
メキシコ映画の大回顧
2025年1月7日(火)-2月9日(日)
国立映画アーカイブ 長瀬記念ホールOZU(2階)
https://www.nfaj.go.jp/
休館日:月
定員:310名(各回入替制・全席指定制)
上映会URL:https://www.nfaj.go.jp/film-program/mexico202501/
主催:国立映画アーカイブ、メキシコ国立自治大学(UNAM)フィルモテカ、メキシコ・シネテカ・ナシオナル、メキシコ映画機構(IMCINE)
協力:在日メキシコ大使館、インスティトゥト・セルバンテス東京
国立映画アーカイブでは、メキシコ国立自治大学(UNAM)フィルモテカ、メキシコ・シネテカ・ナシオナル、メキシコ映画機構(IMCINE)との共催による「メキシコ映画の大回顧」を開催。同3機関の所蔵作品を中心に、メキシコ無声映画期の代表作『灰色の自動車』(1919)から、1940年代から始まる黄金期の名作、1960年代の「ヌエボ・シネ」以降に頭角を現した監督たちによる1980年代までの話題作をまとめて上映する。
撮影機兼映写機「シネマトグラフ」による初の商業上映がパリで開かれた1895年の翌年、1896年8月14日にリュミエール社の技師によってメキシコで初めて映画の上映が行なわれる。以来、メキシコでは社会・文化・政治的背景を色濃く反映させながら独自の豊穣な映画文化を発展させてきた。
メキシコ革命(1910-1917)による影響を受けながらも、セルゲイ・M・エイゼンシュテインが『メキシコ万歳』の制作のために訪れた1930年以降、ルイス・ブニュエルをはじめ、欧州から亡命してきた多くの映画人を受け入れたメキシコ映画は次第に成熟していった。本プログラムでは、『メキシコ万歳』の撮影に参加して以来、ロシア出身でありながら、メキシコ映画産業の発展に尽力したアルカディ・ボイトレールが監督したメキシコ映画のトーキー時代における最初の国民的映画とも評される『港の女』(1934)や、ブニュエルがメキシコで撮った3本目の作品で第4回カンヌ国際映画祭監督賞を受賞した『忘れられた人々』(1950)などを上映。


隣接する映画大国のアメリカ合衆国が第二次世界大戦により戦時体制に移行する中で、1940年代に政治、経済的な安定期に入ったメキシコの映画産業は黄金期を迎え、メロドラマ、コメディ、ミュージカル、ホラー映画だけでなく、農場を舞台にしたランチョ(農場)映画やキャバレーを舞台にしたルンベーラ映画など、独自のジャンルを次々と生み出した。また、本プログラムでも取り上げた作品を手がけたエミリオ・フェルナンデス(『マリア・カンデラリア』『エナモラーダ』)、ロベルト・ガバルドン(『犯罪者の手』『マカリオ』)、フリオ・ブラチョ(『次の夜明けに』)ら名匠たち、ドロレス・デル・リオ、マリア・フェリックス、ペドロ・アルメンダリス、ペドロ・インファンテら多くのスター俳優、撮影のガブリエル・フィゲロアら才能あふれる技術陣に支えられ百花繚乱を極める。
本プログラムでは、農場主から土地所有権を奪うという当時の政府の革新的農業政策に対抗する保守層の強い支持が流行の背景にあったといわれるランチョ映画の先駆けとなったフェルナンド・デ・フエンテスの大ヒット喜劇『ランチョ・グランデへ急げ』(1936)だけでなく、「ランチョ映画」が多く製作されていた時代背景の中、保守的な家族規範や女性像に異を唱えた革新的なプロットが際立つアデラ・セケリョの『誰の女でもない』(1937)を上映。また、ハリウッドのフィルム・ノワールに社会批評的観点を付加したようなジャンル的特徴を有し、社会的規範を転覆する迫力を備えた官能的な女性ダンサーが主役となったルンベーラ映画からは、巨匠アルベルト・ゴウト監督、ニノン・セビージャ主演の『官能』(1951)を上映する。



