティストのマハ・マルー、昨年のドクメンタ14で発表した「Nassib’s Bakery」を含むインスタレーションが記憶に新しいレバノン出身のムニーラ・アル・ソルフ、パキスタンを拠点に制作活動のみならず、教育や女性の権利運動にも従事し、昨年他界したララ・ルークをそれぞれ個展形式で紹介する。
上述した展示のほか、ララ・ファヴァレットやヴィクラム・ディヴェチャのインスタレーション、「Arist’s Garden」のための新作委託の第一弾として、シェイハ・アル・マズルーの作品を展示、ルーフテラスには、アリア・ファリド&アスィール・アル・ヤクーブのサイトスペシフィック・インスタレーションを設置するなど、多彩なプログラムが展開される。
ジャミール・アートセンター:https://artjameel.org/centres/

