台北ビエンナーレ2016、キュレーター発表

2015年12月15日、台北市立美術館は来年9月に開幕する台北ビエンナーレ2016のゲストキュレーターに、ブリュッセルのエコール・ド・レシェルシェ・グラフィーク(Erg)のディレクター、コリーヌ・ディゼレンスが就任すると発表した。

台北ビエンナーレは、世界各地で国際展が急増する中で台湾現代美術の国際的な評価を高めるべく、国内作家を対象としていた企画を大胆に改めて、1998年に南條史生をゲストキュレーターに台湾初の国際展として始まった。2000年以降は、海外から招聘したキュレーターと国内で活動するキュレーターとの共同キュレーションを試みてきたが、2012年のアンゼルム・フランケ、2014年のニコラ・ブリオーと近年は単独キュレーター制を採用している。

コリーヌ・ディゼレンスはスイス・ジュネーヴ出身。84年にソルボンヌ大学で美術史の修士号を取得し、翌85年にはホイットニー美術館のインディペンデント・スタディー・プログラムでキュラトリアル・スタディーズを学ぶ。89年にバレンシア現代美術館で初のキュレーター職を得ると、その後はマルセイユ美術館(1996-1999)、ナント美術館(2003-2006)、ボルツァーノ近現代美術館(2007-2008)のディレクター、チーフキュレーターなどを歴任。2011年より現職。2003年にオランダ美術評論家連盟から最優秀展覧会に選ばれた『ダン・グラハム:Works, 1965-2000』(クレラー・ミュラー美術館、2001)や、サントゥ・モフォケンの国際的な美術機関での初の回顧展(ジュ・ド・ポーム国立美術館ほか、2010-2011)、パオラ・ヤコブの初個展(ベイルート・アートセンター、2011)をはじめ、オスカー・シュレンマー、エヴァ・ヘス、ゴードン・マッタ=クラーク、トリシャ・ブラウン、リジア・クラーク、ディーター・ロス、デヴィッド・ゴールドブラット、フランシス・アリス、マルセル・ブロータースの個展や数多くの企画展を手掛けている。

美術のみならず文学にも造詣が深く、幅広い知識を有するディゼレンスは、台北ビエンナーレ2016において、歴史的、文化的パラダイムシフトを考慮に入れた視聴覚アーカイブの再検討を通じて、異なる知識体系を扱う美術館の触媒的な役割を考察するとともに、アナキストで文化人類学者のデヴィッド・グレーバーの著書『The Utopia of Rules: On Technology, Stupidity, and the Secret Joys of Bureaucracy』から着想した「想像力やラディカルな思考のその中心にあるものを失わずに、いかにして官僚制度やその構造的暴力に抗する論理的な批判を考案できるか」という問いを探求する。多種多様な思考の実践、ディスカーシブかつパフォーマティブな装置の考案、異種の物語を導き出すようなイメージの生産を通じて、領域横断的な美術体験を与えるようなビエンナーレを目指す。

台北市立美術館では、10回目の開催となる台北ビエンナーレ2016の開催と重なる形で、これまでの台北ビエンナーレを振り返りつつ、未来を展望する企画展示『台北ビエンナーレ・レトロスペクティブ 1996-2014』を同美術館3階で開催する。

台北ビエンナーレ
2016年9月10日(土)-2017年2月5日(日)
台北市立美術館
http://www.tfam.museum/

台北ビエンナーレ・レトロスペクティブ 1996-2014
2016年8月13日(土)-2017年3月1日(日)
台北市立美術館
http://www.tfam.museum/


過去のゲストキュレーターとテーマ

1998|「Site of Desire」
南條史生

2000|「The Sky is the Limit」
ジェローム・サンス、マンレイ・シュー[徐文瑞]

2002|「Great Theatre of the World」
バルトメウ・マリ、ジェイソン・ワン[王嘉驥]

2004|「Do You Believe in Reality?」
バーバラ・ファンダーリンデン、エイミー・チェン[鄭慧華]

2006|「Dirty Yoga」
ダン・キャメロン、ワン・ジュンジェ[王俊傑]

2008|「A World Where Many Worlds Fit」
ワシフ・コルトゥン、マンレイ・シュー[徐文瑞]

2010|※ No Title
ティルダード・ゾルガダー、リン・ホンジョン[林宏璋]

2012|「Modern Monsters / Death and Life of Fiction」
アンセルム・フランケ

2014|「The Great Acceleration」
ニコラ・ブリオー

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