と、そこに – 荒神明香

【タイトル】 と、そこに
【アーティスト名】 荒神明香
【期間】 2010年9月16日~11月16日

「高速バスに乗って、速度に合わせて流れていくアスファルトの道路を見ていた。
ずっと見ていると、アスファルトの粒の、ある一点に焦点が合って、その粒がグワンっと目の前に迫って拡大されて見えた。それはバスのスピードに乗せて拡大されては流れていき、また拡大されては流れていく。ヘッドフォンから流れる音楽に合わせ、リズミカルに繰り返す。

たまに月がすごく大きく見えることがあるが、それは大気の重なりがレンズになっているのだとか。だとするとこれは、バスのスピードによって瞬間的に空間が圧縮され、それがレンズの役割を果たしているのだ、などと、曖昧に物理の勘を働かせてみる。

アスファルトの粒々は、この地球から生まれたものとは思えないマットな黒色と匂いを放ち、拡大と収縮を繰り返しながら、次第に時空を越え、見たことのない宇宙の塵へと繋がる。遠くへ行こうとして乗ったバスの移動中、偶然見た窓越しの光景は、既にすぐそこで、私の目をそのもっと遠くへとワープさせた。」

アーティスト、荒神明香が作り出す、一面にちりばめられたレンズの世界。まるで何かの結晶のようにも見える大小さまざまなレンズの奥で、カラフルな何かが揺れているのがぼんやりと見えます。メリーゴーランドから見える景色のような幻想的なその動き。近づいてみるとそれぞれのレンズから、さまざまなエルメスのオブジェが大きくなったり逆さまになったりして見えてきます。レンズを通すことによって、商品は自在にその姿を変え、見る人の想像力をかきたてます。

荒神明香(こうじん はるか)
1983年、広島県生まれ。2009年、東京藝術大学 先端芸術表現科大学院修了。2007年 ART AWARD TOKYOグランプリ受賞。2007年よりアーティストとして活動し、東京都現代美術館、サンパウロ近代美術館をはじめとする国内外の美術館で作品を展示している。

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