黄金期を迎えたメキシコ映画は、戦後のTVの台頭など外的変化の影響を受けて、次第に同国の映画は保守化、硬直化が進んだが、その一方で1960年代にはこうした状況に危機感をおぼえた若手製作者たちが新しい潮流「ヌエボ・シネ」を牽引していく。また、その流れと共鳴しながら、1960年にメキシコ国立自治大学フィルモテカの創立、1974年に国立の映画保存機関、メキシコ・シネテカ・ナシオナルが設立されるなど、映画文化を保護する機運が高まり、1983年にはメキシコ映画機構が設立され、同機構を通じて政府が映画製作を支援することで、1990年代からは今日に続く新しい世代の監督たちによる世界的な躍進が始まった。
本プログラムでは、「ヌエボ・シネ」の流れを汲み、保守的な映画産業の刷新を問いかけるかたちで1965年に始まった第1回実験映画コンクールで、『秘められた公式』により一位に輝いたルベン・ガメスの同作を含む4作品や、プエブラ州カノア村で1968年9月14日に起きたリンチ事件にホラー映画のような残酷描写を盛り込んだフェリペ・カサルスによる異色のセミドキュメンタリー『カノア 恥ずべき事件の記憶』(1976)、1975年にメキシコ国立自治大学映画研究センター(CUEC)で学ぶフェミニストや映像作家たちを中心に始まった女性映画コレクティブ「Colectivo Cine Mujer」の作品集、同性愛を正面から扱った作品など、伝統的な規範に挑戦する作品を多く手がけたハイメ・ウンベルト・エルモシーリョが監督した『夜の心臓』(1984)などを上映する。



トークイベント情報
1月11日(土)
『犯罪者の手』 13:00の回上映後に約60分、逐次通訳付き
ゲスト:クラウディア・ソフィア・アレバロ・ガリャルド(CNコレクション マネージャー)
『黄金の鶏』 17:00の回上映後に約60分、逐次通訳付き
ゲスト:ダニエラ・アラトーレ(IMCINE機構長)
1月12日(日)
『パンチョ・ビリャと進め』 12:00の回上映後に約60分、逐次通訳付き
ゲスト:ハイメ・アパリシオ(UNAMフィルモテカ 国際調整室長)
『マカリオ』 15:30の回上映後に約60分、逐次通訳付き
ゲスト:ハイメ・アパリシオ(UNAMフィルモテカ 国際調整室長)
1月14日(火)
『次の夜明けに』 15:00の回上映前に約10分、逐次通訳付き
ゲスト:クラウディア・ソフィア・アレバロ・ガリャルド(CNコレクション マネージャー)
『マリア・カンデラリア』 19:00の回上映前に約10分、逐次通訳付き
ゲスト:ハイメ・アパリシオ(UNAMフィルモテカ 国際調整室長)
1月18日(土)
『忘れられた人々』 13:00の回上映後に約40分
解説:国立映画アーカイブ研究員
『港の女』 17:00の回上映後に約40分
ゲスト:新谷和輝(ラテンアメリカ映画研究者)
1月19日(日)
『エナモラーダ』 13:00の回上映後に約40分
ゲスト:星野智幸(作家)
※ゲストは予告なる変更となる場合あり。トークイベントのみの参加は不可。
巡回情報
メキシコ映画の大回顧
2025年1月29日(水)-2月22日(土)
福岡市総合図書館 映像ホール・シネラ
http://www.cinela.com/
メキシコ映画の大回顧
2025年2月26日(水)-3月9日(日)
京都文化博物館フィルムシアター
https://www.bunpaku.or.jp/exhi_film/schedule/
同時開催
映画監督 アンジェイ・ワイダ
2024年12月10日(火)-2025年3月23日(日)
国立映画アーカイブ 展示室(7階)
開室時間:11:00-18:30(1/31、2/28は11:00-20:00)入室は閉室30分前まで
休室日:月、年末年始(12/27-1/5)
https://www.nfaj.go.jp/exhibition/andrzejwajda2024/