【PR】第23回台新芸術賞

第23回台新芸術賞(年間グランプリ)「Battle City: Finale」ヂャン・リーレン[張立人]《Battle City 2: Economic Miracle》(スクリーンショット)

 

2025年5月24日、台新銀行文化芸術基金は、台湾国内で過去1年の間に発表された視覚芸術および舞台芸術における優れた表現を表彰する芸術賞「第23回台新芸術賞」の授賞式を開催した。最終候補15組から年間グランプリに選ばれたのは、国立台北教育大学北師美術館で個展「Battle City: Finale」を開いたヂャン・リーレン。また、視覚芸術部門には台北市立美術館で個展「Everyone came to see you」を開いたニー・シャン、舞台芸術部門は桃園の中壢区過嶺にある三合院式の邸宅を舞台にした「Great-Grand Rat-Po-Tai (So Old) Is Sleeping Next To A Landscape Painting, Diligently & Stingily Snoring—— But There Is No Landscape Painting! (White Carrot, Rat Teeth, Her Child, (And Her Child’s Child.))」を上演した末路小花&シュウ・ポンが受賞。年間グランプリのヂャン・リーレンには賞金150万台湾ドル(約734万円)、ニー・シャンと末路小花&シュウ・ポンには100万台湾ドルが授与された。

台新芸術賞は、2002年に台新銀行文化芸術基金が創設。視覚芸術、舞台芸術の領域横断的な精神、各領域における専門性を促進、表彰する芸術賞として、台湾アートシーンにおいて重要な役割を果たしている。本年度は、個人の歴史や経験を基に、権威主義に対する個人的抵抗、メディアにおける暴力描写、実存的な問い、医療や介護などのケア、家父長制下の女性の境遇など幅広い社会問題に取り組み、現実と仮想を融合した多彩な表現を駆使し、鑑賞者を深い省察に導く優れた作品が各賞を受賞した。

 

第23回台新芸術賞(年間グランプリ)「Battle City: Finale」ヂャン・リーレン[張立人]Photo by Sean Wang

 

年間グランプリを獲得した〈Battle City〉プロジェクトは、ヂャン・リーレン[張立人]が14年に及ぶ長期にわたり取り組み続けた抵抗と防衛をめぐる「戦闘」の物語。北師美術館で開かれた個展「Battle City: Finale」は、「第1部:台湾の栄光」「第2部:経済的奇跡」「第3部:フォルモサ」の映像作品三部作に始まり、自作した人形、模型、舞台セット、台本などを含むプロジェクトの全貌を網羅的かつ包括的に紹介する初めての機会となった。ヂャンは安価な素材やローテクな手法を採用することで、社会規範や集団的価値観の制約の下、アーティストはいかにして活動を継続し、自律性を維持し、理想を保持することができるのかを探究した。

審査員は、「ヂャン・リーレンの実践は、芸術をひとつの生き方と捉え、「芸術的創造の自律性」を体現するもの。その代表作となるのが、この14年間にわたって、スケッチ、人形芝居、模型製作、アニメーションなどを積み重ね、造形芸術、ナラティブ、映像表現の統合を試みた〈Battle City〉プロジェクトである。壊れやすい素材や理解しづらい言葉を扱ったり、個人制作の精神を重んじたりすることで、個人の成長と集団の運命を探究する「記憶の場」を巧みに創り出した。また、ハリウッド的なヒロイズムを覆すべく大衆文化のナラティブを流用し、「普通の人々」を中心に据えたパロディ調の三部作を通じて、現代の地政学をミクロとマクロの両面から考察した。そして、「戦闘」をメタファーに使いながら、グローバルな覇権国家、メディアにおける暴力描写、実存的な問いに対する個人の抵抗を示唆することで、本作は私たちが共有している現実の複雑さを寓話的に映し出している」と賞賛した。

 

第23回台新芸術賞(視覚芸術賞)「Everyone came to see you—Ni Xiang Solo Exhibition」ニー・シャン[倪祥]《Free Time》(スクリーンショット)Image courtesy of the artist and the Taipei Fine Arts Museum
第23回台新芸術賞(視覚芸術賞)「Everyone came to see you—Ni Xiang Solo Exhibition」ニー・シャン[倪祥]Image courtesy of the artist and the Taipei Fine Arts Museum

 

視覚芸術賞は、ニー・シャン[倪祥]が台北市立美術館で開いた個展「Everyone came to see you」により受賞。ニー・シャンは、自身の体験を出発点に、高齢者介護や付き添いとしての体験、生と死の境界といった重要な社会的テーマに取り組み、一見混沌としていて奇抜な印象を与える大規模なインスタレーションや映像作品に貫かれた「蓄積の美学」を通じて、鑑賞者を独自の芸術的魅力へと引き込んできた。

審査員は、「ニー・シャンは、実家に置いてあったり片づけてあったりするさまざまなモノを組み合わせ直すことで、独自の「秩序なき美学(aesthetics of disorder)」を開発。不要となったモノに第二の人生を与えると同時に高齢者社会におけるケア提供者が直面する苦境を明らかにし、また、自身が抱える閉塞的な生活状況を大規模なインスタレーションへと転換し、庶民の身体感覚や記憶、死と向き合う体験を呼び起こした。展覧会全体にブラックユーモアを利かせて、生活や社会、制度に対する風刺的または自虐的な批評を試み、物質としても象徴としても「過剰さ」を示す、さまざまなモノのコラージュとアッサンブラージュを通じて、夢の挫折や無力感を語り、鑑賞者の心を強く揺さぶった」と評価した。

 

第23回台新芸術賞(舞台芸術賞)『Great-Grand Rat-Po-Tai (So Old) Is Sleeping Next To A Landscape Painting, Diligently & Stingily Snoring——But There Is No Landscape Painting!』末路小花&シュウ・ポン[許芃]Photo by WU Yu-Ying
第23回台新芸術賞(舞台芸術賞)『Great-Grand Rat-Po-Tai (So Old) Is Sleeping Next To A Landscape Painting, Diligently & Stingily Snoring——But There Is No Landscape Painting!』末路小花&シュウ・ポン[許芃]Photo by WU Yu-Ying

 

舞台芸術賞は、演出家・劇作家のシュウ・ポン[許芃]と劇団「末路小花」が、桃園市の中壢区過嶺にある許家の築百年以上が経過した三合院式の邸宅で上演した「Great-Grand Rat-Po-Tai (So Old) Is Sleeping Next To A Landscape Painting, Diligently & Stingily Snoring—— But There Is No Landscape Painting! (White Carrot, Rat Teeth, Her Child, (And Her Child’s Child.))」により受賞。本作は、許家の女性たちの人生に魔術的リアリズムを複雑に織り交ぜながら紡いだ物語。日常のささいな家庭内の出来事や断片を不平不満を繰り返す「碎碎唸(スイスイニェン)」形式の朗誦法により重層的な演劇言語に昇華し、あてもなくさまよう回遊的なパフォーマンスを通じて、舞台となる屋内外の環境と物語を巧みに融合した。また、機知に富み、鋭くシュールな想像力を駆使し、女性性の詩学あふれる独自の視点から家父長制的規範を批判的に問い直した。

審査員は「シュウ・ポンとその若く風変わりなコラボレーター「末路小花」による想像力あふれる寓話的作品は、中壢区過嶺の人里離れた先祖代々の邸宅を文字通り乗っ取り、かつてそこで暮らしていた女性たちの経験を創造し直し、沈澱していた彼女たちの声や感情を解放することで、客家文化の家父長制に縛られていた家庭空間に新しくラディカルな命を吹き込んだ。(ささいな出来事や日常、とりとめもなく続く会話、音楽的な合いの手などを盛り込んだ)誇張的な演技や、荒廃した建物を回遊する「parcours(パルクール)」のような動きを考案することで、登場人物と観客の両者に疎外と参加を無秩序に繰り返す経験が生み出される。それは滑稽でありながらもたくましい土着性に満ちている。とある客家の家族の生と死が、祖先を祀る広間で展開するクィア・ロマンス、料理/人間/動物が入り乱れる狂騒劇、種を超えた異世代間の絆など、混乱に満ちたエピソードとして描かれた」とその魅力を語った。

本年度の最終審査は、アメリカ合衆国に活動拠点を置く美術批評家のガオ・チェンフイ[高千惠]を審査委員長に、同じく美術批評家のチャン・ユンティン[張韻婷]、演劇批評家のチョウ・フイリン[周慧玲]とシュウ・ジェンハオ[許仁豪]、フランス出身のコレオグラファーのマチルド・モニエ、韓国出身のアーティストのパク・チャンキョン[朴贊景]、シンガポール出身のキュレーターのタン・フクエン[鄧富權]の7名が担当。審査委員長のガオは、最終審査は困難を極めたが、議論全体を通して審査員同士がおだやかに粘り強く理性的に互いの意見に耳を傾けてくれたおかげで、共に学び合う貴重な経験を得ることができたと審査員への感謝の意を表するとともに、最終候補15組の作品はいずれも感情に訴える影響力と視覚の愉悦の両方を兼ね備え、並外れた創造的活力を示してくれたと総評を述べた。

 

第23回台新芸術賞https://23award.taishinart.org.tw/
台新銀行文化芸術基金http://www.taishinart.org.tw/

 

 

第23回台新芸術賞

 

最終候補(視覚芸術)
ニー・シャン[倪祥]「Everyone came to see you」台北市立美術館
イェ・ウェイリー[葉偉立]「Beitou Palimpsest」鳳甲美術館、台北
地震写生団[地震寫生團]「Earthquake Sketch」緑地絵画工作室、0403共有空間、東東強海街基地、花蓮
シェ・ムーチー[謝牧岐]「The Place of Beginning」嘉義市立美術館
トゥアン・マミ「Vietnamese Immigrating Garden —A Silent Process」国立台北芸術大学關渡美術館
チェン・リャンシェン[陳亮璇]「Hensan Pear Trees & Hosui Pears」国立台北芸術大学關渡美術館
ヂャン・リーレン[張立人]「Battle City: Finale—2023 Dreamin’ MoNTUE」国立台北教育大学北師美術館

最終候補(舞台芸術)
リュウ・イーリン[劉奕伶]「Turn Out」NTCH Ideas Lab 2024、国家両庁院実験劇場、台北
ワン・ユーグァン[王宇光]「Islands」2024秋天芸術節、国家両庁院実験劇場、台北
稲草人現代舞踏団「That’s Possible, But Not Now」2024台南芸術節、台南文化センター 原生劇場
七転演劇部「So that ye weep as well for gladness as for pain」台北市立牯嶺街小劇場
国家両庁院&ローザンヌ・ヴィディ劇場 リミニ・プロトコル「This is not an Embassy」台湾国際芸術祭2024、国家戯劇院、台北
不二撃聲音製造所「The Temple of Resonance」高雄春天芸術節、高雄正港小劇場
窮劇場「Ghostopia」2024秋天芸術節、国家両庁院実験劇場、台北
末路小花&シュウ・ポン[許芃]「Great-Grand Rat-Po-Tai (So Old) Is Sleeping Next To A Landscape Painting, Diligently & Stingily Snoring—— But There Is No Landscape Painting! (White Carrot, Rat Teeth, Her Child, (And Her Child’s Child.))」中壢過嶺許家三合院、桃園

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